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3日東部標準時午後9時から90分間行われた最初の大統領選のディベートは、PBSのジャーナリストで頻繫に大統領選のディベート・モデレーターを努めるジム・レーラー氏が提起した質問および、その質問の応答に対して、交合に相手の意見を聞く問答形式によるものであった。ロムニー氏は、練習を重ねていたと言われるだけあって、最初から顔の表情も良く、落ち着きがあり、穏やかさの中に攻撃的な論争を交える技術は、その練習の成果があって、これまでの印象を覆す効果があった。一方、オバマ氏は、迫力に欠け、失言を避ける慎重さがみられ、多少緊張ぎみであった。更に、対抗者が話す時、顔をあげ相手を見るように努め、頻繫に作り笑いさえ浮かべたロムニー氏に比べ、オバマ氏は、ほとんど始終うつむいていた。この対照的な差は、最初からロムニー氏に軍配が上がることを予期させた。

質問は経済問題に集中し、税金問題、医療保険改正法、政府の役割についてであった。1回の応答時間を2分間に限定したレーラー氏の質問の主旨は、両氏の政策の違いを明白にすることである。具体的な質問の内容は、(1)新たな雇用を創出する方法について二人の政策の違いは何か、(2)財政赤字問題に取り組む二人の違いは何か、(3)社会保障政策の違い、(4)現在の経済状況における連邦政府の規制に関する考え方の違い、(5)医療保険改正法の違いについて、(6)連邦政府の役目に関する違い、(7)連邦政府は公立教育の質を向上させる責任があるか、などであった。

レーラー氏の最初の質問である雇用問題に、応答を求められたオバマー氏は、当日は20年目の結婚記念日で、自分が最も幸運な男性であると述べ会場に笑いを誘った。その後、4年前の財政危機で数百万の雇用が失われたことを述べ、過去30ヶ月間で民間部門で500万の仕事が創出されたことを語り、裕福層への減税、規制緩和を基本にした政策で雇用創出を目指すロムニー氏の政策とは異なると述べた。オバマ氏の政策の違いは、教育、訓練、新たなネネルギー資源の開発、国内に投資する小さなビジネスへの減税、赤字の減少などである事を強調した。また、現在のような結果になっているトップ・ダウン式の経済がどのように中流家庭を豊かにするのかを論議したいと述べた。

これに対し、ロムニー氏は、「結婚記念日に、私と一緒とは最もロマンチックな日だ」と冗談を述べ、記念日「おめでとう」と挨拶した。その後、妻のアンが2日デンバーで出会った女性の話を展開した。彼女の夫は4種の仕事を持っていたが最近ほとんどの仕事を失い家も失った。そんな女性から、「助けてくれるか」と聞かれたと言う。答えは「イエスだ」と前置きし、オバマ氏が述べているようなトリクル・ダウン〔上級層の富が下級も潤すとする理論〕式の経済政策、金持ちへの減税は自分の方針ではないと述べた。更に(1)数百万の仕事を創出する国内エネルギーをフル活用する(2)ラテン・アメリカとの貿易を拡大し、中国が不正をした場合制裁を加える、(3)世界で最も優れた教育の機会を伸ばす為、訓練の機会を作る、(4)予算を調整する、(5)小さなビジネスを応援するなど、以前も数回公表した5つのステップを語り、オバマ氏のように、出費、課税、規制の大きな政府では効果がないと述べ、「自分は再度アメリカ人が仕事に戻れるようにする」と断言した。

この後、レーラー氏はロムニー氏が述べたトリクル・ダウン式の経済について、オバマ氏に反論を求めたが、オバマ氏は、これまでの選挙キャンペーンで話してきた「トリクル・ダウン式の経済は効果がないことは論証済みである」などの反論を即座にせず、教育向上の論証を切り出し、二人とも企業の税金は高いことには同意しているので、製造部門の減税を25%までに引き下げたいとし、国内でのエネルギー政策も活性化させる方針はロムニー氏と同じであると述べた。また、ロムニー氏の主な経済政策は5兆ドルの減税であり、要求されていない2兆ドルの軍事出費を追加すると、更に7兆ドルの赤字になることを指摘した。

これに対し、ロムにー氏は「自分には5兆ドルの減税の計画はない」と否定した。「自分の減税は赤字を増大させるものではない」と反論し、利息を下げ、減税すると歳入が留まるため、控除、免除、クレジットを減少させると述べたがその点についての具体案は提示しなかった。また、オバマ氏が就任した時は、フード・スタンプの利用者は3200万人だったが、現在4700万人であるとし、今年の経済は昨年より鈍いと語った。

オバマ氏は、雇用拡大に関する最初の課題で最後にようやく、予算問題は計算、常識的な問題であり、これまでのトリクル・ダウン式の経済は雇用拡大につながっていないことは歴史が示していると述べた。オバマ氏の税制計画は、基本的にはバフェット・ルールが主体になっていて、これまで著者が投稿した内容に変更はないことが確認された。

2つ目の質問の財政赤字問題に関して、先に応答を求められたロムニー氏は、この問題は、単なる経済的問題ではなく倫理的問題で次世代にも影響を与える重大な問題だと述べた。赤字減少の方法は、増税、出費の削減、経済成長の3つであるとし、曖昧な表現で、オバマ氏の増税は問題があると批判。トップ2%の富豪層に増税するオバマ氏の税政策を指摘したのかもしれないが、オバマ氏は98%の一般家庭、および97%の小事業主の減税を強調していることを1つ目の討論の最後に述べている。

ロムニー氏の赤字削減は、本人が莫大なコストと考えるオバマケアを撤廃することであり、中国からの負債を増やすほど価値はないとし、この法の撤廃が最優先課題であると宣告した。現在良好なプログラムは、州レベルでもっと有効に活用できるはずだと補足した。また、ロムニー氏は、赤字を減少する方法として、政府の労働者を「自然減の方法」で減少させると述べた。また、大統領は、赤字を50%減少させると言っているが、過去4年間で1兆ドルの赤字を増やし結局2倍に増大させたと批判。

これに対しオバマ氏は、就任したときはすでに連邦政府は1兆ドル以上の赤字を抱えていて、その赤字は2つの戦争から出たものである。更に。戦争の費用はクレジット・カードで支払われたものであり、2つの減税が様々なプログラムの支払を不可能にし、現在の莫大な経済危機を招いたと反論。また、経済大恐慌を避けるため、緊急対策を講じ、77の政府のプログラム、18の教育プログラムなど、大胆な削減をおこなった為、500億ドルの無駄金を減少させ、アイゼンハワー以来、最大の国内裁量予算を削減した。現在4兆ドルの赤字減少の予算計画があると反論し、歳入と出費の調整方法がロムニー氏とは異なると主張した。

また、オバマ氏は、ロムニー氏は否定しているが、1ドルの歳入に対して10ドルの出費がロムニー氏の予算案であるとした場合、このようなアンバランスな予算案では、教育などへの投資を削減することになる。また、ロムニー氏はメディケイドを州に戻すことを提案しているが、これは年配者や糖尿病の子供を援助するプログラムの30%を削減することになると述べた。

この反論として、ロムニー氏は、4年が経過してもオバマ氏は未だに赤字は1兆ドルであると述べ、赤字4兆ドル削減のオバマ氏の案に同意したが、経済の成長が遅く、不況な時に増税すべきではないので、「誰にも一切増税しない」と語った。更に、増税は雇用機会を枯らす。だから「貴方の税計画は70万の仕事を枯渇させる」と自主事業連盟に言われるのだと語り、「私は雇用を枯らすことはしたくない」と述べた。また、増税による予算調整を否定した。

これに対し、オバマ氏は、石油業界は年に40億ドルの企業福祉を得ているが、ロムニー氏が言及している小さなビジネス業者は、このような控除は得ていないと指摘し、誰かが1回給油する度に利益をあげているエクソン・モービルに余分なお金が必要だと誰が考えるかと反論。更に、なぜ、大企業の税制優遇措置を排除しないのかと問い、企業税のことに関し、ロムニー氏は歳入に「依存しない方法」で赤字を削減する具体的な方法を明確にしないと指摘した。また、海外に工場を移転する会社にも減税しているが、その予算で若い世代が大学に通う余裕が出てくると反論し、大半のアメリカ人は現在の大企業減税は意味をなさないと思っていると述べた。また、オバマ氏は、ロムニー氏が支持する莫大な減税は、一切の歳入を期待できない減税となり、結果的に、全ての物を破棄することになり、国民を困難に追いやり、肝心な経済成長は望めないと語った。

オバマ氏が指摘したこのような点に反論を試みたロムニー氏は、石油会社の減税は年間28億ドルあるとエネルギー省が言っていると述べ、この28億ドルの大半は小規模ビジネスの石油掘削事業者に行き渡ると反論。また、25年間ビジネスを経験しているが、海外に移転する企業が税控除を受ける話については、「あなたが何のことを話しているのかさっぱり分からない」と述べた。

結論として、初日のディーベートは、予期しない展開となった。一切攻撃しないことが戦略で冷静すぎたオバマ氏は強力なパンチに欠け、反論すべき点、強調すべき点を即座に抑えないもどかしさを感じさせた。一方、モデレーターであるレーラー氏さえコントロールするほど攻撃的だったロムニー氏は、迫力があり、オバマ・キャンペーンがロムニー氏の政策を宣伝した内容とは若干異なる印象があった為、討論のためのパフォーマンスなのかどうかを疑問視しない視聴者にはインパクトがあったと思われる。ディベート後のCNNの世論調査の結果、ロムニー氏の方に肯定的な印象を持った率は67%で、オバマ氏はわずか25%であった。しかし、両氏の討論、特に数値やデーターを用いた反論に対する信憑性は、その後、多くのメディアがファクト・チェックで指摘している。〔続く〕

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