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13日AP通信は、米国司法省が同社の記者と編集者の通話記録を秘密で入手していたことを報告した。しかし、オバマ政権はメディアにたいして、秘密情報を漏らした疑いで調査を実施したのは今回が初めてではない。AP通信の最高経営責任者(CEO)は、オバマ政権の司法省による電話記録の押収は正当性を越えたものであるとして対立の姿勢を示している。9.11後の米国は変貌し、ブッシュ政権が制定した愛国者法 (Patriot Act)は、国土安全保障という名目の下に多大な権限を大統領に与えている。

5月13日のAP によると、司法省が押収した情報は、ニューヨーク、ワシントン、コネチカット州のハートフォードにある事務所の番号、及びAPが仕事のため下院議員に発信した通話記録、記者の個人的な電話番号などである。オバマ政権は昨年4月と5月の2ヶ月間のAP通信と同社のジャーナリストに割り当てられている20以上の電話回線の記録を押収した。しかし、その期間に政府との取材やその他の用件のため、その電話回線を利用したジャーナリストは100人以上であるという。

AP通信が司法長官エリック.ホルダーに宛てた抗議の手紙によると、APのCEOゲイリー.プルイットは、政府が求めた情報は特定の調査で正当化出来る範囲を越えていると主張し、全ての電話記録の返還と全コピー書類の破棄を要求しているという。AP通信がこのような司法省の報道に対する検閲的行為を暴露したため、オバマ政権は現在疑惑を投げかけられている。ホワイトハウスは、伝えられている情報は必ずしも信憑性があるとは言えないと弁明している。ホルダーは、 電話記録の押収決定は最低限に抑えたものであり、機密情報の漏れを調査するため必要な措置であると述べた。また、今日15日に開催された下院司法省の聴聞会で、ホルダーは、深刻な国土安全保障に関する情報漏れの調査に関し、APの電話記録を内密で押収した活動には関与していないと主張したが、詳細な証言はしていない。最大手のメディアであるAP通信と政府とのトラブルは「APスキャンダル」または「AP召喚」と呼ばれている。このようなトラブルの背景には一体何があったのか?

2012年5月2日、イエメンのアルカイダ組織は、オサマ.ビンラディンが 殺害された1周記念に、米国の飛行機を爆破する企てがあったことを知った米国政府は、 CIAが密かにこれを阻止する計画があったとされる機密情報をAP通信が、同年5月7日に公開したと言われている。当時、特にこの機密情報の記事掲載に関与した5名の記者および彼らの1名の編集者は司法省に召喚されたと言われている。正確な日時は不明であるが、ある時点で、司法省はAPに対して、国土安全保障に危機を及ぼす懸念があるため、この機密情報の公表をしばらく待つよう依頼したため、掲載は5月7日に遅れたとAP側は伝えている。今日の聴聞会で、「どうして司法省がAPとの交渉に失敗したのか」という質問にもホルダーは明確に答えていない。オバマ政権は、このような機密情報の漏れは、敵に知られる可能性もあるため国土安全保障が脅かされることや同盟国との関係にダメージを与えることを著しく懸念し、誰が情報を漏らしたのか捜査を続けていたようである。 このような政府のメディア召喚に合法性はあるのだろうか?

14日のワシントンポストによると、米国の法律は「第三者の原理」に基づき政府がメディア機関や他の組織からの情報源の監視を行うことを許可している。この法律は1979年の最高裁の決定に由来している。当時、警察は強盗容疑者がダイヤルした電話番号の情報を提供するよう電話会社に要求した。その強盗容疑者は、合衆国憲法改正法第四条に基づき電話の音声を録音するためには令状が必要であると主張した1967年の判決を利用して警察の要求を拒否し、彼のケースも同じ原理が適用すると主張した。しかし最高裁は、その強盗容疑者の主張を却下した。その理由は、電話番号をダイヤルすると、自動的に電話会社に情報を提供することになる為、政府がその情報を共有しても違反にはならない。また、電話の請求書に記載された電話番号は必ずしもプライバシーを保護しない。現在広範に普及したEメールやメールアドレスも、プロバーダーなどの第三者と共有しているため、政府が共有できない理由はないという。

また、政府は記者の不適切な記事に対して監視できる特別なポリシーを確立している。ジャーナリストは、FBI捜査官がジャーナリストの通話記録を求める前に、捜査官は司法長官から特別な承認を得る必要があるなどの特別な対応を受けているが、それは司法省の政策であり、憲法上の義務ではない。このような政策は将来変更される可能性があり、独立した監視が欠如すると侵害される可能性は高くなるとワシントン.ポストは伝えている。近年、警察官は容疑者の所在に関する情報を求めて、携帯電話の記録を入手する活動は益々積極的になっているという。従って、ジャーナリストが通話記録に関して、厳密な安全装置を追加しても根本的な問題の解決にはならない。現代人はすでに多くの個人情報を第三者によって保持されているように、プライバシーの保護は益々弱体化している。しかし、一般人は個人のEメール.アドレスやどこで携帯電話を使っているかなどは個人情報であると考えている。しかし、必ずしもそうではないと思われる。

2001年9月11日の同時多発テロ後、ジョージW. ブッショの政権下で愛国者法(Patriot Act)が制定された。この愛国者法は、様々な法務執行機関を拡大又は統合し、2002年には国土安全法を制定し、米国国土安全保障省を設立した。この組織下で、シークレットサービス、 沿岸警備隊、移民管理局及び法律取締局などの機関が再組織された。米国国土安全保障省は最大規模の組織であり、移民問題の他に、税関の取り締まりや国境での密入国の阻止、及び密輸など様々な国内及び国際犯罪の取締りを行う。また、テロリズム対策の一環として、2001年11月に発足した他の機関には、空港などの安全対策に従事する輸送安全管理局(TSA)がある。このような様々な組織は「テロとの戦い」の名の下に、一般の市民、特に外国人、移民などの国際電話、電子メール、及び郵便物などをモニターできるシステムの構築を可能にしている。

2009年に就任したオバマ大統領は、すでに2006年の上院議員時代から愛国者法を支持していた為、2009年12月で期限切れになる前にこの法を議会が再認識するよう要請し、幾つかの条項を更新した。それは、携帯電話の盗聴、一定のビジネス記録の押収、不審な人物をモニターするなどの三項目であった。また、2011年  5 月、その後4年間の延長に署名したため、この愛国者法は存続している。国民が嫌うこのような法律がある限り、個人のプライバシーは常に侵害されていると認識する方が正解だと思われる。

オバマ政権のメディアとのトラブルは、似たようなケースが過去にも5回以上あり、オバマ氏は、過去のどの大統領より機密情報の漏れに厳しく対抗する大統領であると言われている。過去のどの政権より情報の透明性が低い傾向にあることも一因であると思われる。この「AP召喚」はオバマ政権下で お互いの信頼関係が希薄であること、機密性が異常なまでに強調され、国土安全保障の重要性と米国憲法改正法第一条で保障された言論と報道の自由が天秤に掛けられているような構図を示唆している。

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