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特集:ウォール・ストリート占拠運動

特集:ウォール・ストリート占拠運動関連記事

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人民新聞社掲載の記事はこちら。

http://www.jimmin.com/international.html  (海外欄)

ウォール・ストリートから「自宅を占拠する」運動へ 

人民新聞1435号      1月15日掲載    議論百出から転載

ピープルズニュース      1月23日転載

http://www.jimmin.com/htmldoc/143506.htm

オキュパイ・ウォール・ストリートから「自宅を占拠する」草の根運動へ  

人民新聞1445号           5月5日掲載

ピープルズニュース        5月9日掲載

http://www.jimmin.com/htmldoc/144504.htm

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オリジナル版:ウォール・ストリートから「自宅を占拠する」草の根運動の展開

ウォール・ストリートから「自宅を占拠する」運動は組織が全米に拡大し、磐石な体制下で草の根運動に発展し、最近抵当流れの件数も減少しつつある状況に好転している。ワシントンDCを中心とする地域で「自宅を占拠する」運動の発起人および主な活動家の一人であり、その草の根運動関連グループの経済戦略家であるマット・ブラウナーハムリンさんとのメールによる取材で、「自宅を占拠する」運動の展開に至った背景、草の根組織とその活動について聞いた。

「自宅を占拠する」運動の発起人になった理由は、数百万の人達が不正書類が原因で家を奪われ苦しんでいる事や、巨大なエリート金融の違反が野放しになっている状況を見ていられなかった為、「自宅を占拠する」草の根運動こそが、不当な譲渡抵当行使又は抵当流れの方針を変える方法だと信じたからだと言う。「自宅を占拠する」運動の発起人として一番訴えたいことは何かを聞いたところ、銀行が家主に追い立てを開始した際、抵当流れを恥だと思い、銀行側に言われるとおりにすべきだと家主に思わせることが、銀行側が使った「99%の大衆に対する武器」であったと語った。この運動の最も重要な部分は、戦うことを怯まず勝利するまで戦って「必ず勝つ」と決意していることだという。銀行の戦略である「恥の文化」を変えることが決意であり、それが原動力となり全米に波動し、抵当流れで家を失う側の責任が問われていた当初の風潮が逆流したと言う。ウォール・ストリートから「自宅を占拠する」運動への展開のきっかけになったのは、その活動家が、2008年から銀行と相場師が個人資産である住宅のギャンブルを始めたことに気づいたからである。活動家は「ウォール・ストリートの嘘と欲が原因でこの抵当流れが相次いだ」と述べている。

抵当流れ、次に立ち退き命令に直面する人達の一貫した共通性は、不幸のダブルパンチを受けていることだ。(1)2008年の経済危機で失業または仕事が減少するケース、個人事業主が経営困難に陥るケース、一般市民、退役軍人、または身体障害者が失業して(2)ローンの支払いが滞納した結果、家を失う苦境に直面しているようだ。追い立てのひどいケースには、癌で入院中、家具や個人の所有物を全て外に放り出されたり、留守中に抵当会社が鍵を変える例も珍しくない。マットさんは、このような多くの人達を見ている。ミネアポリスの退役軍人、ボビー・ハルさんが占拠運動の活動家や支援グループと出会った時は、自分の荷物をまとめて家を出る寸前だったと言う。ボビーさんは数回の心臓発作や他複数の病気の為、度重なる入院を繰りかえし、10年間でほとんどの収入を失った。住宅ローンの変更をバンク・オブ・アメリカに依頼した際要請された書類を全て提出し、新たなローンの支払いを開始した矢先U.Sバンクが彼の家を購入し、公開オークションにかけられたため追い立てに直面した。そのような時、道義的及び事実上戦う必要があると信じた「自宅を占拠する」運動の活動家が市民グループと連帯した組織的援助により、抵当流れのボビーさんの家を受け戻すため、地域集会を開いたり、敷地内にフェンスを立てるなど、約500名による一連の総力キャンペーンが効果を発揮し、自宅を取り戻すことに成功したとマットさんは述べた。

ボビーさんと同様、他の多くの人たちも、最悪の状態に直面する前に、毎月の支払いを減少させるため、ローン契約の変更を銀行側と交渉している。しかし、銀行側が交渉に応じた結果、しばらくの間、新たなローンで支払いを続けても、数ヶ月後または1年以内に結局家を手放すケースが不思議なほど多いらしい。これは書類の紛失が家主に伝えられることが多いためである。また別の例では、住宅ローン契約の変更をする為には、ローンの支払い不履行を条件とするデフォルトを勧め、その家族の申し込みに反して、気がつかない間に抵当流れの手続きが始まっているという。「書類紛失、電話に応対しない又は無視する、矛盾した答えが返ってくる」など、一部の銀行の手口が報告されているという。ニューヨーク、フロリダ、カリフォルニア、ネバダ州など複数の都市で、住宅ローンの詐欺行為を地域住民らが暴露した結果、司法長官事務所などが調査を開始したケースも昨年から報告されている。

「自宅を占拠する」運動の活動家は、市民団体、弁護士グループ、非営利団体、宗教団体、政治家、有識人、農民などと一体となって銀行側と団体交渉にあたり、救済活動を実施している。団体行動に出ることで、目撃又は証言が可能になるからだ。このような全国各地の市民団体は大小を問わず、様々な方面で漸進的なオンライン・グループの活動家とも連帯活動を行っている。ミネアポリス、アトランタ、ロサンゼルスなどのグループが最も活動的で影響力があると、マットさんは述べている。ワシントンDCの占拠活動家が合体して行動している組織には、弁護士グループを含め、約20の団体がある。その中には、教育、人権、社会、雇用、環境、エイズ問題などで戦う比較的歴史の長い組織もあれば、全米各地にネット上の新しい組織もあり、それらの大半が高度な通信技術を駆使している。抵当流れの判例や法的情報提供など法律的な分野で教育するグループ、インタビューや写真、報告などをビデオなどに記録してメディアの技術力を駆使するグループなどが際立った活動をしている。このような組織の発起人の中には、本人自身が抵当流れに直面し、最初一人で立ち上がり、複数の友人や弁護士などが協力して組織化したグループもいる。このグループは、2010年メデイアが暴露したロボ・サインナーと呼ばれる抵当権証書の内容を確認せず大量の書類に機械的に署名する担当員を雇う金融機関の違反行為の実体に関する数々の記事を転載している。抵当流れが相次いたのはこれが大きな要因であると言われている。

「住宅を占拠する」運動の活動家は、その草の根運動を通して、移民者の権利や住宅所有の権利など社会の変革を目指す活動家との接触があるため、メンバーシップが拡大しているという。また、ホームレスの数を記録したり、ホームレスの社会におけるインパクトを記録する活動も行っている。マットさんが中心となっているワシントンDCの活動家も、ホームレスを空家に移動させる手助けもしているらしい。活動家の目には、抵当流れで空家になった戸数と家を失った人口はほぼ同じような割合であり、銀行の手に渡った家は経時的に荒廃が進んでいるという。従って、現在住まいを必要とする誰かに空家を解放する方が、住宅危機の最大の解決方法になるとマットさんは述べている。法的問題はさておき、一時的な処置として、特に高齢者を外に放り出さないという強い信念に基づいた行動のようだ。また、「略奪的ローン」の犠牲者をこれまで何人救ったのか聞いたところ、他の地域の数は掌握していないが、彼が掌握している限りでは、占拠し、立ち退き命令を中止し、空家を開放したケースは75所帯以上あり、そのうち10件以上は自宅を永久的に取り戻すことに成功しているという。現在、他の多くの州でも同じような活動が盛んに行われていて、立ち退き処分が一時的に延期になっているケースが急増している。更に多くのグループが他の地域の活動家と連携して困難に直面した家主を援助しているとマットさんは言う。

4月に入って初めて、連邦準備制度は、抵当流れで空家になっている物件に関する方針を打ち出した。4月5日の『ウォール・ストリート・ジャーナル』英文紙は、「中央銀行は、現在はびこっている途方もない住宅市場の現状に鑑み、抵当流れの不動産の賃貸を許可する6ページの政策声明を発表した」と伝えた。また、賃貸しない場合、銀行はその不動産を「速やかに売却することを義務づける」ことで「賃貸につなげることが戦略である」ことも明白にしている。更に、銀行に追い立てられて一旦家を手放した人達が再入居するケースも最近増えている。4月6日の『ロイター』によると、永久的な住宅ローン変更に銀行側が同意したケースが2月だけでも約13,800件増加し、2月末でその合計数は約782,600件に達したことを米財務省が発表している。抵当流れを防ぐプログラムとして銀行にインセンティブを与えるためオバマ政権が導入したこの「住宅ローン変更プログラム」(HAMP)は、2008年から続いているサブプライム・ローン危機の救済措置として、3~4百万件の達成を目標にしているが、実際の数値は、理想に程遠い状況であるため2013年まで延長されている。元々、ウォール・ストリートの金融救済で始まったプログラムであること、更に、現実的には失業者は利用できないなど、画期的な救済措置とは言えないが、最近になってようやく「自宅を占拠する」運動の活動家が抗議活動を行っている複数の大手銀行が住宅ローン変更に同意し始め、多少状況が改善しつつあるようだ。

上記の数値で示された状況の改善と「自宅を占拠する」草の根運動の影響力による相関関係は明白ではないが、アラバマ州のバーミンガムでは「自宅を占拠する」運動の活動家がバンク・オブ・アメリカとの交渉に成功している。銀行の職員らはコミニュケーションをオープンにし、3月末までの抵当流れの住宅売却を解除した。ジョージア州では抗議活動を阻止する上院議員法案が否決され、サンフランシスコでは、放置されたビルがホームレス・サービス・センターとして利用可能になった例もある。一方、ニューヨークやDCではバンク・オブ・アメリカの前で抗議活動が続行中であり、特に最も打撃のひどかった多くの州とDCでは複数の金融機関に対する大胆で強烈な抗議が展開されている。米国人が普通に自宅を保持できる状態の回復なくして、国の経済の回復は望めないとする声も各地で高まっている。文字通り、しっかり根を這った草の根運動に発展したウォール・ストリートから「自宅を占拠する」運動は支持者も増え、その活動は腐敗した金融システムに何らかのインパクトがあることは否定し難い現状になっている。

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ウオール・ストリートから「自宅を占拠する」運動への展開 

グローバル・フォーラム掲載2011年12月12日

「ウオール・ストリートを占拠する」運動は、先月中旬には全国各地で相次ぐ警察の弾圧に遭遇し、この運動の最初の場所となったマンハッタンのズコッティ公 園をはじめ、米国各地でテントや野宿用設備が暴力的に撤去されたため、かなり簡素化され、表面上弱体化したような印象もある。しかし野宿は禁止されたもの の、デモ参加そのものは許可されているため、自然消滅するような気配はほとんど感じられない。米国各地で、冷え込んできた今日、陣地を奪われた抗議活動者 らは、その視点と戦略を変えたようだ。12月6日には、個人的対面を避けている議員らとの直接面談を目的とし、ワシントンDCの国会議事堂付近に移動し て、多くのデモ参加者が座り込みを開始した。更に、「自宅を占拠する」と称し、特に、抵当倒れで空き家になった住宅の多い区域で、銀行または金融会社に家 を差し押さえられて、自宅を失った人達を再入居させる運動が起きている。

失った家の所有権の回復を希望し、ローンの修正や変更に関して銀行との交渉を試みる人たちも多く存在する。しかし、銀行がこれに応じない場合、家を失っ た人たちは貸し手である銀行及び金融機関の不合法な住宅売買契約を盾に、自宅を取り戻す戦略を開始した。抵当倒れで空き家になっている住宅には板が張られ ている場合も多いが、「ウオール・ストリートを占拠する」活動家らは、近年相次ぐ抵当倒れに対抗するため、放置された空き家の廃墟化を防ぎ、売買オーク ションを阻止することで、不条理な住宅売買契約の犠牲となった人たちを援助している。12月9日の『CNN 』によると、東ニューヨークにあるブルックリンのバーモント通りは、全米で最も抵当倒れの率が高く、空き家が多いらしい。長年、ひどい自閉症を患っている 8歳の女児と5歳の男児を抱え、仕事探しに葛藤しながら、ニューヨーク市の収容所を出たり入ったりの生活を長年続けているタシャ・グラスゴウは、2人の子 供を育てるための安定した収入も、家もない。彼女は最近、ニューヨークの行政から収容施設への入居を許可されたが、後日、ニューヨーク市長マイケル・ブ ルームバーグ氏の「厳格な政策」によって入居が取り消しになった。今週、「ウオール・ストリートを占拠する」活動家らは、現在、バンク・オブ・アメリカが 所有しているバーモント通の空き家にグラスゴウ家族を入居させることに成功した。

活動家らにエスコートされて、再入居に成功した人達の正確な数値は明らかにされていないが、彼らは「ここが自分達の家であり、生涯立ち退くことはしな い」と強い決意を語っている。その理由は、当初ローンを組んだ際,貸す側が借りる側に、高金利の「リスク・ベース価格」などを含めた不公平なローンの条件 を課す「略奪的ローン」を意図的に設定したため、非合法であるとした論争が起きているからである。ローンの債務率が所得の50%を超過した場合、通常その ローンはかなりのリスクを伴うはずであるが、楽観的な住宅価格上昇の予想、小額の頭金、当初の低利息などの魅力とは裏腹に、様々な角度からの調査と法的研 究が欠如し、数年後法外な高金利を設定した金利変動相場制で「余裕のない抵当権設定の住宅ローン・プログラム」に契約した人たちは、抵当物件差し押さえの リスクを予測することができず、一方、貸す側は予期していたと言われている。サブプライムローン危機は2007年以降、抵当倒れが相次ぎ、現在でも家を手 放す人が後をたたない。12月7日の『The Nation 』誌によると、2007年以降、全米で約600万戸の家が差し押さえられており、今後4年間で更に800万戸が抵当倒れになると推定されている。また、 『CNN』の報告では、銀行の集計によると、昨年だけでも380万戸が抵当倒れになり、今年度の数値は更に上昇することが予想されている。

このような予測に反して、「自宅を占拠する」運動が長期化する可能性があれば、抵当倒れをかなり食い止めることが可能であると考える。なぜなら、抗議デ モの活動家らは情報技術の駆使に長けているため、最近はメディアがかなり注目するようになってきた。それに伴い、弁護士にたいする協力要請拡大の可能性が 増し、現在では住宅ローン不正手段に関する専門家の教育および支持が目立つようになり、訴訟を行い易い環境になってきている。自宅を差し押さえられる前に 訴訟に成功するケースが増えれば、抵当倒れの率は減少するはずである。また、小規模ながら活動家に基金や活動の拠点を提供する人達も存在する。これまで激 しい警察の弾圧が続き、野営地を奪われても、マンハンッタンのオフイス街の事務所を提供する個人も存在し、物資的協力をする影の力が台頭している。このよ うな状況から、崩壊したシステムの改善に向けて、情熱を傾注する活動家が生き残る土壌が水面下で構築されつつある。米政府は、1960年代から連邦準備制 度の下に多数の金融規制法案を提案し、または通過しているが、こと金融規制に関しては、今だにグレイ分野が多く金融システムはほぼ崩壊していると言える。 2008年にブッシュ前政権下で制定された緊急経済安定化法案により、世界経済の悪化を懸念し、サブプライムローンでかなりの損失に追い込まれ、その原因 を作った銀行や金融機関の救済は優先されたが、家を失った庶民には何らの救済措置も講じられていない。このような弱者を救うため「自宅を占拠する」運動を 展開している活動家らは、このグレイの領域に明白なメッセージを伝えている。

連載 「ウォール・ストリート占拠」デモは、歴史的運動となるか?

       グローバル・フォーラム掲載 2011年10月17日・18日

「ウォール・ストリートを占拠する」デモは10月17日で1ヶ月目を迎え、ようやくメディアも注目するようになってきた。デモの波紋は全米約200都市に 拡大し、著名人、政治家、その他マスコミからの痛烈な批判など喧喧囂囂たる報道が目立つようになり、一部の金持ち層と一般の市民層との間に亀裂が生じる 「階級闘争」の色彩が顕著になってきている。金持ちはデモ参加者らを1960~70年代のヒッピーと同類視し「デモの目的が明白ではない」と批判している が、実際はその標的と目的は明白である。抗議は金融業と企業に向けられていて、腐敗した金融システムと、金力を乱用した企業が政治を操るシステムの変革を 望むデモであることは厳然としている。「米国のアラブ・スプリング戦術」は歴史的に重要なイベントになると思われる。

「ウォール・ストリートを占領する」運動に最も困惑を示しているのは、富豪層と一部の投資家である。10月5日から、これ以上このようなデモを黙ってみ ているわけにはいかず立ち上がったと思われる数名の投資家が「1%を代弁する」ため、「ウォール・ストリート占拠を占拠する」運動を開始した。警察は現在 のところ黙認しているが、これが1%の逆襲に結びつくかは不明である。ウォール・ストリートが貪欲だとしてデモに参加している人達に対して、1%の代弁者 が反逆するポイントは、「現在の米国の金融システムは、ウォール・ストリートに問題があるわけではなく、政府が金融規制しないことに問題があるからだ」と いう。

抗議の標的にされている「1%」は、「抗議の対象を間違っている」として、9月末には、ニューヨーク市長、マイケル・ブルームバーグ氏も、「銀行家に は、年間4万から5万ドル程度の収入でぎりぎりの生活を強いられている人達もおり、99%の抗議者らと銀行家との間にはさほどの違いはないため、不景気の 原因を銀行家に向けるのは間違っている」と述べている。一方、10月12日の『ニューヨーク・タイムス』紙によると、ノーベル賞受賞経済学者ポール・ク ルーグマンは、同紙記者の報告を引用し、「2010年の銀行員の平均年収は約36万ドルであったのに対し、民間企業の平均収入は6万6千ドルで、5倍以上 の差があった。30年前の両者間の差はわずか2倍であった」ことを指摘した。これは、経済格差が拡大したことを裏付ける数値である。

IMFの研究グループは今年4月、グローバル的な経済格差が経済回復を妨げる要因になっている可能性を報告していた。IMFグループによると、米国のこ こ数十年の経済格差の拡大は、1920年代の状況に良く似ていて、いずれの場合も貧困層による銀行からのローン借入れが多く、金融危機に直面したという。 IMFグループは「世界各国で経済格差が重要な問題となっており、米国も金持ちは益々金持ちになる一方で、一般の米国人は収入の増加がないばかりか、減少 している状況が30年以上続いている」と述べている。現在の「ウォール・ストリートを占拠する」運動は、まさしくこの歪んだ経済構造の反動であり、フラス トレーションの表れである。

世界でトップの大企業が世界人口80%の資産の2倍以上の富を得ていることは知られている。米国では1930年までに、約200のトップ企業が国の50% の富を得ていた。1990年後半までには、5万以上の多国籍企業が存在するようになる。1810年代「企業も、個人と同様、富を追求できる自然人と同じ権 利がある」とし、米国最高裁は「米国憲法改正法第十四条に基き、企業も人である」と認めた。この法は次第に企業経営者の責任義務を減少させ、法律の網を潜 ることも含めて手段を選ばず、莫大な資金力と権力を握る結果になった。また、企業弁護士は、ビジネス利益の歯止めになる基準や法令を阻止するため、政府に 圧力をかけることが可能なまでの権力を得るようになった。つまり、憲法の保証により、企業は利益のためには様々な要求を満たすことが可能になったわけであ る。

更に、米国最高裁は昨年1月「特定の政治家に選挙資金を無制限に寄付できる」と決定した。この判定は、主な石油会社、保険会社、ウォール・ストリート金 融機関にとっては大勝利となり、米国市民の声を政治から遠ざける要因になった。次ぎに、議会は「天下り法案」を通過させた。現行法下では政府役人の天下り は、1年間の待機期間を設けるか、または政府役人との個人的接触を禁止するなどの制限があるが、実際にはこのような制限は、政策関連の高官には適用されて いない。この「天下り法案」により、大企業は政府高官の退職後の裕福な生活を保証するシステムになっている。更に、企業はロビイストを政治家との交渉にあ たらせ、法律制定に直接関与する。こうして政治家は、大企業の代弁者になっているのである。

オバマ大統領は10月6日「米国民は、ローンの負担で、多くの人が家や仕事を失うなど、全米で莫大な損失をうけ、1930年代の世界経済大恐慌後、最大 の金融危機に直面している」と述べた。クルーグマンも同様の意見を述べ、「政府は国民の税金で金融業界を救済しているが、今だに経済危機から脱出していな い」と指摘している。加えて、失業保険、社会医療、養老年金などを含む「社会保障制度の削減や赤字予算など重大な問題で、社会全体が経済恐慌に直面してい るため、デモ参加者らがこのような問題を公的論争として提起した」と述べている。「ウォール・ストリートを占拠する」デモの実態を要約すると、参加者は教 育を受けた若者が多く、学生や活動家グループなどであるようだ。彼らの不満は、経済格差、銀行への財政援助、金融業界に対する規制の欠如である。

要求していることは、ウォール・ストリート犯罪者への取り締まりの強化、会社を「個人と同じ身分」としている法律の改正、無制限となった選挙資金に関す る憲法改正、天下りに関する法改正などである。前半で記述した「政府が金融規制しないことに問題があるからだ」という点であるが、金融規制に関しては、難 しい問題がある。なぜなら、財政問題に関しては、保守派のグループが規制緩和を推進し続けていて、1980年以降加速しているのが現状だからである。金融 機関に対する規制が緩和されると、米国司法省や証券取引委員会などのような政府の取り締まり機関は充分な予算を組むことが不可能になり、充分な予算なくし ては充分な取り締まりをすることも困難になるからである。このような機関は、充分な証拠のないまま金融犯罪ケースを起訴することを嫌う。予算不足、規制緩 和、および証券取引委員会の監督不足が、違反を調査し、起訴する能力を弱体化させる結果になっている。世界各地の950箇所以上の地域にも影響を与えてい る米国のデモが、以上のような現状を変える歴史的運動となるかどうか、今後の動向が注目される。

10日間が過ぎたウオール・ストリートを占拠する運動のデモ

グローバル・フォーラム掲載 2011年9月28日

マンハッタンのボウリング・グリーン・パークで9月17日に始まった「ウオール・ストリートを占拠する運動」のデモは、10日間が経過した。24日にはウ オール・ストリートからマンハッタンのユニオン・スクウェアに向けて行進中のデモ隊員80名以上が次々に逮捕され、平和的だったデモが緊張と暴力を呈した 様相に変わってきている。場所によっては、警察動員数も圧倒的であるが、現在のところ、マスコミはこの運動を重要視していない。しかし、当初数百名で開始 したデモは、1週間後には数千名に増大し、26日には、西海岸の主要都市を含め、全米30以上の都市の金融区域でも何らかの波紋が広がっている。このデモ 運動の規模はまだ小さいものの、「アメリカ合衆国のアラブ・スプリング戦術」と呼ばれ、抗議者らが掲げるスローガンには「民営化ではなく民主主義を」、 「少数独裁政治を終わらせよ」など、エジプトやチュニジアを含むアラブ諸国における一連の民主化運動のコピーを思わせる。

『ニューヨーク・タイムス』紙によると、ウオール・ストリートでデモに参加している人達は、「米国の政治とファイナンシャル体制に怒り」を感じており、 「トップ階級1%の欲と腐敗には、これ以上耐えられない」ため、「トップ1%が99%の富を得、優遇されているアメリカを変えたい」との切望が動機になっ ているようだ。彼らは「二党体制下で一般国民の声が反映されていないため、社会の一員として、コンセンサスに基く新しい民主主義のシステムを構築したい」 としている。24日の『ロイター』通信によると、抗議者には学生らしき若者が多く、米国旗を掲げ、サインには「反企業のスローガン」が目立つという。ある ワシントンDCの大学生は、チェイス銀行の前にさしかかるとひざまずいて「あの銀行が母の家を取り上げた」と叫び、「今夜、僕は刑務所に留置されるだろ う。しかし、ただ黙って見ているわけにはいかなかった」と、ビデオ・カメラに訴えた。片道旅券で北カリフォルニアからニューヨークまで旅し、デモに参加し たある若い女性は「この運動はとても重要なため、一役を担いたい」と述べた。他にも多くの若者が「このメッセージを地元に広めて、運動を拡大するつもりで す」との意欲をみせた。

しかし、若者の理想を掲げた平和なデモは騒然とした様相に変わってしまった。24日には、ニューヨーク市警は、ユニオン・スクウェアにオレンジのネッ ト・フェンスを張り巡らして、抗議者らを囲いに入れ、行進を妨げる作戦に出た。このフェンスの近辺をのろのろ歩いていたデモ隊は、交通の妨げになるとして 次から次ぎに逮捕された。白いシャツを着た警官らしき男性二人がこの囲いの内側にいた若い二人の女性に近づき、一人がペッパー・スプレーらしきものを噴射 した後、素早く人混みから立ち去った驚くべき光景をビデオ・カメラがキャッチした。スプレーの噴霧は、一人の女性の目を直撃したため、その場は叫びと混乱 のすざましい状況であった。『ワシントン・ポスト』のブログによると、市民権弁護士のサム・コヘンは、「マンハッタンのリバティ・プラザでの『ウオール・ ストリート抗議』参加者に対する逮捕は、米国憲法改正第一条に違反する」として、「ニューヨーク市警を起訴する準備中である」としている。一方、ニュー ヨーク市警は、「1845年の反マスク法」を利用して、一部のデモ隊員が「素性を明かさないでマスクを使用していたため逮捕した」としているが、これは 150年以上前の法律で「現状とは一切関連性がない」としている。同ブログは、「もし、数百万の米国人がワシントンDCの通りをデモ行進すれば、それが大 規模で重要な運動となり、政治家は性急に変革を迫られるかもしれない」とコメントしている。

「ウオール・ストリートを占拠する運動」は、米国の若者がアラブ諸国の若者に幾分似た立場にある現状を示唆している。デモ参加者は、単に参加するだけで はなく、彼らが求めるものは何か、現状はどうなのか、なぜ仕事がないのか、なぜ政治家が経済の建て直しに必死になっていないのかなど、あるゆる政治的・経 済的な討議も行っているようだ。確かに米国の現状は、膨大な負債を抱え、仕事を探すことさえあきらめた人が増えたため、失業率の高さ、ホームレスの増大、 貧富の格差の拡大、中産階級の減少など、経済衰退の悲観要素が多すぎる。米国農務省の報告では、すでに2009年に約5千万人の米国人が、健康を維持する ための食物を充分に摂取出来ない状態である。更に、昨年11月の『ウオール・ストリート・ジャーナル』の調査によると、8月の時点で、米国の人口の 13.5%が、フード・スタンプに依存していて、1年前より17%上昇している。数年前から「米国は第三世界の国になってしまった」、あるいは「第三世界 の国の仲間入りをするのではないか」と懸念する声が高まっているが、その根拠の論理的是非は別として、簡単に無視することはできない。少なくとも、「米国 のアラブ・スプリング」現象はある意味で、米国経済の深刻さを裏付けているのかもしれない。

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