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2010年1月21日、シティズン・ユナイテッド対連邦選挙委員会の裁判で、米国最高裁は、米国憲法改正法第一条に基づき「政府は、法人及び組合による政治献金の限度額を定めることは出来ない」と決定した。この判決から2ヶ月後にスーパー・パックス(Super PACs)が設定された。これは、従来の政治活動委員会(PAC)と異なる新たな選挙資金組織であり、個人、組合、企業の選挙資金に関する規定を定めている。Super PACsに寄付する大物はウオール・ストリート(WS)の金融機関であると言われている。

WSの金融機関は無党派に属し、両党の候補者に寄付する習慣がある。しかし、今年の11月の大統領選挙では、WS金融機関の選挙献金パターンに劇的な変化が見られる。2008年の大統領選挙では、主な大手銀行はいずれも、共和党の大統領候補者であったジョン・マケイン氏より、オバマ大統領に2倍から4倍多い選挙資金を寄付している。しかし、4年後の今年、WSの金融機関はほとんど共和党の大統領候補ミット・ロムニー氏に献金している。

 トップ大手銀行

2008年の大統領選挙

2012年の大統領選挙

オバマ大統領 ジョン・マケイン〔共〕 オバマ大統領 ミット・              ロムニー
ゴールドマン・サックス  約100万ドル  約24万ドル  約14600  約64万ドル
JPモーガン チェイス&カンパニー  約81万ドル  約34万ドル  約14900  約50万ドル
シテイ・グループ  約74万ドル  約34万ドル  約35万ドル
バンク・オブ・アメリカ  約47万ドル
モーガン・スタンレイ  約51万ドル  約27万ドル  約48万ドル
ウェルズ・ファーゴ  約15万  約28万

参考資料:『 Open Secrets. Org.』  『Bloomberg』紙

上記表の金額は、連邦選挙委員会(FEC)の7月21日の更新記録に基くもので、献金者は組織そのものではなく、企業組織のPAC、組織の個人、または従業員、最高経営責任者、およびこのような個人の直系家族が寄付した献金額である。個人の寄付金は、限度額が定められている為、個人が一丸となって献金したものである。2008年の大統領選挙で、ゴールドマン・サックスはオバマ氏に約100万ドル、共和党の大統領候補ジョン・マケイン氏に約24万ドル、JPモーガン チェイス&カンパニーは前者に約81万ドル、後者に約34万ドル、シテイ・グループは前者に約74万ドル、後者に約34万ドル、モーガン・スタンレイは前者に約51万ドル、後者に約27万ドルをそれぞれ寄付している。4年前、これら大手の銀行はいずれもオバマ氏に多額の献金をしたが、今回、掌を変えたように態度が変わっている。

『オープン・シークレット組織』によると、FECは、2012年の選挙献金をオバマ氏に提供した主な金融機関はウェルファーゴだけであるとし、ロムニー氏には約2倍近く寄付している。ゴールドマン・サックスと5月に多額の損失を報じたJPモーガン・チェイスはオバマ氏に小額の献金をしただけで、主な大手の銀行はすべてロムニー氏に圧倒的な寄付をしている。更に、クレディ・スイス銀行、バークレイズに加えて、投資会社のHIG ・キャピタル、ブラックストーン・グループ、ベイン・キャピタル、エリオット・マネジメントもロムニー氏だけに献金している。

就任後、オバマ氏が金融機関の支持を失った理由のひとつは、オバマ氏が「WSの『太った猫』を援助するため大統領選になったのではない」と発言したことである。更に、WSの最高経営責任者(CEO)は、ロムニー氏の秘密の個人資産を攻撃したオバマ氏の選挙チームの宣伝に不快感を抱いている。6月26日の『ブルンバーグ』紙によると、彼らは前回オバマの強力な支持者だったが、今年はロムニー氏に乗り換えると報じている。2008年の大統領選では、オバマ氏を支持していた投資会社スカイブリッジ・キャピタルのCEOは「高騰する赤字、高い失業率、WSのオキュパイ運動のような反金持ちの風潮があるため、WS寄りのロムニー氏が大統領に就任するほうが気が楽だ」と語っていたことを報じている。

しかし、現実的な理由は政治的なものであり、金融規制が主な要因であると思う。2007年のサブプライム住宅ローン危機を発端として、2008年、世界最大の金融機関リーマン・ブラダーズとAIGは倒産に追い込まれ株は暴落した。この世界的な金融危機を受け、前大統領ジョージ・W. ブッシュ政権は、金融機関が破産すると世界経済に及ぼす影響は計り知れないという理由で、住宅ローン危機救済プログラムである(TARP)法案に2008年10月署名した。TARPは、連邦政府の財務省が抵当流れの個人または商業用の住宅を買い取り、融資することで、金融機関救済と金融市場の安定化を図る法である。しかし、AIGは政府からの融資を社員のボーナスに使ったスキャンダルもあり、ボーナス支給にあてることを禁止する法案も上院で署名されたが、この金融救済法は一般的に納税者には評判が悪く論争的な法である。

2008年、共和党の大統領候補であったジョン・マケイン氏は磐石な金融規制を公約したことで注目された。2008年9月17日の『ワシントン・ポスト』は、マケイン氏は1990年代には金融機関の規制緩和に積極的だったが、2008年の大統領選キャンペーンでは、金融規制を公約したと報じた。サブプライム住宅ローン危機で、有権者が不動産価値の暴落の責任を金融機関に向けていた矢先、国民の利益を守ることが政府の責任であるとして、金融規制政策を前面にアピールした。「公正性と実直性」を強化するためWSの金融機関の改革法案を制定することが政策のひとつであった。このため、マケイン氏は、金融機関の支持を失い、WSはマケイン氏よりオバマ氏に多額の選挙献金を与えた。

2008年3月21日の『ロスアンゼルス・タイムス』は、金融機関からオバマ、ヒラリ・クリントン両氏が莫大な選挙資金を受けたことで、金融規制に歯止めがかかるのではないかと民主党議員が心配していたことを報じた。しかし、主な大手銀行から優遇されたオバマ氏は、住宅ローン崩壊後、最悪の経済情勢の時に就任したため、必要に迫られて、2009年5月にクレジットカード法に署名した。この法は、連邦政府の法で公正および透明性を銀行に求め、クレジットカード保持者を保護するため、独断的な利息、不条理な罰金、過剰な手数料の防止、その他の規約を含む包括的規制法である。更に、住宅危機に伴う2008年の経済崩壊後、金融危機を防ぎ、透明性を強化し、消費者を保護する目的で、2010年7月にドッド・フランク・ウオール・ストリート改革と消費者保護法〔DFWSRCPA〕と呼ぶ、金融機関を規制する本格的な連邦政府法に署名した。ドッド・フランク法の主な目的は、多数の規制を課すことで倒産する金融に対して連邦政府の関与を減少させるため、また、危険性の高い住宅ローンの慣行と証券法違反に対抗することである。

実質を伴わない名目上だけの法は徹底されていないことは明らかであるが、ミット・ロムニー氏は、11月の大統領選に勝利した場合、 ブッシュ氏が署名したサーベンス・オクスリー法と呼ぶ金融規制法とオバマ氏が署名したドッド・フランク法のいずれも撤廃すると公約している。サーベンス・オクスリー法は、ワールドコムやエンロンの会計不正スキャンダルに対処するため制定され、会計業務の報告プロセスを規制し、投資家を保護することを目的とした上場企業会計改革および投資家保護法である。この二つの金融規制を撤廃し、合理的な規制法に改正すると宣言している。金融業界は、この二つの複雑な規制は行きすぎで、無駄な経費と書類業務が増えると不満を漏らしている。ロムニー氏はそのような銀行側に同情し、経済後退の原因になるような規制はすべて反対する方針を打ち出している。現在、金融機関がほぼ全面的にロムニー氏を支持している理由は簡単明明瞭である。

11月の大統領選は、無限の政治資金を合憲とした最高裁の決定後、初めての選挙であり、資金情報が未公開のSuper PACsや、透明性のない社会福祉団体に寄付される選挙資金も合わせるとと、今回は記録的な大金が流入するようだ。1%の富豪層に属するロムニー氏の選挙資金のトップクラスの貢献者は金融機関であり、一方、科学技術や教育を推進するオバマ氏の場合、マイクロソフトなどの技術関連、および大学機関が強力な支持者である。献金のパターンを見れば、支持基盤と候補者の政策には相関関係があることが理解できる。金融機関は無党派傾向が強く、通常両党に選挙資金を献金するが、規制緩和を提唱する候補者を優遇する風潮は顕著であり、WSが大統領選挙に及ぼす影響は多大である。

その反動が昨年9月17日から始まった、WSを占拠する運動である。特に、抵当流れや追い立てに対抗する「自宅を占拠する」草根の運動は現在も続いている。銀行の略奪的ローンや不正書類の作成が原因で抵当流れが相次いだ銀行の責任を追求するため、今年2月、オバマ氏は主要銀行と協議を行い、弁償金による和解策を見出した。昨年の10月から、組合の労働者と連携して活動を展開しているWSオキュパイ運動の活動家は99%を自称している。8月3日の『ニューヨーク・タイムス』紙は、「1%は銀行、住宅ローン会社、保険会社」などの金融機関であると述べている。OWS運動の政治的目的は著しく明白であり、経済格差の不満をオバマ政権に向ける活動家も存在するため、民主党は慎重な態度で支持し、共和党の中心人物の複数は、OWS運動を「はびこる暴徒」と呼び、批判的であると伝えた。オバマ氏は「米国人のフラストレーションを反映している」と語り、99%を代表する活動家に同情的であるが、一方、金融規制の撤廃を強調するロムニー氏は、この1%に支持されている代表者である。

オリジナル版 9月10日人民新聞通巻1457号掲載

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