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2010年1月21日、Citizens United v. Federal Election Commissionの裁判で、米国最高裁は、言論の自由、集会の自由、宗教の自由を保障した米国憲法修正第一条に基づき「政府は、法人及び組合による選挙献金の限度額を定めることは出来ない」と決定しました。この決定は、法人も言論の自由、ロビー活動の自由があるため、選挙献金に限度を定めることは憲法に違反するとの解釈によるものです。法人の富の影響力は、150年前に遡って見る必要があると思います。1886年、最高裁は、米国憲法修正第十四条により、解放された奴隷の権利を保護した1868年の修正法案に加えて、米国憲法のもとに「民間法人は自然人である」と決定しました。言論の自由も含めて、権利章典に基き、人々に与えられている同じ権利と保護を法人にも与えたのです。

ニューヨーク州立大学の考古学の教授、リチャード・ロビンズ氏の著書『Global Problems and the Culture of Capitalism』によると、1861年から始まった南北戦争を転換期として、アメリカの裁判所は徐徐に法人に課せられた様々な制限を解除し始めます。法人は、戦争から得た莫大な利益および、戦争で結果的に生じた政治的混乱と腐敗を利用して、主に鉄道建設に必要な土地と資金を得るため法律制定に介入するようになります。その後、次第に国の法律制定を牛耳るようになり、デルウェア州やニュージャージ州などのロビー活動は、特に法律で定められていないかぎり、あらゆる方法で、法人の経営者や幹事の責任義務を永続的に消滅させました。

例えば、1888年から1908年にかけて致命的な産業事故で、70万人の労働者が死亡した期間に裁判所は、労働者の職場での事故に対して、法人の責任義務を免除しました。更に、裁判所が法人を優遇した判決として、最低賃金制、労働時間の制限、最少年齢の制限などを禁止しました。今日、法人は自然人として法律制定に介入するためのロビー活動、メディアの利用、教育施設の建設、さらには慈善団体の設立も自由自在にできるほどの莫大な富と権力を獲得しています。暗殺死直前の大統領、エイブラハム・リンカーンは、富が少数派の手に集中し、腐敗した時代の到来を予期していました。

Citizens United v. Federal Election Commissionの裁判から2年以上が経過した今日、最高裁の決定に異議を唱える米国複数の非営利団体や個人は、法人の金力が政治家に及ぼす影響力や政治の腐敗を懸念し、「お金の自由は言論の自由と同一のものではない」と声をあげています。この憲法改正要求の趣旨は概ね(1)憲法により自然人に与えられた権利を法人から除外する(2)法人による全ての政治資金の提供を禁止する(3)議会と州が法人を規制する権利を確保する(4)選挙資金と出費の限界を設定するなどです。

1998年イリノイ州の上院議員時代に、同州での「ロビイストによる寄付金をほぼ禁止する」法案の通過を目指したオバマ大統領は、2010年の最高裁の判決にホワイトハウスから、「企業のロビイストが特定の候補者に無限の選挙資金を提供することで特別な利害関係が生じる」ことを懸念したコメントを行っています。共和党のジョン・マケイン氏は、2002年に政治寄付金を規制するマケイン・フェインゴールド選挙財政法案(McCain-Feingold campaign finance law)を制定し、2008年の大統領選の活動当時も、腐敗を防ぐため「常識的な寄付金の制限」を支持し、「大衆参加の政治」をアピールしました。

今年1月頃までには、コロラドのジェイムス・タウンの保管委員会は、米国憲法修正第一条による言論の自由は「無制限の選挙資金とは別のものである」とする憲法改正の決議案を満場一致で通過させています。ネバダ州のボウルダー市も、選挙資金規定を要求し「法人も自然人である」とする米国憲法の改正を促すための投票が可決しています。カリフォルニア州では、「ウォール・ストリートを占拠する」運動の中心地になっているロスアンゼルス、オークランドなどを含めた7都市の市町村議会で、「法人の選挙活動を有権者に保障されている言論の自由と混合してはならない」と主張して、憲法改正の運動が続いています。モンタナ州のミズーラ郡では、「法人は自然人ではなく、市民と同等の権利はない」ことを明確にした憲法改正案を議会に緊急要請するための住民投票が承認されました。ルイジアナ州のモンローおよびメイン州では、法人に自然人としてビジネスを慣行させないため、地域統治条例を通過させました。

憲法改正運動を推進している草の根運動は、最近少しずつ成果をあげています。今のところ、憲法改正を公式に表明しているのはわずか5州ですが、モンタナ州が規定する企業の選挙資金法案には23州の司法長官が支持しています。更に、全国各地200以上の都市が憲法改正の決議案を通過させ、1500以上の国や地方公共団体の職員、100名以上の連邦政府の議員がこの憲法改正を支持しています。最高裁の判決を覆す運動は全国レベルで静かに進行中です。

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