アメリカの最新課題 Contemporary American Issues © 2017 Yuko’s Blog. All Rights Reserved.  

ロムニー氏がライアン氏を副大統領候補に選んだ数日後から、女性問題の論議が活発化している。最近の大統領選挙キャンペーンは、経済の次に女性の健康問題、特に避妊、中絶に厳格なロムニー・ランアン両氏の政策が焦点になっている。

一般の女性が利用している医療援助源にはメディケイドと、タイトルXと呼ぶ連邦政府が提供する包括的な医療プログラムがある。米国で最大大手の病院カイザーファミリー財団とアラン・グットマッカー研究所の報告によると、州と連邦政府資金共同プログラムであるメディケイドは2005年にはすでに5000万人以上の低所得者が利用している最大規模の医療システムである。当時、15歳から44歳までの全女性の約12%又は600万人、および、貧困線以下の女性の37%又は900万人以上がメデイケイドを利用していて、現在でもその規模は増大する一方である。

タイトルXは1970年にニクソン政権下で制定された公衆衛生法に基く家族の医療プログラムであり、個人および家族の医療予防サービスの提供に利用されている。メディケアの条件に適合しない個人、低所得、または、医療保険の未加入者など、医療サービスへのアクセスが困難な個人に安い料金または無料で提供されている。タイトルXプログラムの2010年の連邦政府の歳出予算は約3億ドルであると言われている。メディケイドとタイトルXはいずれも、低所得、妊産婦、女性にとって重要なプログラムになっている。

米国で有名なクリニックのひとつに、プランズ・ペーレントフッド(PP)と呼ぶ機関がある。妊産婦および子供の健康サービスを提供する非営利団体で、中絶、包括的な性教育、低価格の医療サービスへのアクセスを可能にした投資法人の関連施設であり、資金は独立した関連会社や会員の寄付で運用している組織である。このPPは、癌検査、HIVスクーリニング、避妊、中絶などのサービスを提供している。PPの組織は1920年代に最初の避妊クリニックとして設立され、現在全国800以上の地域にクリニックがあり世界各地からの支援を集めている。中絶に反対する宗教団体、または狂気じみたキリスト教信者の弾圧や中傷をうけることで有名な組織でもある。1990年代は、中絶を行うクリニックに対する放火、医者を殺害するなどの問題が発生している。

8月17日の『マザー・ジョンズ』誌によると、ロムニー・ライアン両氏は、女性にとって重要なこれらふたつのプログラムの撤廃を掲げている。タイトルXプログラムで設立されたクリニックは、患者の収入や医療保険加入の状況に関係なく、2010年だけでも600万人のSTD検査を実施している。また、PPはタイトルXプログラムを利用する患者の約30%に医療サービスを提供している。このようなプログラムと施設を利用し妊娠をさけることで、納税者の税金を節約している。しかし昨年、ライアン氏は避妊や中絶を援助するPPを批判し、タイトルXの改正法案を支持している。更にロムニー氏も予算削減のため「タイトルXのプログラムを全面的に廃棄する」と述べている。

また、メディケイドは、タイトルXより更に規模が大きい家族医療プログラムであるが、ロムニー・ライアン両氏が大統領選に勝利した場合、打撃を受けることが懸念されている。『マザー・ジョンズ』誌によるとライアン氏の予算案には、家族医療プログラムに対する8100億ドルの削減が見込まれている。また、ロムニー・ライアン両氏は、中絶に反対の立場を取り、ライアン氏は、特に母体の生命に危険が伴う以外の中絶を法的に認めていない。両氏は、PPのようなクリニックを排除し、女性の医療補助金を大胆に削減する意志があるようだ。昨年、極右翼派で知られるテキサス州知事リック・ペリー氏が2分の3の政府の医療援助プログラムの予算を削減したため閉鎖したクリニックがあり、数千人の女性が癌検査、STD検査、避妊などの医療機会を失っている。また、ペリー氏は、今年、避妊クリニックのPPなどをメディケイドやタイトルXの公的資金の対象から除外する法に署名したため、PPに告訴されている。

21日『アメリカン・プログレス・アクション・ファンド・センター』は、ペリー氏と同様、女性問題に関して過激な政策を掲げているロムニー・ライアン組を支持する余裕は女性にはないと述べている。また、両氏は、女性の専門分野である教師などの大幅な人員削減、「250万人の低賃金労働者の最低賃金を上げない」政策を掲げている。更に、女性の生活や社会的地位の向上を目指す給与公正法や、労働者に年間7日間の有給制病欠を許可する健康家庭法も支持していないと述べている。ロムニー・ライアン両氏は、オバマ政権の医療保険改正法の撤廃を公約しているが、同センターは、撤廃された場合、約900万人の妊産婦に保証されている出産補助金も否定することになると述べている。

結論として、ロムニー・ライアン両氏の予算案は、富豪層に減税するため、女性を含む労働者に増税し、重要な安全ネット、一般の米国人が重要視している医療システム、特に女性の健康プログラムを大胆に削減することであると言われている。その明確な要点は、オバマ大統領の医療保険改正法〔別名アフォーダブル・ケア・アクト〕の撤廃である。また、1965年から存続している公的医療保険制度であるメディケア、メディケイドの大幅な改革と予算の削減を掲げているため、医療保険改正法が撤廃された場合、オバマ政権がこの法で提案したメディケイドの拡大は不可能になる。更に、この医療保険改正法下で、無料で提供されている避妊薬も廃止される可能性があるため、女性活動家は、ロムニー・ライアン両氏の撤廃政策に猛反発している。膨大に増え続けるメディケイド制度は何らかの改革が必要であると思うが、ロムニー氏が当選した場合、メディケア、メディケイドの公的医療保険制度も大幅に削減または無残に解体される可能性がある。従って、ロムニー・ライアン選挙キャンペーンの参加者の中には、これらの公的医療保険制度を維持するつもりかどうか直接質問する女性も複数見受けられる。2012年の大統領選は女性にとって歴史的に重要な選挙である。

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。