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先週20日の深夜、コロラド州デンバー近郊外オーロラの映画館でバットマン上映中、突然起きた射殺事件は、米国民を恐怖と悲しみに落としいれた。この事件で12名が死亡し58名が負傷した。土曜日逮捕された24歳の容疑者ジエイムス・ホルムズはその後すぐ拘束され、本日23日、最初の裁判所出廷にオレンジ系色に髪を染め、服役姿で現れた。おそらく、死刑宣告が下されだろうとの見方が一般的である。22日の『ニューヨーク・タイムス』紙は、容疑者は、ピストル用の弾薬3000個、アサルト・ライフル用の弾薬3000個、および12口径散弾銃用の薬筒350個をオンラインで購入していたことを報じた。ホルムズは事件の1ヶ月前に、銃弾ベストなども含めてこれらの武器を購入していたことで、周到に計画した無差別殺人であるとの見方が強い。

このショッキングな事件を受けて、しばらく眠っていた銃規制の論議が再び台頭している。米国憲法改正法第二条で、全市民に武器所有の権利を与えている米国は、カナダ、ヨーロッパ、ラテン・アメリカに比較すると圧倒的に銃乱射事件の頻度が高く、ほとんどキャンパスで発生している。2010年には11件、2011年は8件発生し、いずれも死亡者は数名である。今年に入ってからすでに今回の事件を含めて4件発生し、4月にはカリフォルニア州オークランドのオイコス大学で起きた銃乱射で7人が死亡した。2005年以降、最も被害者が多かった事件は、2007年4月にバージニア工科大学で起きた銃乱射事件で30人以上が死亡している。

今回の事件は、選挙キャンペーンでの銃規制に関するオバマ大統領とロムニー氏の立場も明確にする機会となった。注目すべき点は、米国政府の銃規制がいかに甘いかという事である。近距離で限られた回数の指操作により、連発射撃できる銃として知られるアサルト銃は一時的に禁止されていた時期があった。昨年1月8日、アリゾナのツーサンで頭を撃たれたが奇跡的に一命を取りとめ、今年1月に退陣を発表した女性下院議員ゲイブリオ・ギフォード氏が暗殺の犠牲者となった銃撃事件後、この銃規制が再度復活した。しかし、誰でも簡単にインターネットでおびただしい量の弾薬が購入できる状況にメディアも驚愕している様子を伝えている。22日、『ニューヨーク・タイムス』紙はインターネットでの武器売買を規制する法が1999年に議会で提出されたが、制定にいたらなかったと述べている。銃規制が甘い背景には、全米ライフル協会(NRA)の政治的圧力が強すぎるため、また、憲法第二条に照らし、武器を購入できる権利を主張する銃規制反対派の声が根強いからである。

フィラデルフィァ市警の最高責任者チャールス・ラムセイは、ABCニュースで、「一般人がインターネットで弾薬や武器を簡単に購入できることには問題がある」と述べ、「どうして一般人がアサルト銃を必要とするのか理解できない」とコメントし、「道理にかなった銃規制が必要である」と述べた。しかし、民主党一部の議員や共和党議員も「更に厳しいアサルト銃の規制が殺人行為を抑制するかどうか半信半疑である」ようだ。銃入手が困難になっても「無差別殺人を計画する犯罪者は爆弾など、他の武器を使う」と主張している。

20日の『ワシントン・ポスト』紙によると、この事件を受けて早速、「銃の暴力にどのように対処するつもりか、国民に表明する時がきている」とオバマ大統領とロムニー両氏に問い正したのは、ニューヨーク市長のマイケル・ブルンバーグ氏である。ホワイトハウスのスポークスマン、ジェイ・カーニー氏は「銃乱射を受けての新たな政策はない」と答え、「大統領は、米国人の権利である憲法改正法第二条を保護するため常識的な対処をする必要があるが、現行法で定められている範囲以外の銃を保持すべきではないと思っている」とし、「それに関し、銃購入者のバックグランド・チェツクは量と質の側面からこれまで向上があった」と伝えていたことが分かった。オバマ氏は、2008年9月「銃を国民から奪うことはしない」と話している。購入者のバックグランド・チェックの抜け穴を封じる事と民間人のアサルト銃購入禁止を再検討する姿勢はあるものの、大統領がアサルト銃購入を禁じ、銃の展示会などで購入者の身元チェツクに関する抜け穴を強固にする法を制定するかどうかは不明なようである。

一方、マサチューセッツ州の知事時代は穏健派だったロムニー氏は、当時「銃規制にオバマ氏より積極的だった」と言われている。2002年に知事に立候補した当時、「マサチューセッツ州は厳しい銃規制がある、NRAのヒーローにはならない」と述べ、バックグランド・チェックとアサルト銃禁止を支持していた。2004年には、同州でのアサルト銃禁止法案に署名し、銃登録料も3倍に上げたこともあるようだ。しかし、2006年にはNRAに加入し、2007年には「私はNRAのメンバーであり、武器を保持する権利があることを固く信じる」と述べている。現在のロムニー氏は「どのような銃規制法も支持しない」との立場を明らかにしていて、同じく「新たな法律の制定はない」と述べている。根本的には「新たな法を制定するのではなく、現行法を維持する大統領が必要だ」と強調していて、オバマ氏が再選された場合「銃保持の権利を制限する」のではないかと懸念しているようである。

連邦政府のアサルト銃禁止法は、1994年にクリントン大統領が署名した法で、一定のセミ自動銃を市民向けに製造することを禁じる法である。法制定後に製造された武器に適用されるだけの法であり、10年後の2004年には有効期限切れになっている。現行法では、軍隊が使用する自動連発銃の個人購入と使用を禁じているが、今回の事件で、容疑者が購入した弾薬に使用する類の銃やライフルは規制されていないようである。この事件を受けて点火した銃規制の世論が早々に政策を変えることはなさそうである。特に、選挙前は、オバマ氏とロムニー氏はいずれも、NRAの反発を避けるため慎重な構えを見せている。別の理由として、銃規制に対する銃製造ビジネス側の反発を避けるためでもある。憲法第二条に基く自己防衛のための武器保持の権利は、その権利の乱用が暴力につながる危険性を未然に防ぐための対策も包含する必要性があると考える。

                                         

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