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6月から上院で審議が始まる移民改正法案について、不法移民に市民権を与えるドリーム法案が米国の経済にマイナスであるか、またはプラスであるかという論争が提起されている。保守派のシンクタンクとして代表的なヘリテイジ.ファンデーションは同組織のHPに「不法移民及び恩赦は米国納税者に及ぼす財政コストが大きい」とする主旨の共同研究論文を発表している。一方、別のシンクタンクグループである公共政策研究所のセンター.フォー.アメリカン.プログレスは、複数の経済学者の研究に基づき、不法移民が市民権を得た場合の経済的メリットは大きいと発表している。

共同研究による発表で、マイナスであると主張しているのはヘリテイジ.ファンデーション(HF)の元政策分析者ジェイソン. リッチワインと福祉専門家ロバート.レクターである。リッチワインはIQに基づく移民選択の戦略論を公開したため、人種偏見の悪評を招き、最近退職に追い込まれた人物である。5月6日の同組織のホームページに掲載された研究によると、「不法移民に恩赦を与えた場合、政府の赤字を増大させるか、または国民が増税を強いられる結果になる」と述べている。彼らの膨大な研究によると、移民の受益には、様々なカテゴリーがあり、社会保障、失業保険、及び労災補償を含む直接的な利益の他に、ミーンズテスト(資力調査)の福利厚生がある。これは約1億の低所得のアメリカ人にたいする現金支給、食品、住宅、医療、その他のサービスを含む80以上のプログラムであり、年間ほぼ9,000億ドルの支出になるという。また主なプログラムにはメディケイド、フードスタンプ、所得税控除、公営住宅、補足保障所得、貧困家庭の為の一時支援などがある。更に、教育や公共サービスなどのカテゴリーを含むと莫大なコストがかかると述べている。

HFの研究は、1,100 万人の不法移民の平均年齢を34歳とし、彼らが政府から様々なプログラムの受益を得る期間を50年間とし、市民権を得る前の暫定期間、市民権を得た最初の時期から退職前の期間、退職期間中の3段階に分けて、現在の不法移民の低所得水準で計算している。例えば、 2010 年の平均的な不法移民の1所帯が政府から受けた受益総額は 24,721 ドルで、彼らが支払った税総額は 10,334ドルであり、その赤字は14,387ドルであるという。また、暫定期間が終った後の年間コストは1,060億ドルであり、50年間で不法移民が得る受益総額は成人1人当たり592,000ドルであると推定している。従って、不法移民が生涯において政府から受けるサービスの受益は9.4兆ドルであり、税収は3.1兆ドルであるため、総支出は6.3兆ドルである。この推定6.3兆ドルの赤字は、政府の負担または米国市民の増税につながると主張している。

HFの研究結果に対する反応は多大である。ドリーム法案は2.5兆ドルの連邦政府の赤字を減少させると推定している税専門の利益団体アメリカン.フォー.タックス.リフォーム や他のシンクタンク.グループなどから批判されている。リバタリアンのシンクタンクとして有名なケイトー研究所は、移民の福祉利用推定が非現実的であるため、コストが大げさに推定されていると批判している。また、個人ではなく所帯で計算されていることや市民権を得た後の増収が見込まれていないなど多数のエラーを指摘している。

一方、センター.フォー.アメリカン.プログレス ( CFAP)は不法移民を合法化することで著しくGDPと税収が増大すると述べている。UCLAの経済学者ラウル.ホサ·オヘダの研究によると、より高い企業の生産性、サービスの需要、お金の流れ、雇用の拡大により今後10年間で1.5兆ドルをGDPに追加することが可能であると述べている。また、 税金による歳入は最初の3年間で45億から54億ドルを推定している。ノートルダム大学の複数の経済学者の研究によると、不法移民に永住権や市民権を与えるドリーム法案は2030年までに3,290億ドルを米国経済に追加すると述べている。 ドリーム法案は、米国の高校や大学で学び、または入隊経験がある移民など、一定の資格を定めている。より高い教育や職業訓練の機会を通して、彼らが雇用を創出し、また 社会的地位が向上するに従って賃金は上昇し、経済循環を向上させると述べている。この本格的な研究によると、帰化した市民は8%から11%賃金が上がるため、合法的な永住者より経済的にもっと有益であるという。米国国土安全保障省は、このカテゴリーに属する人数は約850万人であり、彼らが5年間で210億から450億ドルを米国の経済に追加すると推定しているという。

また現在、不法移民もかなりの税金を支払っているため、この傾向は続くと思われる。税金と経済政策研究所(ITEP)の2011年の研究によると、不法移民が2010年に州と地方治自体に支払った税金の総額は112億ドルであり、州と地元の財政を助けている。また不法移民の税金支払いに関して見逃せないのは、不法移民である彼らは将来受ける可能性のない社会保障税も支払っていることである。アメリカ政策全米財団(NFAP)によると、今後75年間で社会保障に追加される推定総額は6,110億ドルである。従って、不法移民に市民権を与えることは社会保障システムの維持に役立ち、逆に移民を閉め出した場合、社会保障は50年間で31%の赤字を増大させることになると説明している。

要するに、ヘリテイジ.ファンデーションは不法移民に市民権の道を開くことを目指す包括的移民改正法案は、長期的には保守的な推定で6.3兆ドルの赤字になると述べている。同組織は不法移民に反対しているため、 法案の経済的損失を推定した論議に基づいている。彼らの研究は基本的に、高い教育を受けた国民、または高度なスキルを持つ国民ほど納税に貢献していると主張し、高度熟練労働者を優先する合法移民の奨励を暗示している。また、同組織の研究結果は、主に2010年の米国国勢調査局の資料に基づき計算された数値であり、市民権を獲得した後の移民が潜在的に持つ経済的向上はほとんど考慮されていない。更に、現在の不法移民は推定1,100万人であるが、最終的に市民権を獲得する人数は激減すると予測されているにもかかわらず、その人数を推定して計算していないため曖昧な印象がある。従って、この研究は圧倒的な批判を浴びる結果になっている。

一方、包括的移民改正法案を支持するセンター.フォー.アメリカン.プログレスは、複数の大学の経済学者および税専門機関の研究を参考にしている。市民権の対象者数を想定した未来の観点から歳入の側面、および市民権を与えられる850万人の合法移民の経済向上による歳入に焦点をあてていて、年数や人数等が具体的である。更に、福祉プログラムの利用には移民も先住民も差はないとする2012年の複数の資料も提示している。米国は歴史的に移民が経済の骨格になっていることを多くの学者が認めているため、8人の超党派の上院議員が経済的メリットを無視して起草するはずはない。

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