アメリカの最新課題 Contemporary American Issues © 2016 Yuko’s Blog. All Rights Reserved.  

11、12日は、テキサス州のヒューストンで全米黒人有色人種協会NAACP)の大会が開催された。昨日は、ミット・ロムニー氏が約20分のキャンペーン・スピーチを行い、本日12日は、オバマ大統領に代わって、副大統領ジョー・バイデン氏が同じく20分程度の演説を披露した。以下、両氏のスピーチの概要を比較分析してみたい。

ロムニー氏は、共和党候補がNAACP大会に参加することは稀であるため、冒頭から参加者の90%がオバマ氏を支持していることは承知していると伝えた。また、民主党がロムニー氏は金持ちを優遇するための政策を掲げていると批判しているが、それは「ナンセンスだ」反論。本人が大統領就任の可否に関係なく「金持ちはうまくやっている」と述べた。また、全国平均の失業率8.2%に比較し、黒人の失業率は、14.4%と高く、平均収入や中間所得でも、黒人がもっとも影響を受けているとし、大統領に就任したら中産階級を助け、貧困層を引き上げることが政策であると語った。また、教育の面でも黒人は遅れていて、全国の学校で黒人の学生はわずか17%であるが、その中の42%は、業績が最悪の学校で学んでいるとし、高度教育の平等の機会が少ないため、もっと向上するはずだと語った。また、ロムニー氏は、「強健な家庭の促進」を目指すとし、「伝統的な結婚」を支持する立場を明確にした。

更に、ロムニー氏は自由経済市場を信じていると述べ、これが向上の要であり、ビジネスの機会、仕事、給与、預金も増え、中産階級の拡大を可能にするとし、できる限り不必要な規制を緩和すると述べた。更に25年間のビジネス経験を生かし、雇用拡大を促し、経済を向上させると語った。そのための経済政策として(1)石炭、天然ガス、石油、再性可能資源などのエネルギー資源を有効活用し、キーストーン・パイプラインを認可し、海外に移転した百万の製造工場を米国に戻す。(2)自由で公正な米国製品の新たなマーケットを開き、「中国が慣行しているような不正を取り締まる」と述べた。また、(3)連邦政府の出費を削減するため、オバマケアのような不必要なプログラムを撤廃し、メディケアと社会保障は、ミーンズテストの方法で保持する。(4)多くの家庭や学校で欠けている訓練労働者の開発をめざす。最も強調したい点として、(5)高い税金、負担になる規制、高い医療費、壊滅的な労働政策を減少し、自由な経済回復を目指すとアピールした。

ロムニー氏のスピーチで違和感が漂った瞬間は、「オバマケアも含めて不必要なプログラムを撤廃する」と述べた時である。NAACPの参加者は、この瞬間、「ノー」と反応し、そのノーのエコーはしばらく続いた。彼等が総体的に「オバマケア」の撤廃を望んでいないことをロムニー氏は目前で知る機会になった。また中産階級を意識し、彼等の生活向上をアピールしたスピーチは、表面的であり矛盾があった。なぜなら、「オバマケア」の撤廃は、彼等がもっとも必要とするメディケイド拡大の機会を奪うことを意味している。また、メディケアや社会保障に関しても、個々の資力調査に応じたミーンズテストを基本にするとし、必ず保持するとは確約していない。ロムニー氏の選挙キャンーペーンのHPには、抽象的な表現で、社会保障をいずれ民営化していく方針が示唆されている。従って、有権者は彼の選挙スピーチの政策ひとつひとつを慎重に分析する必要がある。

一方、本日、最初から熱狂的な拍手で迎えられた、バイデン氏のスピーチは、トーンの抑揚が鮮明で、前日のロムニー氏のスピーチを意識し、オバマ氏との政策の違いを強調した。その中でも「オバマ大統領は、この国の将来のことを優先し、その信念に立っている」と力説した。その際、「共和党の今後2年間の最優先目標は、オバマ大統領を再選させないことにある」と上院少数党院内総務のミッチ・マコーネル氏が、昨年11月公言した事を回想させた。バイデン氏は、オバマ氏が大統領であるかぎり、その目標が共和党の最重要課題になっていていることを鋭く批判した。しかし、如何なる妨害があっても、大統領は、長年成就不可能だった医療保険改正法を達成し、オサマ・ビンラデンの殺害を大胆に命令し、成功したことで、米国民のテロの不安を解消したと力説した。また、ロムニー氏の「中産階級を支持する」との発言に対し、5000億ドルの金持ちの減税をする一方で、莫大な教育費の削減を意図していることを指摘した。更に、最近多くの州で共和党が制定した有権者ID法は、投票権の阻害であると批判した。主な政策の要点については、 (1)今後10年間で、連邦政府の負債を1000億ドル削減し、(2) 3000万人、および現在でも医療保険のない800万の黒人に医療保険を提供すると語り、撤廃を主張するロムニー氏との違いを明白にした。次ぎに (3) 教育政策は、オバマ氏の最優先課題であるとし、学費減少を含め、教師と学生の多彩なプログラムを準備していることを強調し、莫大な教育費削減を掲げているロムニー氏との違いを対比させた。(4)女性の権利についても、同等の仕事に対して同等の支払を目指す方針を述べた。エネルギー政策については、(5)クリーン・エネルギーを強化する方向で雇用の拡大を促す方針を語った。

バイデン氏のマコーネル氏に対する批判は、昨年11月メディアが注目したマコーネル氏の大胆な発言に基くものであり、当時、「それ以外に拒否権を発動する人間を葬る方法はない」という意味の補足発言をしたからである。バイデン氏は、議会で相当な破壊的態度があることを吐露し、「バラク・オバマは絶対にあきらめない」と語った。また、「目を閉じて、ロムニー政権のアメリカ合衆国司法省がどのようなものになるかを想像して下さい」と語った瞬間「ノー」という反応があった。これは、そのような状況を否定する反応である。バイデン氏は、ロムニー氏が既に司法長官として指名しているロバート・ボークの名前を挙げたが、彼がどのような人物かを詳細に語ることはなく、ロムニー氏が大統領になった場合、米国は1950年、60年代の公民権運動時代に逆戻りすることが想像できると話した。現在、多くの州で、共和党議員により施行され、別名有権者抑圧法(Voter Suppression Bill)と呼ばれる有権者ID法を批判した理由は、この法の隠れた目的が、民主党候補に投票する可能性が高い少数民族、黒人、学生、老齢者層の投票を阻止するための法であると言われているからである。

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。