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4月17日にテキサス州のマクレナン群にあるウエスト町の肥料工場で火災が発生し、その後の爆発で少なくとも14名が死亡、約200人が負傷した事件からそろそろ1ヶ月が経過しようとしている。しかし、その最初の火事の原因や事故の詳細はまだ未確認のままであるが、法務執行当局は犯罪やテロの可能性にも目を向けているようである。しかし、テキサス州の自由市場経済主義に基づく徹底した反安全規制にはリスクが伴うことを教えている。

火災後の爆発の原因は、硝酸アンモニウムが熱により化学物質的ショックで発生したと伝えられている。硝酸アンモニウムがどのように保存されていたのか、汚染程度はどの程度あったのかなどの疑問も提起されている。また、テキサス州の消防署長は、工場の爆発は保存されていた硝酸アンモニウムが壊滅的な爆発の原因であると公表した。しかも、 工場( 上記地図最上部の赤大矢印 )付近には退職者の住宅地( 中央部の赤小矢印)、ビジネス、および小学校と中学校( 最下部の赤小矢印 )があり、爆発による被害は推定1億ドルであると伝えられている。14名の死亡者のうち11名は消防署員で、他3名は工場関係者であり、工場での火事の知らせを受けて最初に現場に駆けつけた人たちであると伝えられている。 4月21日の『ロイター通信』によると、小さな町の一部を破壊し、火災後、爆発を誘発した硝酸アンモニウムは、米国国土安全保障省(DHS)による安全基準をはるかに超過する1,350倍の量がその肥料工場に昨年格納されていたという。180Kg以上の肥料を保存する場合はDHSに報告することが義務づけられていた。しかし、1985年から安全基準監督が全く実施されていなかったと複数の情報筋は伝えている。

調査当局は現在、火事で二次的に発生した爆発の原因についても調査中であるようだ。 11日のニューヨーク.タイムスによると、31歳の救急救命士、ブライス.リードはパイプ爆弾の構成物質を所持していた容疑で 10日に逮捕された。その数時間後、テキサス警察当局は、犯罪捜査を公開したと伝えた。しかし 11日、容疑者の弁護士はリードの爆発の関与を否定した。現在のところ、法務執行当局は、リードを爆発の容疑者として確認してはおらず、また逮捕と4月17日の爆発との関連性も明確にしていない。10日の『ワシントン.ポスト』によると、その構成物質には、亜鉛パイプ爆弾の材料であるメッキ金属パイプ、ヒューズ、軽量の化学粉末が含まれていたという。アルコール.タバコ.火器及び爆発物取締局は、犯罪やテロの可能性に捜査の視点を拡大している。

この事件は、工場の安全性の管理は一体どうなっていたのか、「避けられる事故ではなかったのか」との疑問が提起されていて、安全基準制定の意味について改めて考える問題を提起している。政府はビジネスに関与するべきではない、規制は必要ないと、多くの共和党議員らは主張しているが、規制が必要な分野や、危険な化学品を取り扱う工場、国民の健康や生命に多大な影響を与える分野の安全基準は絶対に必要であることを今回の事件は教えている。

2001年9月11日の同時多発テロ後、DHSを含む連邦政府は、原子炉や化学薬品工場がテロリストのターゲットになりやすいため、定期的な安全性の報告を義務づけていたが、テキサス州は、この義務を怠っていたという。5月9日のニューヨーク.タイムス(NYT)によると、テキサス州の知事リック.ペリーは、低税と最小限の規制をモットーにしていて、政府がビジネスに関与し、「安全点検に支出を増大しても何の妨げにはならない」と主張していたが、その安全基準を否定した州で最悪の産業事故が発生した。テキサス州は、ビジネス.フレンドリーの州として、住民が規制に抵抗する傾向が強い州でもあり、政治家や経済学者が最も急成長している州として毎年ランキングしていたという。また、壊滅的な爆発が起きた直後も、政府の規制に関する懐疑心を揺るがす動機にはならず、市長のトミー.ムスカも「厳しい安全基準は自分の市を救済しない」と述べたという。

また、テキサス州は、労働災害補償保険を企業に要求していない唯一の州であるため、自由市場の姿勢に誇りを持っている。更に、消防規則もないため、多くの企業がテキサス州に移転する理由の一つになっているという。しかし、テキサス州は、過去職場での死亡者数が10年間で年間400人以上に達し、全米で最も高い州である。更に、テキサス州には1,300以上の化学および産業工場が存在し、そのテキサス州で発生した火災や爆発は、2012年5月までの過去5年間で、全ての州の物件損害を合わせた費用と同じくらいであるという。一方、イリノイ州は950カ所の危険場所があり、全米で2番目に危険性が高いと言われているが、厳しい安全規則が設けられているため、イリノイ州に比較すると、テキサス州は、職場での事故頻度は3倍、負傷者数や死亡数は4倍高く、物件損害のコストは300倍高いという。

14名が死亡し約200名が負傷した爆発について、連邦捜査官は何らかの手がかりを求めて調査中であるが「テキサスの文化自体が災難に貢献している」と指摘している。また、テキサス大学オースティンの法学および規制専門家のトーマス.マクガーティは、「企業に経済自由を与え過ぎ、公衆の健康と安全性に十分な責任がない」テキサス州の自由奔放主義とその悲惨な結果を指摘している。

NYTによると、食卓塩に似ている小石は爆発する恐れがあり、間違った手に渡ると致命的な結果になるという。1995年、オクラホマ市で連邦ビルが爆破された国内テロでは約2万トンの硝酸アンモニウムが使用された。化学肥料の事故は全国的には稀であると言われているが、テキサス州は、1947年にも、硝酸アンモニウムを運搬していた船が爆発し、テキサス市で600人が死亡するという米史上最大の産業事故を引き起こしている。テキサス州保守派の公共政策財団の副社長は、政府の規制は今回の「爆破に対する間違った応答である」と指摘しているようである。 しかし、学校や住宅地近辺の工場で、基準以上の危険物を保存し、DHSに報告することさえ怠慢であった状況は言語道断であり、これは単なる規則違反を越えた無謀な企業犯罪である。テキサス州のリーダーたちは、自由奔放主義には安全性のリスクが伴うという教訓を学んでいないようである。

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