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6月, 2012 のアーカイブ

医療保険改正法の撤廃騒動

驚くことに、28日合憲となったばかりの医療保険改正法を執拗に拒絶する共和党議員らは、7月に撤廃の投票を行うと発表した。ロムニー氏は、判定後のコメントで、「昨日悪い政策だったものは、今日も悪い政策で、昨日悪かった法は今日も悪い法だ」と述べ11月の大統領選に勝利したら「真っ先にオバマケアを撤廃する」と公言した。しかし、複数の共和党議員らは、選挙日の翌日まで待てない様子で、7月11日に下院で投票することを決めたようだ。これを、有権者に対する演技だと言う人達もいる。なぜなら、彼らは撤廃の投票をしても、そう簡単には成功しないことを知っているからだ。 (さらに…)

ヨセミテのミニ歴史

6月30日の本日は、1864年にエイブラハム・リンカーンがヨセミテ渓谷の上院法案に署名し、ヨセミテが正式にカリフォルニア州立公園に指定された記念すべき日です。これが連邦政府が関与した最初の州立公園でしたが、カリフォルニア州が保持したのは1890年までです。その後は連邦政府の監督のもとに国立公園に指定されました。

ヨセミテには、スペイン人がカリフォルニアを占領する以前、またカリフォルニアのゴールド・ラッシュが始まる1848年以前に、すでに、数千年も前からアメリカ土着のインディアンが住んでいたと言われています。しかし、18世紀頃に蔓延した疫病でインディアン人口はぼ全滅したとの説もあります。また、白人移住による紛争が絶えず、1851年にはマリポサ・バタリオンと呼ぶカリフォルニアの民間軍隊とヨセミテ土着人とのマリポサ戦争が勃発しました。

ヨセミテは米国で7つの大自然驚異の中にランクされていて、2010年だけでも400万人以上の観光客が訪れています。ヨセミテを訪れた日本人も多いと思いますが、私も数回訪れました。4千年の遺産を受け継いだ自然の壮大さに言葉にはならないほど圧倒させられます。

ヨセミテの一景

2011年10月11日筆者撮影

合憲となったオバマ政権の医療保険改正法

米最高裁は、本日28日、オバマ政権の医療保険改正法(正式名はAffordable Care Act) の最も論争的で、最も拒否されていた部分の「強制加入」を合憲とする決定を公表した。最高裁決定の要点は、「医療保険を購入しない者は罰金に科す強制加入が合憲」とした点を「国の経済問題に関与する通商条項 (Commerce Clause)に照らし、合憲である」としたためである。一方、非合法となった箇所は、メデイケイドの拡大にともなう強制部分である。この法の制定に伴い、更に数千万人の低所得者層がメデイケイドを利用できるとする条項に対し、26州が財政上の理由で、この強制的な法の撤廃を望んでいた。メディケイドは連邦政府と州の連帯資金プログラムであるが、例えば、現行法で、連邦資金はA、B、Cのグループに提供されているが、更にD、Eのグループにも拡大するという条項を拒否する州は、そのA、B、Cに対しての資金援助を停止するという規定が違憲であると判定。これにより、州の財政負担を懸念し、撤廃を主張した26州にとって、メデイケイド資金にリスクはなく、更なる拡大の選択は自由となった点でも安堵できる判定となった。

最高裁の決定は、9名の判事らの意見を大きく二分したが、「強制加入が合憲である」と表明したのは、ルース・ギンズバーグ、ソニア・ソトマイヨー、エレナ・ケーガン、およびステファン・ブレイヤー判事 で、最高裁判所長官、ジョン・ロバーツ氏は、「強制加入」の合法性を肯定しなかったが、「議会は課税の権威を有する」とし、いずれの意見にも反対した保守派4名の判事らは5対4で退く結果となった。この法の最も核心部である「強制加入」が合憲となったことで、オバマ政権の医療保険改正法は揺るぎないものとなった。3月の聴聞の席上で、オバマ政権の弁護側が主張した強制加入の通商条項が違憲である場合、医療改正法それ自体が無効になる可能性もあったため、議会に権限を与えたことで、オバマ政権および連邦政府の権力を全面的に支持するかたちとなった。

一方、最高裁の決定は、大半の国民の希望を逆手にとったような結末であったため、問題を複雑にする結果となった。24日の『ロイター』によると、19日から23日までロイターが実施した世論調査で、56%の国民はヘルスケアに反対し、44%が支持している。主な反対理由は、国民に「強制加入」を強いる条項であり、61%のアメリカ人がその「強制加入」に反対し、39%が支持している。しかし、大半の国民は「オバマケア」に反対しているが、その大抵の条項は強く支持しているという矛盾したアメリカ人の複雑な感情を反映している。例えば、子供は26歳まで親の保険に加入できる条項、すでに病気を患っている人に対する保険会社の差別を禁止する条項、更に50人以上の従業員を抱える経営者に従業員の健康保険を義務づける条項を含めて、「大半がオバマ政権の医療保険改正法を大変気に入っている」とし、「共和党が有権者にオバマケアを拒否することを説得している」実体が窺がえるとロイターは伝えている。

オバマ大統領は、最高裁の決定を受けて、ホワイトハウスから数分間程度の短いスピーチを行い、この決定に対し、誰が勝利し、誰が敗北したというコメントは完全に要点を見間違っていると述べた。また、この法の制定は政治的意図によるものではなく、「国にとっていい事だ」と確信していることを伝え、「全国民の勝利である」と語った。今後、この法の条件をさらに満たすよう向上の努力をすると決意をこめた表情で語った。

2014年から医療保険に加入しない国民は、収入の1%(2014年度)を罰金として支払うことになる。カナダのような厳しい医療保険法に比較すると、国民に大きな影響力があるとは考えにくい。むしろ、今後、失業で医療保険を失うこともなく、いつでも、予防と治療が受理可能であるため、健康上の不安はかなり解消されるはずである。今後、共和党と民主党が一体となって、その向上への努力がなされるのか、あるいは、ロムニー氏をはじめ、この撤廃を目論んでいる保守派議員やグループによる阻止行為が続くのか、あるいは、11月の選挙の結果次第により、議会が撤廃に追い込むことになるのか、今後の動向が注目される。

無党派層の特徴と支持の傾向

大統領選で重要なカギを握るのは無党派層です。この無党派層のグループを英語ではインディペンデント(Independents)または スウィング・ボーター(Swing Voters)と呼びます。前者は、一定の党派に属せず独立しているいう意味です。最近は、自分の支持党を表明したくない人が便宜的に使う場合もあります。後者は、彼等の投票はどちらにでも揺れるという意味があり、どちらの党にも属さない人達の比喩的用語です。無党派層は他人の意見には左右されない傾向があります。両党の政策を細かく吟味し、個々の政策を個人の利害的観点から慎重に検討した上で結論を出すタイプです。候補者の公約だけで判断せず、過去の実績もある程度しっかり見ている有権者が多いと言われますが、政治に無関心な有権者も多いと思います。また、無党派層は第三党に投票する可能性が高いと言われています。

このような無党派層の多い州でオバマ氏の苦戦が予想されるのがフロリダ〔選任者数29〕、 オハイヨ〔18〕、ペンシルベニア〔20〕の3州です。本日(27日)の『ワシントン・ポスト(WP)』紙と、『ウオール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』はいずれもキュニュピィアックの世論調査によるオバマ氏とロムニー氏の支持率を参照し、フロリダ、オハイヨ、ペンシルベニア3州の無党派州でオバマ氏の支持率が低迷ぎみだと伝えています。それは、ロムニー氏より支持率が低いという意味ではありません。

むしろ、この3つの州ではいずれも、ロムニー氏をリードしています。例えば、WSJの報告によると、フロリダではロムニー氏に対して45%-41%、オハイヨ州では47%-38%、ペンシルベニアで45%-39%、といずれの州もリードしています。若い年代層、黒人、女性、ヒスパニックの有権者の支持率が、ロムニー氏をリードしているためだとWSJは分析しています。また、フロリダでは、58%が不法移民の強制送還停止を支持しているようです。しかし、この3つの州の平均支持率は46%以下で、2008年の支持率をかなり下回る状況であるため、楽観できないということです。選任者数のすべてを獲得する為には、有権者の50%以上の投票率が必要です。

WP紙によると、これらの3州は、大半が大統領の移民政策を支持していますが、オハイヨとペンシルベニアで州では27%がオバマ氏を支持しないと答えています。キューバ系アメリカ人が多く、保守の傾向が強いフロリダ州では22%がオバマを支持しないと答えています。また、このような無党派層が多い州の有権者で、特にオハイヨ、ペンシルベニアの両州で、民主党に属すると言われる層でもわずか5人に1人のみオバマ氏を支持すると報告しています。こういう点が無党派州の特徴です。無党派州の中でも、オバマ寄りとロムニー寄りに分類することも可能であり、ペンシルベニアは過去の記録からオバマ寄りの州と推定されていますが、今回はどのような展開をみせるか現在のところ不明です。この3州は選任者数も他の無党派州より多い点で両氏にとって大事な州であることは確かです。

アリゾナ州移民法に関する米最高裁決定の衝撃

25日の米最高裁のアリゾナ州移民法に関する判定は、その解釈に微妙な違いがあり、反響は大きい。この判定の影響として、アリゾナ州で生き残った移民法のひとつの条項を利用した制定が他の州で拡大する可能性も指摘されている。その拡大に伴い懸念されていることは、法の乱用と人種差別である。何らかの犯罪に問われて逮捕された不法移民でないかぎり、州の警察官は、不法移民であることが疑わしいだけで、移民状況を確認することはできないとする<条件付きの最高裁の判定>に混乱が生じている。また、他の州でもその条項がコピーされ、長期的には、法の乱用により、移民が犠牲になる可能性が懸念されるなど、最高裁決定の衝撃は多大である。

アラバマ、ジョージア、インデアナ、サウス・キャロライナ、ユタの5州はそれぞれ、多少の違いはあるが、アリゾナ州の移民法と同様の移民法を制定している。この5州は、最高裁の決定に肯定的な傾向が強い。26日の『USA TODAY』によると、アラバマ州の下院議員、ミッキー・ハマンは、アリゾナ州移民法で生存したその条項を、「肝心かなめの歯は残った」と表現し、重要な法の部分が生き残ったと解釈している。25日の『NBCニュース』によると、既に個人の移民状況を確認できる権限を警察に与える移民法を制定しているアラバマ州は、アリゾナ州の移民法より厳しく、不法移民の大学入学や不動産の賃貸を非合法としている。ジョージア州の知事ネイサン・デールは「最高裁は、アリゾナ州の主要な制定法を支持しているようであり、州は連邦政府の移民法を援助する権利がある」と述べ、アリゾナで維持した条項が最も重要な法だと解釈している。

サウス・キャロライナ州の司法長官アレン・ウイルソンは「移民に登録書を要請し、携帯させることは憲法違反になったようだが、警察官による個人の身分チエックを可能にした点で、重要な条項である」と述べている。インディアナ州の司法長官も、警察官が疑わしい人物に職務質問できる程度のシステムはあるが、交通の場合でも、交通違反が疑わしい個人の移民状況を確認できる可能性を示唆している。しかし、交通違反は犯罪ではないため、この発言は最高裁の判定に挑戦の構えを匂わせる印象がある。ユタ州の司法長官は、最高裁の判定を正確に解釈しているようであり、重罪または軽犯罪で逮捕された人物に対しては、移民状況を警察がチエックできるようになったと述べている。

一方、その法の乱用と、人種差別や偏見に繋がる恐れがあることを懸念する声も出ている。25日の『ワシントン・ポスト』紙によると、地方および全国の移民支持グループは、他の州がアリゾナで生存した条項のコピーを制定することで、移民の合法、非合法に関係なく、全ての移民が「警察のプレッシャーやハラスメント」の犠牲になりやすいことを懸念している。ペンシルベニアやミシシッピー州などは、「法的な挑戦となり得るアリゾナ・タイプの法律の導入を待っている」状態のようだ。従って、移民支持グループの代表は、移民が人種差別や偏見の犠牲になることを阻止するため「連邦政府が総括的な移民改正法案を制定することが何より重要である」と語っている。

同紙によると、米国土安全保障省は、今後、何ら犯罪に問われていない不法移民の拘留命令を発行することはなく、州や地方の警察当局が独自に不法移民の移民状況を確認する必要はないことを、最初にアリゾナ州から順々に明白にしていく方針があるようだ。今後の動向としては、既にアリゾナ州と同様の移民法を制定しているアラバマ、ジョージア、インディアナ、サウス・キャロライナ、ユタ州は、最高裁の決定に従った移民法の改正が要求されるものと思われる。

米最高裁はアリゾナ州移民法の大半を却下

本日25日、米国最高裁は、アリゾナ州の移民法の大部分を憲法違反とする決定を公表した。全国州立法協議会(NCSL)の情報によるとアリゾナ州の移民法は2010年7月29日から効力を発揮することになっていたが、前日28日、連邦政府の米国司法省はそれを憲法違反とし、最高裁に訴訟を提起していた。オバマ政権は、アリゾナ州の移民法が他州に及ぼす影響と連邦政府の移民法が弱体化することを懸念していた。約2年間、論争的な移民法であったため、最高裁の決定はオバマ大統領にとって大幅な勝利となった。一方、過去に「アリゾナの移民法は、米国のモデルだ」と賞賛したロムニー氏にとって、不法移民問題で、ダブルパンチを受けたような結果になった。

NCSLの説明によると、問題とされていたアリゾナ州移民法の4つの条項は(1)州の警察官が怪しいと思う人物に職務質問を行うことが可能である、(2)州は移民に外国人登録書を要請し、常に携帯することを義務付けることが可能である、(3)帰化していない移民の就労を禁止することが可能である、(4)警察官は、不法移民であることが疑わしい人物を逮捕状なしに逮捕することが可能である。

最高裁はこの4項のうち、上記(1)の条項を除いて、全ての条項を却下した。本日の『ワシントン・ポスト』紙によると、上記(2)と(3)の条項は、移民法に関する「アリゾナ州の権限が紛れもなく連邦政府の移民法の権力を先制している」というのが最高裁判事大半の意見であったと報告している。条項(1)に関し、警察官は特別な事情で呼び止める人物の移民状況を確認するときは、連邦政府と連携を取る必要があることを明白にした。

資金集めでアリゾナ州に滞在していたロムニー氏は、最高裁の決定に反応し、「特に、連邦政府が責任を果たしていない時は、各州は境界線の安全性を強化し、法を保持する義務と権利がある」と語り、オバマ氏は「移民問題でリーダシップが欠けている」と批判した。本日の最高裁の決定は、全面的に連邦政府の移民法の権限を尊重する立場を明確にし、15日にオバマ氏が宣言した不法移民の大統領令をバックアップする形となった。しかし、アリゾナ州の移民法を支持していた州にとっては、かなりの打撃を受ける結果となった。今後、連邦政府の移民問題に関する責任の追求は、特に不法移民取締り強化と人権尊重のバランスを考慮する必要があると思う。

モルモン教がロムニー氏の大統領選のネックになるか?

21日の『ギャロップ』の世論調査によると、アメリカ人の10人中4人は、ミット・ロミニー氏がモルモン教徒であることを知らない。大統領候補者がモルモン教徒であった場合18%のアメリカ人は、「その候補者に投票しない」と答えている。この傾向はギャロップが調査した1967年から2012年までの45年間で、2007年の24%を除いて大差はないと述べている。1963年から69年までミシガン州の共和党知事であったロミニー氏の父、ジョージ・ロムニー氏は1968年の大統領選で、共和党の有力候補者であったニクソン氏に敗北している。モルモン教に対する国民の印象は、その息子であるミット・ロムニー氏が大統領候補になっている今日の状況と変化がないという。

また、「貴方の支持する党の大統領候補者がたまたまモルモン教信者だった場合、投票しますか」との質問に共和党支持者の場合10%、無党派層18%、民主党支持者24%で、リベラル派ほど、モルモン教徒の大統領候補者に対する否定度が高くなっている。一方、大統領候補がキリスト教徒である場合、「投票しない」と答えた率は17%、プロテスタントの場合18%、カトリックの場合17%の結果が出ている。

1960年のギャロップ調査の記録によると、21%のアメリカ人は、大統領候補がカトリックだった場合、投票しないと答えているが、カトリック信者だったジョン・F・ケネディは、1960年の大統領選に勝利している。当時、ケネディがカトリック信者であったことはほとんどのアメリカ人が承知していたという。今回の世論調査では、ロムニー氏がモルモン教徒だと正しく認識しているアメリカ人はわずか57%、キリスト教などの他の宗教だと答えた率は10%、33%は「全く知らない」と答えている。ギャロップは、モルモン教の大統領候補者に投票しない可能性があるのは、この33%の中に含まれていると推測している。今後数ヶ月間で、ロムニー氏の信仰が知られるようになれば「否定的な要素になる」と予測している。

ギャロップは、歴史的に「黒人、女性、ユダヤ人など候補者の人種や性別に対する抵抗は低下している」傾向にあると報告している。一方、モルモン教の大統領候補者に対する抵抗は、ジョージ・ロムニー氏がモルモン教信者として、大統領選に出馬した1967年と、その息子であるミット・ロムニー氏が大統領として候補している45年後の今日と変化がないことに深い関心を示している。

この世論調査の大事な注目点は3つあると思う。1点目は、有権者の党派別の調査で、共和党支持者が10%で最も低かった理由は、この世論調査が実質された6月7-10日はすでに、オバマ氏とロムニー氏のいずれかに国民の選択の焦点が定まった時期であるからである。2点目は、『ピュー・宗教フォーラム』の調査によると、米国のキリスト教信者は約78%、プロテスタントが51%、カトリックが24%、モルモン教がわずか1.7%であるが、宗教人口層に大差がある割には、上記の各宗派別の不支持率に大差がない点である。3つ目は、なぜ、モルモン教がギャロップの主な調査対象になっているのかという点である。その理由は、モルモン教はスードー・クリスチャン・カルト(擬似のキリスト信仰)だとの偏見があるためである。カルトと呼ばれる宗教は世俗的であるとして批判される場合が多い。

偏見はオバマ氏も同様に経験しており、「オバマは、社会主義者でイスラム教信者だ」と信じている少数派も存在する。しかし、有識者ほどこのような説を否定している。ピュー・フォーラムの調査によると、米国の歴代大統領は98%が何らかの宗教に属しているが、オバマ氏もその例外ではなく、2008年の脱会以前、20年以上シカゴで三位一体原理キリスト教団のメンバーであり、大統領就任前後、ワシントンD. C に新しい教会を探していたことが知られている。宗教界がアメリカの政治に与える影響は底知れないが、61%のモルモン教徒が集中するユタ州を除いて、今回の大統領選で、モルモン教が、ロムニー氏の決定的なマイナス要素になるとは考えにくい。

具体的な移民政策がないロムニー氏

不法移民の強制送還停止を宣言した大統領令は、1週間が経過した今も引き続き波紋が広がっている。21日、ロムニー氏はヒスパニック系の有権者が大勢参加したフロリダでの大会で始めて、移民政策をソフトな口調で慎重に語った。その際、オバマ氏の不法移民強制送還停止の大統領令を撤廃するかどうかは明確に表明せず、「その大統領令を長期的に検討する問題に置き変える」と述べた。更に、もし、「自分が大統領だったら、不法移民の問題を一時的な措置で解決せず、長期的に共和党、民主党議員と一緒に解決していく」と述べた。合法移民に関しては優先的および合理的な方法で強化する方針であると述べたが、不法移民の問題は「公民的に毅然とした態度で臨む」と述べ、具体的な政策を語ることはなかった。

この大統領令の執行後、ヒスパニック系のオバマ氏に対する支持率は66%、一方ロムニー氏への支持率は25%であると言われている。同時に、民主党のオリジナルに近いマルコ・ルビオ氏のドリーム法案も「効力的に抹殺した」したと言われている。当然、様々な反動や批判は免れない。移民問題を専門とする保守派の非営利団体、『アメリカ移民改革同盟(FAIR)』は、「140万人の不法移民に恩赦を与えた」として、「合法移民の労働者を守る」ため、この不法移民の恩赦に反対する声名を行っている。他、一般的に共通した批判は、オバマ氏の大統領令は一時的な解決法にすぎない、「議会交渉の機会を遮断した」ということである。

一方、当日フロリダでの大会に参加した多くのヒスパニック系有権者は、ロムニー氏が何ひとつ具体的な政策を表示しなかったばかりか、「長期的に解決する」、「両党で取り込む問題である」と、ロムニー氏が大統領選に勝利した場合、現大統領令の撤廃暗示も疑わせる発言に、不安感と失望感をつのらせている。特殊な環境下に置かれた若い世代の不法移民問題は微妙であるだけに、オバマ政権の国土安全保障省が提示した具体案(筆者16日「オバマ氏の不法移民の国外追放停止表明」に記載)に比較して、ロムニー氏が、別の選択肢を提示しなかった点は、本人の弱点をつかれる結果になった。また、「議会交渉の機会を遮断した」との批判については、10年以上、反対派がその機会を避けているため通過していない現実を無視して、大統領令の執行後に騒いでも意味がない。いずれにしても、ロムニー氏は具体的な移民政策案を持っていないことを浮き彫りにしている。

オバマ政権の医療保険改正法は生き残るか?

米国最高裁は、3月26日から28日まで、2010年に制定されたオバマ政権の医療改正法に関する聴聞を行い、今月末までにその聴聞の判定結果を発表します。この医療保険改正法は 2014年から施行される予定ですが、2010年共和党議員らにかなりの修正を加えられて署名に至った後も法の合法性をめぐり論争が続き、ほぼ足踏み状態になっています。国民に医療保険の加入を義務づけ「加入しない国民には罰金を科す」とする「強制加入(Individual mandate)」は合法的であるかどうかが論争の主要点です。

この医療保険法は、患者保護及び経費の側面でも、医療の質と効率性を掲げていますが、反対する人達は、購入したくない物を無理に押し付けられることは、根本的 に「自由の侵害である」と抵抗しています。また、政府の権限が拡大する可能性を懸念する議員や一般の国民もこの医療改正法に反対しています。ミッド・ロムニー氏は、マサチュセッツ州の知事時代に類似した医療保険法を制定していましたが、この法を「オバマ・ケア」と呼び、全面撤廃 を掲げています。一方、支持派は 逆に「自由が拡大する」と主張し、何らかの病気を既に患っている人は医療保険に加入しにくい従来の医療保険制度に反して、更に3000万人以上の保険加入が可能になること、高騰し続ける医療費を抑えることが可能であると主張しています。このように、前者と後者の 「自由」の解釈が異なっていますが、立場を明確にせず沈黙を守っているのは唯一医療保険会社です。医療保険加入者が増大すれば、利益が見込めることは明らかですが、支持を明らかにすると宗教団体からの圧力が懸念されるからです。

26日に始まった米国最高裁での聴聞は、この罰金を徴収する方法が課税と同じだとする観点から税金ではないかとする意見が提起され、罰金が税金の類になるのかどうかという論争が焦点になりました。加入しない国民に対して、実際にその罰金を科すケースが発生する以前に、最高裁で聴聞することは、反差止命令法(Anti-Injunction Act )の法律に照らし、「時期が早すぎた」からです。27日の二日目は、議会が国民に医療保険加入を強制し、2014年までに加入しない国民に対し、2015年の課税時期から罰金を科すことが合法的であるか否かの論議に集中しました。医療保険を国民に強制する権利が議会にあると主張するなら、保険に限らず、健康上推薦可能な他の製品、例えば、ブロッコリーの購入も強制することが可能なのかどうかという質問も提起されました。これに対し、政府側の弁護団は、医療保険を義務づけることは、医療保険に加入することで、国民が積極的に国の経済に関与することを意味し「国の経済問題に関与する通商条項 (Commerce Clause)に照らし、合法的である」と反論しました。合法性の是非に関する論議に集中した2日目は、判事間の見解を二分しました。

最終日28日の最高裁の聴聞では、オバマ政権の医療改正法で加入者の増大が見込まれているメディケイド・プログラムを各州へ参加要請する条項が不当に強制されたものであるかどうかの論争が展開されました。メディケイドは1965年の社会保障制度の改正により制定されたもので、連邦政府と州の連帯資金プログラムとして、貧困ラインの低所得者で子供も含めて医療保険に加入できない国民を対象にした公的医療保険制度です。各州は独自の名称によるプログラムを準備し、その責任を担っています。また、1990年代から2010年まで数々の法制定により、メディケイドの規模は拡大し続けています。 『Medicaid.gov』によると、現行のメディケイド制度は政府が財政の豊かな州にはその費用の50%、乏しい州には75%、平均57%を負担する 補助金を各州に提供しています。子供用の医療保険プログラムを含めて現在約6000万人の低所得者がこの恩恵を受けています。

オバマ政権の医療改革法が2014年から施行された場合、それに伴い、変化する部分は、65歳以上を対象にしたメディケアの条件に適用せず、またどのような医療保険にも加入する余裕のない、数千万人の貧困ラインの低所得者に更なる援助を拡大することです。このような追加分に対して、施行当初から2020年まで連邦政府がその費用のほぼ100%を支払い、長期的には90%くらいまで減少させることが新たな展開になるようです。ほぼすべてが共和党知事の監督下にある26州では、長期的に連邦政府側の補助金が減少すれば、その分だけ州の負担が増えることや、プログラムが拡大し過ぎて、連邦政府からの資金に依存している状況で、州が連邦政府のガイドラインに従わない場合、補助金は停止されることなどを理由に「強制的」であるとし、オバマ政権の医療改正法の完全撤廃を求めています。

また28日は、医療改正法の「強制加入」の合法性の是非に関する論争が再度重要課題となり、今後の選択の可能性が提示された点で生産性があったと思います。オバマ政権の「強制加入は通商条項に照らし合法的である」とする主張が否定され、憲法違反の決定に至った場合、上記のメディケイド拡大案も含め、医療改正法それ自体が無効になる可能性がある一方、分離条項(Severability Clause)に基づき、問題のある箇所を削って使える部分は残す方法があることも示唆されています。この法の生き残りを希望するオマバ政権側は「強制加入」が憲法違反である場合、罰金などの強制部分を修正し、他2~3の条項を削除するのみに留めるとことを主張しているようです。

結論として、米国の医療改革法は11月の大統領選で最も重大な国内政策のひとつであるため、3月の最高裁の聴聞と今月末の最終決定は歴史上画期的なイベントであると思います。3日間の最高裁聴聞での論争の核心部は、医療保険に加入しない個人に罰金を科すなどの「強制加入」が通商条項に照らし憲法違反 であるか否かです。聴聞最終日に提示された3つの選択詞である、「全面撤退」、「強制加入部分の削除」、及び「強制加入部分と他一部条項の排除」のゆくえが6月末以降明白になるはずです。また、オバマ政権の代表側は、既に病気を患っている人に対して加入を拒否する保険会社の「差別」を禁止するよう最高裁に要請しました。オバマ政権の医療改革法が生き残るかどうか、今重大な転換期を迎えています。

医療保険非加入者の早期死亡

医療分野で消費者を保護する非営利団体の『ファミリーズUSA』は、「医療保険非加入者の致命的結果」と題する報告書を発表した。6月度の報告によると、2010年、医療保険に加入していない全米の人口は約5000万人に達している。経済不況の2008年以降、高い失業率、更に医療費高騰で、医療保険を失う人が増加している。保険に加入できない最大の理由は「すでに病状が診断された患者は、保険料がかなり高くなる」ためである。

最近まで保険会社は、すでに病状が診断された患者の保険加入を拒否していたが、このような状況は、今年3月、オバマ政権の医療保険改正法の合法性をめぐる米国最高裁による聴聞の機会に、オバマ政権が公表している。従って、保険会社は健康上に問題のある人の保険加入を拒否するかわりに、保険料を引き上げているものと思われる。

『ファミリーズUSA』は、医療保険に加入できないため適切な治療を受ける機会がなく、早期死亡するケースも増えていると報告している。報告によると、25歳から64歳までの年齢層で、医療保険に加入できないため死亡する人は、1時間ごとに3人、毎日72人、毎週502人、毎月2175人、年間で26100人に達すると推定している。医療保険がないため、早期死亡に至る具体的理由は、緊急医療システムを受けにくい、スクーリニングや医療予防管理を受けることが出来ない、必要な治療が遅れがちである、医療保険のない人はある人に比べて重病になりやすく、早死にする可能性が高いことを報告している。同団体は、支払に無理のない「オバマ政権の医療保険改正法が最高裁に却下された場合、壊滅的な状況になる」と危惧している。

米国で最も秀でたアジア系移民

米国大手の調査機関、『PEW リサーチ・センター』は本日19日、アジア系の合法移民に関する世論調査の総括的報告書を発表した。アジア移民の母国は、中国、日本、韓国、インド、フィリッピン、ベトナムの6カ国で、この6カ国のアジア系移民グループは米国の全アジア系移民の83%に匹敵する。PEWによると、近年、これらのアジア諸国からの移民数が急速に増えていて、ヒスパニック系合法移民の数を超過している。特に顕著な傾向は、近年のアジア系合法移民は、教育背景、永住権取得率、収入、異人種間の融合性、仕事の倫理観、英語力などが他の人種のグループよりはるかに優れている。

調査したPEWが特記しているのは、これらアジア系移民の大半は大卒で、「米国歴史上、もっとも高学歴の移民がアジアからの入国者だ」と述べている。25歳から64歳の61%は大卒であり、特に日本および韓国からの移民の70%は少なくとも大卒だと言う。歴史上、アジア系移民は、無学で技術もなく、貧しい移民が多かったため、頻繁に差別や人種偏見の対象になっていた100年前と比較して、かなり状況が変わっている。

近年のアジア系移民は、世界のどの国の移民よりも永住権を受理している割合が3倍高いという。家族との再結合が最も共通した永住権の取得目的であるが、それ以上に合法的就労による移民も増えているという。また、PEWの調査によると、2010年のアジア系移民の中間収入は、66,000ドル、白人は、54,000ドル、米国人一般は49,800ドル、ヒスパニック系は40,000ドル、黒人が33,300ドルとなっていて、収入ランクもアジア系移民がトップである。

アジア系移民は米国での融合性も高く、異人種間結婚が米国では珍しくなくなっている。フェイスブックの創設者マーク・ザッカーバーグは、最近結婚したプリシラ・チャンは中国系アメリカ人であり、白人以外の人種と結婚した人口層の37%に属しているそうだ。これら6カ国のアジア系移民のうち、異人種間結婚の率が最も高いのは、日本人で、最も低いのはインド人だそうだ。更に、アジア系移民は、一般的に勤勉であり、69%のアジア系移民が「一生懸命働く」という観念を持っており、58%の一般的な米国人に比較して、仕事の倫理観が高いという。また、93%のアジア系移民が母国の国民を、「一生懸命働く」と評価している。

英語力に関して、アジア系成人移民の74%は、米国以外の国で生まれているが、このうち50%は英語力良好だと言う。2010年度の米国国勢調査局の資料に基くPEWの調査によると、現在、米国に住んでいる中国人は約400万、フィリッピン人340万、インド人320万、ベトナム人170万、韓国人170万、最後に日本人が最も少なく130万である。3億を越える米国の全人口からするとアジア系移民は少ないが、様々な角度から優れているという評価は、すでに、10年以上前から知られている。アジア系移民の米国社会で果たす役割を再認識させられる。

米大統領選注目のポイント

大統領選挙で勝利の鍵を握るのは、無党派州の選任者数ですが、その最も重要な州はオハイヨ州の18です。通常、民主党州〔青〕のカリフォルニア55はオバマ氏が獲得し、共和党州〔赤〕のテキサス州38はロムニー氏が獲得することは、ほぼ間違いないと言われています。歴史的に、オハイヨ州18の選任者数を獲得した場合、勝利する可能性が高いと言われています。オハイヨ州が重要な理由は様々ですが、クリーブランド、シンシナティ、コロンバスなど大都市で構成されていること、多種の少数派民族グループが多いこと、政治的に穏健派が多いことなども含めて、社会、人口動態学的にも、有権者票が割れる可能性が高いからです。オバマ氏が15日、同州クリーブランドでの選挙キャンペーンで熱のこもった長いスピーチを行い、ロムニー氏も同日、オハイヨ州の各地を駆け回った様子を見ても、その重要性が窺がえます。

18日の『ワシントン・ポスト』紙は、過去3回の選挙でオハイヨ州が大統領選挙で勝利の鍵となった州であり、「今年の大統領選で、オバマ氏がオハイヨ州で勝利すれば、ほぼ確実に再選される」と述べています。更に、「オハイヨ州で敗北して、ホワイトハウス入りした共和党の大統領候補者は存在しない」と、同州が極めて重要な選挙区であることを強調しています。無党派州の中でも、「ミシガン州は数ヶ月前、オバマ寄りの州になった」ようです。また、6月5日のスコット・ウオーカー氏の解職選挙後、筆者は、ウイスコンシン州は、共和党の州として加算していますが、同州は「解職選挙で、州の世論を二分したため、解職選挙の結果に関係なく、ウイスコンシン州はオバマ大統領には安全だと民主党は思っている」らしく、「ウオーカー氏の勝利は、共和党に確信を与えた」が、それがそのまま「大統領選に反映するかどうかは疑問である」と述べています。

同紙によると、ロミニー氏にとって、難しい州は、2008年に共和党の大統領候補であったジョン・マケイン氏が敗北したペンシルベニア州です。オバマ氏にとってはフロリダが挑戦的な州であり、オバマ氏は、オハイヨとフロリダの2州に重点を置くことが戦略だと言われています。オハイヨ、ウイスコンシン、ミシガンの3州は経済状況が向上しているため、オマバ氏に有利である反面、いずれも2010年に就任した共和党知事の功績が評価されるため、両氏にとって挑戦的な州に加えて、この3州の動向も注目されます。

物議ある不法移民法の大統領令

オバマ氏が15日に大統領令を行使した新たな不法移民法は、推定80万人に条件付きで、米国への一時的滞在と労働許可を与えた。これは、政治的動機であると批判され、ロムニー氏の立場も微妙な状態に置かれている。CBSニュースのベテラン キャスター、ボブ・シーファー氏は、16日、ロムニー氏の選挙キャンぺーン先でインタビューを試みた。

シーファー氏は「大統領に就任したら、オバマ氏の新たな不法移民法を保持するかどうか、あるいは撤廃するか否か」を数回繰り返し聞いたところ、ロムニー氏は明確な返答を頑なに拒んだ。しかし、自分の意志とは関係なく米国へ連れてこられ、不法移民になった子供達には同情するとし、「大統領令ではなく、総括的な移民法を議会で通過させる方法を望んでいた」ことを明らかにした。また、「政治的動機によると思うか」と聞いたところ、ロムニー氏は、「その点については大きな疑問が生じることは確実である」と答えた。

17日『ロイター』は、オバマ政権下で、毎年40万人の不法移民が強制送還されていたため、ヒスパニック系の団体から批判されていて、不法移民に厳しいロムニー氏とオバマ自身の政策とを対比させるためだと述べている。また、ホワイトハウスのアドバイザー、デイビッド・プラウフェは、政治的動機の疑惑を否定し、「地域共同体の安全性を脅かす不法移民の犯罪者と、真面目な学生等を区別する必要がある米国国土安全保障省の「自由裁量決定による執行である」と説明している。オバマ氏は、運命的に不法移民になった子供達を守るドリーム法案を長く支持していたが、「共和党の反対があったため議会を通過していない」と報じている。

しかし、ロムニー氏は、シーファー氏のインタビューで、「本当に大統領が、このような子供達の解決を望んでいるのなら、選挙数ヶ月前ではなく、3年半前に何らかの対策を講じていたはずだ」と述べている。『ロイター』は、ロムニー氏が今年始め、「就労が困難な不法移民は、自ら積極的に自己送還することを望んでいる」と述べていたことも伝えている。

フロリダ州の若手上院議員で、ロムニー氏の副大統領候補者リストの中でも有力であることが噂されているマルコ・ルビオ氏は、このような不法移民に何らかの法的機会を与えるための「ドリーム法案に似たような政策」の制定を予定していたと言われている。しかし、実際のところ、その法案の発表時期も文書提示もなく、またどれ位、共和党の支持を得られているのかさえ明白にされていないため、その信憑性は定かではない。選挙に重要なヒスパニック層にアピールするための戦略であるとの見方もある。ルビオ版のドリーム法案も急に浮上した話であるが、それが事実であったとしても、共和党の反対により10年以上議会を通過しなかった民主党のドリーム法案が、共和党議員によるコピーならすぐ通過するという矛盾した話もないはずである。

オバマ氏の大統領令は「長期的に解決すべき問題を困難にした」とコメントしたロムニー氏は、ヒスパニック系が多い不法移民の子供達の事情も、ヒスパニック人口層の重要性も認識しているはずである。選挙前の大事な時期に、ヒスパニック人口層の反感を買うような発言もできない反面、不法移民に反対する共和党議員とのバランスもあり、ロムニー氏は微妙な立場に置かれているのは確かである。選挙前の大統領令は何かと物議をかもし出しているようだ。

オバマ氏の不法移民の国外追放停止表明

オバマ大統領は15日、ホワイトハウスのローズ・ガーデンで、記者団を前に、大統領令として異例の発表を行いました。「若い世代の将来を考え、一時的なステップとして、非合法で滞在している若い移民の国外追放はやめるが、引き続き、国境付近の強固な警備と安全性を維持する」と述べました。これを受けて、ロビー活動および各地でデモ運動を行っていた、不法移民の学生や若い人達は歓声をあげて喜びました。

この発表後、ミット・ロムニー氏は「この問題は、長期的観点で解決すべきであるが、オバマ氏は、この問題の解決を困難なものにした」と意味不明な一言のコメントを行いました。この決定にショックを受けた反対派は、選挙前であるだけに、政治的意図によるものと批判し、いずれ恩赦または市民権を与えることになると懸念しています。数千万人が失業している現在、アメリカの労働者を守ることが先決である、不法移民は、不当に永住権や市民権を要求している、「一方的な大統領令は計画的な法の回避につながる」と、反対派の意見は手厳しいものがあります。

『CNNニュース』でインタビューに答えた米国土安全保障長官のジャネット・ナポリターノは、「真剣に教育に取り組んでいる若者がこの国で必要としている人材である」と述べ、大統領の決定は良いことで賢い選択だと述べました。また、重罪、軽罪を問わず、不法移民の犯罪者や、安全保障を脅かす犯罪者は例外であり、恩赦を与えるようなこともなければ、市民権や永住権を与えるための措置ではないことを明白にしました。

この大統領令による不法移民法変更で、国外追放を免れる人達は、(1)入国時16歳以下であったこと、(2)5年以上米国で生活していること、(3)高校以上の高度教育を受けているか在学中であること、または技術習得を目指しているか、良好な勤務記録のある退役軍人であること、(4)30歳以下で犯罪経歴がない、などの条件に適合する必要があります。

オバマ氏の発表に関し、その是非をめぐる論議(特に経済的側面)は今後も続くものと思われますが、このような機会を長年待ち続けた若い多くの不法移民は、まさに「夢が叶った」と狂気しています。長い間、ドリーム法案を待ち望んでいた彼らにとっては、画期的な進展であり、ロビー活動やデモ運動、ヒスパニック系団体や民主党議員などからのプレッシャーなどが、今回の発表に至ったのではなかろうかと思います。オバマ氏が2011年1月の一般教書演説で、ドリーム法案を支持する声名を行ってから、約1年半が経過してやっと、彼等の「夢を叶えてあげた」ことになりますが、今後政局が大きく変わる時、またはロムニー氏が大統領になったとき、それが<つかの間の夢>に終わることにならないか懸念されるところです。

米国は1875年以前までは、不法・合法の厳格な区別はなく、歴史的に移民で構成され、移民で築かれた特殊な社会です。不法移民であっても、教育と技術で自己を磨き、努力して生きる者にチャンスを与え、開かれた多様文化の伝統を守り続けてきたユニークな国です。米国発展の大きな要因となった、このような伝統の強みは今後も守り続けていくべきだと思います。筆者は、米国をスープに例えて、スープは材料が多いほど美味しい味を出すと考えています。

オバマ・ロムニー両氏の経済政策論争

最近、オバマ大統領とミット・ロムニー氏はそれぞれの選挙演説でお互いに攻撃論争を展開している。14日、オバマ氏は、オハイヨ州のクリーブランドで50分以上の長いスピーチを、ロムニー氏は同州のシンシナティで20分程度の簡単な選挙演説を行った。ロムニー氏は全国民の減税、オバマ氏の健康保険改正案の撤廃、規制緩和、連邦政府の経費削減、及び天然油の輸送システムであるキーストーン・パイプラインを支持することなどを語った。13日の『ワシントン・ポスト』紙によると、ロムニー氏は「この選挙は、市民、企業、及び政府の関係を決定する転機になる」と述べている。「減税の維持は新たな事業の投資を促進するため、経済成長と政府への歳入につながり、規制緩和は事業の経費を削減し、米国のビジネスの競合性を高める」というのがムニロー氏の持論である。ロムニー氏は、オバマ氏の経済刺激対策で、7,870億ドルを通過させ、借金したが、失業率も8%以下を維持できず、40ヶ月間8%以上であることを指摘した。更に、「過去3年半の記録を見ると、オバマ氏は、米国歴史上、最も反投資、反ビジネス、反雇用政策の大統領である」と述べた。

一方、オバマ大統領は、クリーブランドでの演説で「11月の大統領選で、有権者は最も重要な米国の経済に関わる全く異なる二つの選択肢のいずれかを迫られることになる」と述べた。その選択肢とは、「如何に早く経済成長させるか、どのように雇用を生む出すか、どのように負債を減少させるか」を強調したオバマ大統領の経済政策と、「5兆ドルの減税で、赤字は爆発状態になり、一方経済成長に必要な投資を損なうことになるロムニー氏の経済政策」のいずれかである。大統領は、今後数年間で負債、税金、資源、教育すべてに関する有権者の決定が子供達にも多大なインパクトを与えることを力説した。更に、ロムニー氏の経済政策との対比を明確にした上で、いずれかの候補者を選ぶという単純な問題ではなく、この国がどちらの道を歩むかの選択であることも力説し、国民にその選択を促した。

更に、富豪層への減税、規制緩和は雇用拡大につながり、それが下層部も潤うと言われてきたが、現実は「過去2~30年間でトップ1%の富豪層のみが275%も収入が増える一方で、中産階級は減収している」ことを指摘した。オバマ氏は、ロムニー氏の税制案は、富豪層の減税を行う一方で、歳入の努力は一切なされず、政府の出費は増大し、莫大な赤字を抱え、景気後退の結果に至ったブッシュ政権の路線延長であることを強調した。ロムニー氏が支持する5兆ドルの減税がどのように赤字の減少に繋がるかを問い、無理のない健康保険、教育費、住宅補助金を全て撤廃しても、米国の負債は減少しないばかりか、「結局、中産階級が高い税金を支払ことになる」と説明した。また、健康保険法の撤廃は、3,300万人が健康保険を失う結果になるばかりか、米国大手の病院カイザー・ファミリー・ファンデーションによると、数百万の介護患者や自閉症と身体障害の子供を抱える家族も含めて、更に1,900万人の健康保険も奪うことになると述べた。更にブッシュ政権時代に金融機関に対する規制が緩慢であったため、リスクの伴う住宅ローン契約が横行し、数百万の抵当倒れを含む財務危機により2008年から「異常な不況」に突入した様子を述懐した。

オバマ氏は、この演説で、ロムニー氏の「最も反投資、反ビジネス、反雇用政策の大統領」との批判を意識してか、27ヶ月間で50万の雇用を生み出したこと、過去3年間、労働者の税金を3,600ドル減税したこと、小規模事業の減税を18回実施したこと、過去3年間で署名した規制法案は前代の共和党の大統領より少ないこと、税金の無駄使いになる500以上の規制を改正したことなども語った。最後に、オバマ氏は、赤字を減少させることは、ほぼ誰もが同意している課題であり、そのためには、富豪層にもう少し税金を払ってもらうことが経済政策の要点であることを再度強調した。ビル・クリントンが、富豪層に課税し、レーガン政権下の莫大な赤字を黒字に転じ、23万人の雇用を生み出し、歴史上稀な経済回復を成し遂げたことを語った。また、トップ1%の富豪層は法外な利益を得ている一方で、どれほど懸命に働いても、ぎりぎりの生活を強いられている多くの国民との経済格差が経済回復の足かせになっていることを述べながら、「ロムニー氏と彼の仲間は、アメリカの富豪層に1銭の税金さえ上げない」として、オバマ氏の経済政策には同意しないことも伝えた。

オバマ大統領の出費に関する誤認識

「オバマは歴史上かってない無謀な出費家の大統領」と未だに批判する人達がいる。大統領は先日、「自分は莫大な赤字を背負う政権を引き継いだ」と述べているが、出費の数値に関しては、オバマ氏が大統領就任後の出費がブッシュ政権下で残った出費の記録に加算されているため、その数値に混同し、オバマ氏が、歴史上これまでもっとも出費の多い大統領だと勘違しているのではないかと思われる。財務情報を提供する大手のダウ・ジョンズが所有する『マーケット・ウオッチ』の調査によると、過去の前大統領4人に比較すると、オバマ氏の出費率が一番低いと説明している。

Government spending under Obama, including his signature stimulus bill, is rising at a 1.4% annualized pace slower than at any time in nearly 60 years.

この表は、『マーケット・ウオッチ』が米国行政管理予算局(OMB)と議会予算局(CBO)のデーターを基に調査したもので、レーガン時代から現在のオバマ政権の年間ごとの出費の増大率を示したものである。1982年から85年までのレーガン政権の年間の出費率は8.7%、86年から89年までの年間の出費率は4.9%。ブッシュ氏の父親の時代の90年から93年には5.4%で、レーガンの2期目より若干増大。クリントン政権期間の94年から97年は年間3.2%、98年から2001年までは、3.9%である。しかし、ブッシュ政権時代の2002年から05年までは年間7.3%、2006年から2009年〔2009年度はブッシュ氏の予算〕までの出費は8.1%まで激増している。

『マーケット・ウオッチ』によると、ブッシュ政権下での出費は2009年の会計年度で3.52兆まで達している。しかし、オバマ政権の2010年度会計予算で、1.8%、3.46兆ドルまで減少させたが、2011年と2012年の会計予算年度ではブッシュ政権の3.52兆ドルを超過している。2013年度は1.3%減少させて、3.58兆ドルまでに留まっているため、オバマ政権の2010年から13年までの出費は、オバマ氏の刺激対策費7870億ドルを含めても、わずか年間約1.4%の増加率であると説明し、一般的な誤認識を訂正している。

誤解の理由は、(1)いずれの大統領も就任1年目は、前年の大統領の政権下で承認された予算案でスタートする。つまり、2009年度の予算会計はジョージ・Wブッシュ政権下で認可されたものである。(2)オバマ氏は、初年度は実際、出費を抑えようとしている。(3)7、890億ドルの銀行救済、フードスタンプ、メディケアの出費は、オバマ氏が就任する以前になされたことを、民主党でさえ知らない議員がいるためであると結論している。

評価の良くないオバマ・ロムニー両氏の経済政策

11月の大統領選挙の重要な課題は経済であり、無党派有権者の意見は著しく重要ですが、13日の『ABCニュース』と『ワシントン・ポスト』が実施した世論調査によると、オバマ大統領とミット・ロムニー氏の経済政策は、いずれも無党派層には支持されていないようです。総じて、オバマ氏の経済政策を好ましいと答えた率はわずか38%であるのに対し、好ましくないと答えた率は54%です。ロムニー氏の場合も好ましいは35%で、好ましくないは47%の結果が出ています。更に、登録済み有権者の43%がオバマ氏の経済政策を好ましいとし、51%が好ましくないとしています。ロムニー氏の場合は前者が40%、後者が46%で、両氏の経済政策はいずれも評価が良くないことが判明しました。又、無党派層の人種別でもオバマ氏の経済政策は、特に白人の62%が支持しておらず、一方、黒人の68%は、ロムニー氏の経済政策を支持していないという結果も出ています。

この結果は、無党派の有権者は、経済政策に関しては、どちらも支持していないことを示唆していますので、両氏いずれも再度経済政策を見直す必要がありそうです。上記の原因は、オバマ氏の経済政策の場合、ブッシュ時代の永久減税の廃止が雇用の促進に歯止めをかけるとする意見もあるためです。ロムニー氏の場合、短期的な視点から雇用拡大に関する具体的なビジョンが感じられない点だと思います。

 

苦境に立つ米国不法移民の学生たち

米国にはある特殊な環境下で生きている若い世代が存在する。見かけは一般の若いアメリカ人と大差はないが、ひとつだけ大きく違うのは、市民権がないことだ。なぜなら、彼等は幼少の頃、米国に移住した不法移民の親に育てられたからである。親が不法移民であっても、米国で誕生した子供は自動的に米国の市民権を取得するが、生誕数ヶ月後に、乳幼児として不法移民の親に連れられ入国し、米国で成長した子供達には市民権はない。彼等の殆どは成長すると、米国が自分の国であると信じるようになる。そんな彼等にとって、不法移民のレッテルを貼られることは、究極の苦痛であるはずだ。

最近、ニューヨークでは、こういう境遇で育った数百万の学生らが、低賃金の仕事を探すため、苦戦していることが報じられている。彼等は、学生ローンの申し込みにさえ困難をきたしているため、仕事を探している状況であるようだ。しかし、現実はただでさえ失業者が多い現在、職を得るのは、かなりの至難であり、市民権のない学生達の生存競争は尚更厳しい時代だ。彼等の中には、ドリーム法案の制定に向けて、ロビー活動を行っているグループもいる。ドリーム法案は、2001年に数名の上院議員に提案されたものであるが、未だに議会を通過していない。この法案は、制定以前に最低6年間米国で生活しており、勤勉で高等教育の卒業者または、一定の期間に軍隊で奉仕した者に永住権を与えることになっている。この法案が制定に至らない理由も含めて、オバマ政権下の不法移民政策は各方面から批判されている。

オバマ氏は、2011年1月の一般教書演説で、不法移民流入を防ぐため、境界線の警備の強化を支持する一方で、不法移民の子ではあっても、米国で高度な教育を受けている若者につい ては、その将来を保護する声明を行い、憲法を支持する立場を明確にしている。また、「才能もあり、米国の国旗に忠誠をつくしている若者は、国を豊かにす る」と考えていて、「国外追放して、米国と競争する立場に追いやるような意味のないことをするより、研究分野や新たなビジネスの開発に貢献させる方が賢明である」と述べ、「国外追放するのはやめよう」と呼びかけ、オバマ氏の不法移民問題に対する立場を明確にした。

あの演説から、約1年半が経過した今日、このような不法移民のレッテルを貼られる学生に同情的な移民支持者は、ある種の危惧を抱いている。共和党にコントロールされているオバマ政権が、かってないほど不法移民の追放に厳しい政策をとっているため、場合によっては、彼等も国外追放のターゲットにされてしまう危険性を指摘している。『米国移民関税執行局(ICE)』によると、2011年度の不法移民国外追放は約40万人で、歴史上最大数に達したと報じている。この中の55%は〔殺人、放火、強盗〕などの重罪または軽罪で有罪に問われたケースである。2008年に比較すると、このような不法移民の犯罪者の国外追放は89%増えているらしく、不法移民の辛酸な状態が米国の経済状態を反映する鏡になっている。

アメリカ人の資産減少

昨日、米国連邦準備制度(FED) は、米国家庭の総資産が約40%低下したことを発表した。11日の『ロイター』によると、総資産の中間財産推定額は、2007年の126.4兆ドルから2010年には77.3兆ドルに下落していて、39%の減額に相当し、1992年の推移に下がったと報じている。FEDは3年に一回、このような経済指標を発表するが、更に、不動産事業、株または共同基金など末実現資本利得に帰す総資産も2010年には、11.6%から24.5%の範囲で減少していると発表。

バブルの崩壊、サブプライム・ローンによる住宅市場の崩壊で家の値段が大幅に低下したことと、2008年以降の大不況で、抵当倒れが続出し、更に、失業率が2009年には9.5%まで上がったことなどが主な要因である。一般的に、個人の最大の財産は家であるが、現在米国の3軒に1軒は、住宅ローンの総額が、家の価値より大きい、アンダーウオーターの状態で、多くの人が資産を失っている。米国が厳しい不景気状態であるだけではなく、複合的諸因に伴い、中産階級が貧困層に移行しつつあり、経済的苦境に直面しているのは確かである。11月の大統領選で、誰が勝利しようと、政府は、国内雇用機会の拡大による失業率の改善とともに、抵当倒れの阻止、住宅ローン支払調整の継続的援助など、山積する経済問題を抱えている。

静かに進行中の米国憲法改正運動

2010年1月21日、Citizens United v. Federal Election Commissionの裁判で、米国最高裁は、言論の自由、集会の自由、宗教の自由を保障した米国憲法修正第一条に基づき「政府は、法人及び組合による選挙献金の限度額を定めることは出来ない」と決定しました。この決定は、法人も言論の自由、ロビー活動の自由があるため、選挙献金に限度を定めることは憲法に違反するとの解釈によるものです。法人の富の影響力は、150年前に遡って見る必要があると思います。1886年、最高裁は、米国憲法修正第十四条により、解放された奴隷の権利を保護した1868年の修正法案に加えて、米国憲法のもとに「民間法人は自然人である」と決定しました。言論の自由も含めて、権利章典に基き、人々に与えられている同じ権利と保護を法人にも与えたのです。

ニューヨーク州立大学の考古学の教授、リチャード・ロビンズ氏の著書『Global Problems and the Culture of Capitalism』によると、1861年から始まった南北戦争を転換期として、アメリカの裁判所は徐徐に法人に課せられた様々な制限を解除し始めます。法人は、戦争から得た莫大な利益および、戦争で結果的に生じた政治的混乱と腐敗を利用して、主に鉄道建設に必要な土地と資金を得るため法律制定に介入するようになります。その後、次第に国の法律制定を牛耳るようになり、デルウェア州やニュージャージ州などのロビー活動は、特に法律で定められていないかぎり、あらゆる方法で、法人の経営者や幹事の責任義務を永続的に消滅させました。

例えば、1888年から1908年にかけて致命的な産業事故で、70万人の労働者が死亡した期間に裁判所は、労働者の職場での事故に対して、法人の責任義務を免除しました。更に、裁判所が法人を優遇した判決として、最低賃金制、労働時間の制限、最少年齢の制限などを禁止しました。今日、法人は自然人として法律制定に介入するためのロビー活動、メディアの利用、教育施設の建設、さらには慈善団体の設立も自由自在にできるほどの莫大な富と権力を獲得しています。暗殺死直前の大統領、エイブラハム・リンカーンは、富が少数派の手に集中し、腐敗した時代の到来を予期していました。

Citizens United v. Federal Election Commissionの裁判から2年以上が経過した今日、最高裁の決定に異議を唱える米国複数の非営利団体や個人は、法人の金力が政治家に及ぼす影響力や政治の腐敗を懸念し、「お金の自由は言論の自由と同一のものではない」と声をあげています。この憲法改正要求の趣旨は概ね(1)憲法により自然人に与えられた権利を法人から除外する(2)法人による全ての政治資金の提供を禁止する(3)議会と州が法人を規制する権利を確保する(4)選挙資金と出費の限界を設定するなどです。

1998年イリノイ州の上院議員時代に、同州での「ロビイストによる寄付金をほぼ禁止する」法案の通過を目指したオバマ大統領は、2010年の最高裁の判決にホワイトハウスから、「企業のロビイストが特定の候補者に無限の選挙資金を提供することで特別な利害関係が生じる」ことを懸念したコメントを行っています。共和党のジョン・マケイン氏は、2002年に政治寄付金を規制するマケイン・フェインゴールド選挙財政法案(McCain-Feingold campaign finance law)を制定し、2008年の大統領選の活動当時も、腐敗を防ぐため「常識的な寄付金の制限」を支持し、「大衆参加の政治」をアピールしました。

今年1月頃までには、コロラドのジェイムス・タウンの保管委員会は、米国憲法修正第一条による言論の自由は「無制限の選挙資金とは別のものである」とする憲法改正の決議案を満場一致で通過させています。ネバダ州のボウルダー市も、選挙資金規定を要求し「法人も自然人である」とする米国憲法の改正を促すための投票が可決しています。カリフォルニア州では、「ウォール・ストリートを占拠する」運動の中心地になっているロスアンゼルス、オークランドなどを含めた7都市の市町村議会で、「法人の選挙活動を有権者に保障されている言論の自由と混合してはならない」と主張して、憲法改正の運動が続いています。モンタナ州のミズーラ郡では、「法人は自然人ではなく、市民と同等の権利はない」ことを明確にした憲法改正案を議会に緊急要請するための住民投票が承認されました。ルイジアナ州のモンローおよびメイン州では、法人に自然人としてビジネスを慣行させないため、地域統治条例を通過させました。

憲法改正運動を推進している草の根運動は、最近少しずつ成果をあげています。今のところ、憲法改正を公式に表明しているのはわずか5州ですが、モンタナ州が規定する企業の選挙資金法案には23州の司法長官が支持しています。更に、全国各地200以上の都市が憲法改正の決議案を通過させ、1500以上の国や地方公共団体の職員、100名以上の連邦政府の議員がこの憲法改正を支持しています。最高裁の判決を覆す運動は全国レベルで静かに進行中です。

米国民が抱く放射線汚染の不安に答えたFDA

福島第一原発事故以後、1年が経過した今日でも、多くの米国民が日本から輸入される食品および米国領海で捕獲される海産物の安全性に著しい不安を抱いています。米国食品医薬品局〔FDA〕は、日本政府と綿密な連携をとりながら、日本の状況をしっかり把握するとともに、米国のモニター・システムも万全の体制であるとアピールしています。

FDAが5月23日更新した『放射線の安全性』の報告書によると、米国は、アメリカの食品供給を保護するため、特に輸入食品に厳密な検査システムを導入しています。例えば、FDA  は900人の調査官と450人の分析員がサンプルを集めて分析していて、毎年31,000の日本からの輸入品のサンプルを検査しています。更に、FDA は輸入品が市場に出回る前にサンプル検査を行っていて、これらの業務はアメリカ合衆国税関・国境警備局〔US Customs and Border Protection〕と協力体制で行っています。

更に、FDA は日本から輸入される製品の安全性を明確にするため、国境でのスクーリニング・テストを徹底して行っているようです。また、検査には、(分類1)日本の政府が販売または輸出を制限している製品、(分類2)日本政府が現在販売または輸出を禁じていない製品、(分類3)福島、茨城、栃木の3県から輸入されている食品または飼料で、FDA の輸入警戒に含まれていない製品、(分類4)FDA が基準を定めた食品の全ての中で、他の分類に属さず、輸入警戒品にリストされていない製品。この分類には日本から事前にモニターの情報を受けているものも含まれる、など4つのカテゴリー〔分類〕による検査工程を設定しています。

FDA は、放射線の影響を受けた地域の輸入会社から輸入される製品には特に注意を払っているようです。日本は出荷の情報を事前にFDA の事前通知センター(FDA’s Prior Notice Center)に知らせるシステムになっているため、米国国境での検査で安全性に不審のある食品または製品は市場に入荷しないシステムになっています。アメリカ合衆国税関・国境警備局(CBP)は、放射線検波装置を利用し、毎日、輸入食品、貨物、旅行者にたいする放射線検査のスクーリニング・テストを行っています。

FDA が実施したスクーリニング・テストの結果について:FDAの輸入調査官は5月23日までに、放射線同位体汚染検査で、約32、000のフィールド・テストを行った。その際、1299のサンプルを採集し、その内199品目は海産物であった。1299のサンプル中、1298のサンプルにはヨウ素131、セシウム134、セシウム137などの放射線同位体は検出されなかった。

食品中に含まれる放射線同位体の中で最も懸念される物質は、ヨウ素131、セシウム134、セシウム137などである。これらの他にFDA は、ストロンチウム90、ルテニウム103、およびルテニウム106のモニターも行っている。

日本から輸入される製品でFDA が規制している製品は、人間および動物の食糧、医療品、放射線を放出する医療器具、化粧品、人間および動物の薬品、ダイエット食品、動物の餌などが含まれている。日本から輸入される製品は全輸入品の4%にすぎない。その中の60%は全て食品で、魚介類、スナック菓子類、柑橘類の加工品、および野菜類などである。日本から輸入する食品は全体の4%である。乳製品は、FDAが規定した全ての製品のわずか0.1%であり、ほとんどの乳製品は国内生産である。

放射線物質で汚染された水が及ぼす海産物の安全性の影響についてFDA は、下記の理由により、海産物が人体の健康を害するとは考えていないようです。

1.日本から輸入してアメリカで消費される海産物は1%以下であるが、福島第一原発の近辺で捕獲された海産物はほとんど、あるいは全く輸入されていない。

2.水は本来シールド(遮断)し、濃度が希釈する性質を持つ。太平洋の大海の水は急速に希釈される。また、空中の放射線粒子は水の表面に漂うため、水中を泳ぐ魚と放射線粒子との間には水の体積があるため、それがシールドして保護する役目がある。

3.放射線同位体は急速に衰退する。例えば、ヨウ素131の半減期は約8日である。つまり、放射線レベルは8日ごとに半減する。

4.FDAは、トリプル・テスト〔三重検査〕を明白にしている。(1)日本が輸出する前に日本でも検査する。(2)市場に入荷する前にFDAの税関・国境警備局が検査する。(3)FDAが放射線測定器で検査し、不審なものは直ちにサンプル採集するなどのフィールド・テストを行っている。

最後に、福島原発近辺からアメリカの魚業沿岸に遊泳する魚の汚染に関して、FDAは魚が日本から米国の沿岸沿いに遊泳するには、ベスト・コンディションで数日を要するとしている。高度なレベルの放射線で汚染された魚が福島原発近辺からアメリカの沿岸に遊泳し、漁船に捕獲される可能性はほとんどない。仮に、そのようなありえない遊泳があっても、ヨウ素131のような寿命の短い放射線同位体は、遊泳する期間に放射線の自然的な衰退により、その汚染レベルは著しく低下する。日本は長期寿命のセシウム137でさえ、放射線汚染度はFDA の基準を下回ることを確認している。日本沿岸から約30キロ離れた飲料水の放射線は急速に消散しており、福島第一原発から離れた場所で捕獲された海産物には影響がない。

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参考資料: Radiation Safety:U.S Food & Drug Administration

政治の世界もお金次第?

6月7日の『CBS ニュース』によると、5日のウィスコンシン州の解任選挙〔リコール・エレクション〕で勝利したスコット・ウーォカー氏が集めた選挙資金は、3000万ドル、一方、トム・ベレッテはわずか400万ドルだったと言う。2008年の大統領選挙で、対抗した共和党上院議員、ジョン・マケイン氏の選挙資金は3億3300万ドルだったが、オバマ大統領は7億3000万ドルと2倍以上の資金を確保して当選に至っている。しかし、現在、共和党の対抗者、ミット・ロムニー氏が資金面でリードしていて、11月の大統領選はちょっと事情が違う。オバマ大統領は資金集めに必死にならざるを得ない状況のようである。

最近、11月の大統領選は、ミット・ロムニー氏が勝利するのではないかとの予測も除々に出始めている。そのような要因のひとつに資金力があげられる。『ニューヨーク・タイムス』紙によると、オバマ氏は3月末までに、$196,900,097の資金集めに成功していて、これは、ロムニー氏の$87,452,399の資金より、はるかに超過していた。しかし、5月には立場が逆転し、現在ロムニー氏がオバマ氏を追い越したと言われている。資金力が弱い候補者の方が、選挙に不利な理由はなぜか?それは、政治を金力で動かす、つまり金で政治家を買うことが平然とできる時代になっているからである。2010年、米国最高裁は、企業による無限の選挙資金提供を合法的であると決定したため、更にこの風潮は強くなり、パワー・ハングリーの富豪者の資金力が政治に与える影響は甚だしい状態である。

アメリカで4番目、世界で3番目の富豪者と言われるコーク兄弟(チャールスとデイビッド・コーク)は莫大な米国政治に影響力を持つことは知られているが、5日のウイスコンシン州の解任選挙にもコーク兄弟の資金援助が間接的に流れるシステムになっていたようだ。3月29日の『アルジャジーラ』によると、世界で最悪の環境汚染企業のトップ10にランクされている化学製品や石油精製を主な業務とするコーク産業の年間歳入は、1000億ドルである。コーク兄弟は徹底した反リベラル派で、オバマ氏の政治的敗北を信望するティパーティ運動の黒幕であるとも言われている。特にビジネスの完全自由化を目指し、徹底した規制緩和、気候変動の拒否、科学の否定、環境規制の撤廃などが、多数の保守派シンクタンク組織にたいする資金援助の根拠になっている。

一方、慈善家としても、教育、医療研究、芸術などの分野で多くの機関に寄付していることも知られているが、それは政治目的の寄付である。例えば、コーク兄弟は過去に100以上の大学に寄付したといわれるが、寄付の条件として、大学で自分達の政治思想を生徒に教育するためのプログラムを設定すること、またはそのような教育者を雇用することを前提としていると言われている。更に、The American Legislative Exchange Councilまたは米国立法取引委員会〔筆者訳〕、通常ALECと呼ばれる機関は、保守派のシンクタンク・グループ、各州の両党の議員、企業および財団のメンバーで構成され、企業減税、環境保護の最小限化、銃保持の権利の促進を含む自由市場を目的として、その研究と立法制定の草案を行い、法律制定に影響を及ぼす組織である。コーク兄弟はこのようなロビー活動を行う保守派のシンクタンクに長年多額の融資を行い、政治的に相当な影響力を維持している。

その典型的な例は、選挙の投票会場に運転免許証などの写真付きまたは、何らかの証明書を持参する規則を定めた、有権者ID法案で2003年から施行されているものだ。細かい規定は州により異なるが昨年の9月までに30州で制定されているこの法は、少数派への「抑圧法案」(Voter Suppression Bills)であり、企業の有利性を目論んだ州法だとして批判されている。また、『アルジャジーラ』によると、コーク兄弟の選挙資金の影響力は、上院、下院議員にも多大である。ニュート・ギングリッチ氏やミット・ロムニー氏は、以前、気候変動の法律制定を支持していたが、現在反対している。まさに、政治の世界もお金次第である。コーク兄弟の次ぎの目標は、11月の大統領選でオバマ氏を倒すことであり、そのためには莫大な選挙資金が流れると予測されている。

ウィスコンシン州の解任選挙結果に一言

ウィスコンシン州の知事スコット・ワォーカー氏は、今回の選挙でトム・ベレッテ氏に比較して53%対46%の票差、更に7対1の資金力の差で勝利したと言われています。ワォーカー氏は、早くからメディアをフルに利用した選挙活動の展開を可能にし、コウク兄弟やティパーティなど資金を提供する大物がバック・アップしたため、圧倒的な資金力が大きな勝利の要因だったようです。この勝利が意味するものは、ウィスコンシン州は完全に共和党〔色分けでは赤〕の州になったということです。また、5月に失業率が上昇したことで民主党やオバマ大統領にとってはタイミングも悪く、同州での今後の選挙運動は不利になることが予想されます。今後、団体交渉権は除々に破棄され、組合の存在も益々弱体化することは必然的です。公務員の将来の年金などは自分で責任を負う結果になる可能性もあると思います。極右傾向のワォーカー氏の今後の行動が注目されます。

山場を迎えたウィスコンシン州

米国で現在もっとも喧騒たる州はウィスコンシンです。同州知事のスコット・ウォーカー氏は、昨年1月、45代目の共和党の知事として就任した人物です。就任1ヶ月後、予算修正案で医療保険や年金支払の予算計画として、ある一定の基準で公務員の給料を減少すると発表し、更に州の安全性に関与する警察官や消防士を除き団体交渉権の破棄を主張したため、その後、労働者をはじめ、教育者、学生、一般市民の猛烈な反対に遭遇しました。ウォーカー氏の予算修正案は一方的で強引だとして反発も強く、抗議活動が2月中旬から始まり、その戦いは今日まで1年以上続いています。しかし、抗議から1週間後に公務員らは財務修正の案には妥協することを申し出ましたが、団体交渉権破棄の案は受け入れないことを明白にしました。この修正案に反対したウィスコンシン州の14名の民主党上院議員らは、ウォーカー氏が団体交渉権の破棄を撤回するまでは地元には戻らないと断言し、法案の議決を引き伸ばす為、州外に出ていくという事態になりました。

ウィスコンシン州は、2012から13年までの赤字は約35億ドルが推定されていて、予算修正案による赤字調整の必要性が州法で義務付けられているようです。ウォーカー氏は、昨年の2月には修正予算案を可決させる予定だったようです。メールで民主党議員との交渉も試みたとされていますが成功していません。3月、共和党にコントロールされているウィスコンシン州議会は、ウォーカー氏の予算修正案を州の新聞などに出版し、一般公開したことで裁判まで発展しました。5月には郡の女性判事によって、予算修正案の内容は州の「公開議会法に違反する」との決定がなされましたが、6月には州の最高裁がその判決を覆す結果になりました。

ウォーカー氏の公共サービスに奉仕する労働者への挑戦、団体交渉権の放棄、貧困層に対する連邦政府の健康保険であるメディケイド援助の拒否、および企業減税などの政策は激しい批判と抵抗の原因となりました。今年、ウォーカー氏は遂に解職選挙に追い込まれ、明日がその投票日になっています。この選挙で、州の有権者は、ウォーカー氏を解職するか、2004年からミルウォーキーの民主党の市長である、トム・ベレッテ氏を新たな知事に迎えるか、その選択に迫られることになります。ベレッテ氏は2010年の知事選で52対47%の票差でウォーカー氏に敗北しています。ウォーカー氏は、今年の大統領選の次ぎに大事な選挙だと言われている今回の解職選挙に相当な選挙資金を投資しているようです。

女性の参政権が批准された日

6月4日の今日は、93年前(1919年)、初めて女性の投票権を認める米国憲法第十九条の改正が批准された日です。下院304対89票、上院56対25票の圧倒的な結果により、女性の参政権が認められた米国歴史上重要な記念日です。米国は早くから、ウーマン・リブ運動が台頭した国であることは知られています。1840年代から80年代にかけて女性平等の権利を獲得するため活躍した、エリザベス・スタントンやスーザン・アンソニーなどの絶え間ない努力が実って女性の参政権が認められたのは、半世紀を過ぎてからです。

この女性参政権の勝利には重要なポイントがあります。それは、このような女性の先駆者の社会意識だと思います。彼女たちは、女性にも市民としての権利があるのなら、男性と同様の権利がないのは「自然の法則」に反すると主張していたからです。妻、母親としての役目は偶発的なものであり、女性は社会の一部であることの重要性を強調していたからです。これは、西欧に根付いていた性別役割の伝統に波紋を投げかける主張だったため、米国女性の世論を二分し、反女性参政権運動もあったのです。しかし、結局、勝利に導いた要因は、そのような反勢力より、女性参政権を目指す女性らの組織化や論争の展開が優れていたことも挙げられます。決定的な要因は、最後まで諦めなかった強さと組織の団結力かも知れませんね。現在、女性の避妊問題で論争があるため、11月の大統領選挙は、女性票が重要な鍵を握ることになるでしょう。

福島第一原発事故が米国人に与える食生活の影響

先週末、西海岸のカリフォルニア州で、捕獲されたブルーフィン・ツナ(マグロ)が放射線物質に汚染されていたことが判明した。昨年、ニューヨークでは、海産物を含めて、日本の輸入食材を使うレストランは客の目前で、調理したメニューの安全性をアピールするため、客のテーブルの前で放射線汚染度の測定を行い、客が納得してから、テーブルにその皿を置くという話や、当地での海産物輸入業者がかなり痛手を負った話を頻繁に聞いた。ブルーフィン・ツナは日本沿岸のみならず、太平洋北部、大西洋の西部や東部でも捕獲されているため、福島第一原発の放射線漏れが、広域に及んで海産物に影響を与えることになると不安の声があがっている。今度は、約9600キロ離れた、カリフォルニア海域で水揚げされるマグロは放射線物質に汚染されていると知った寿司好きのアメリカ人に何らかの心理的影響が出ていることは否定できない。私の友人は早速、「当分、マグロの寿司は食べない方がいいのかな」と言った。

29日の『ブルンバーグ』紙によると、米国科学アカデミーの研究者らは昨年8月サンディエゴで捕獲された、黒マグロ(Pacific blue fin)は、2010年に捕獲された魚類に比較すると10倍のレベルの放射線セシウムを含んでいたため、福島第一原発から海上に漏れた汚染水が原因だとみている。しかし、現在のところ汚染の安全基準を下回るため、今回捕獲されたマグロを食べても健康に支障はないという。生態系の原理から言えば、マグロのような大きな魚は小さな魚を食べるため、マグロの汚染度は上昇する。更にマグロは、水中で排泄するが、そのセシウムで汚染された海水を含む「放射線物質は海洋で経時的に希釈される」と科学者らは予測している。いずれ海中の汚染物質濃度が低下すれば、マグロの汚染度も低下するということである。その過程にどのくらいの時間を要するのか、その規模と速度を国民は判断できないため、日米協力体制で海産物の国際的安全性基準を明白にする必要がある。今や日本の放射線汚染問題は、日本のみならず、米国人の食生活にもある程度影響を与えていることは間違いない。

ビジネス経験を強調するロムニー氏

ミット・ロムニー氏は、数日前、できることなら、年齢、出生地などの条件はもちろん、「最低3年間のビジネス経験があることを大統領になる条件とする憲法改正をしたい」と述べた。そういう条件をつけると、他にも重要な経験が必要ではないだろうか?法律家としての経験、政治家の経験、あるいは、経済学 の知識など。しかし、一人の人間が出来る範囲は限られている。だからこそ、大統領には、いつでも各分野でのアドバイザーを選択することが可能なのである。 歴代の大統領には法学出身が多い。総体的には、知事や議員などの経験者が圧倒的に多く、元政治家が大統領に選出されていて、ビジネスの経験者は一人もいな い。もちろん、早期の大統領、例えば、ジョージ・ワシントンやトーマス・ジェファーソンは農業で多くの労働を提供していたという意味では、ビジネス経験が あると言えるかもしれない。しかし、ビジネスの経験はなくても、経済政策に成果を上げた大統領も歴史上多く存在する。ミット・ロムニー氏は、経済が低迷している現在、自分自身とオバマ氏を明確に区別する ための単なるトークで、憲法の改正を本気で主張したとは思わないが、「馬鹿な発言をしている」と批判する世論もある。

選挙の焦点は、雇用を生み出すことが国民の最大の関心事であるため、ロムニー氏は、そういう意味でビジネス経験を強調しているのかもしれない。しかし、個人のビジネスの成功と国の経済の回復とは別の問題であり、誰が大統領に就任しても、そう簡単に経済の流れを変えることはほぼ不可能であるはずだ。国の経済を回復または拡大の鍵を握るのは実は消費者であ る。本日の発表によると、失業率は4月の8.1%から8.2%に若干上がったとのことだ。近年、米国の製造工場や金融機関の海外へのアウトソーシングが相次でいるため、失業率が上がるのは当然のことだ。ロムニー氏が大統領だったら、このような流れを食い止めることができるの か?「大企業への減税は雇用につながる」という主張とこの現実の違いは一体何か。ビジネスが分かっているはずのロムニー氏はこの点の疑問を一切明確にして いない。雇用を生み出すのは、消費者の購買力が向上し、製品の需要が供給を上回ったときに企業が更に労働力を必要とするのである。このような基本を無視し た内容のない発言を頻繁にするロムニー氏に頼りない印象を抱くのは私だけではない。

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