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昨日、上院議会は68対32票で包括的移民改正法案を通過した。8人の超党派の議員が起草した法案は、約半年間、様々な角度から協議を通して多数の修正が行われ、かなりの障害を乗り越えて遂に投票に至った。上院での圧倒的勝利はその努力が滲み出た結果である。しかし、その努力は下院議会で踏みにじられる可能性が高い。

昨日、上院議会で開催された投票には副大統領ジョー.バイデン氏が出席し、投票議長としての役目を果たした。また、上院多数派リーダーのハリー.リード氏は投票のルールとして、指定された座席に呼ばれるまで着席しているよう上院議員に指示を与えた。此の法案には、適正資格のある数百万の移民に永住権、および究極的には市民権を与えることが提起されている。特に、共和党議員が強調している国境の強化を念頭に入れ、米国とメキシコ間および他複数の国境付近でのパトロールと警備に約500億ドルの支出が追加されている。国境安全強化の一環として多くの警備員を配置し、フェンスを建設することも計画されている。また、 就職申し込み者の法的状態をチェックする職員を新たに配置するシステム(E-Verify)も導入される。しかし、上院議会で通過した1,200ページの法案は、下院議会が検討する前にもみ消される恐れがある。

下院議長のジョン.ベイナー氏は、どのような法案も下院で投票する前に過半数の支持が必要であると述べ、1ヶ月前に上院で通過した法案は全て下院で協議すると述べた時とは異なる反応を示した。昨日、アフリカに旅行中のオバマ氏は、ベイナー氏と下院少数派リーダーのナンシー.ペロシ氏に電話し、優先すべきこの法案の協議に急遽取り組むよう要請したことが伝えられた。オバマ氏は「上院は彼らの任務を果たした。今後は下院が同じことをしなくてはならない」と述べ、反対派が超党派議員の努力に水を差し、常識的な改革を停止するようなことをさせてはならないと警告した。起草者の一人であるアリゾナ州の共和党古参の上院議員ジョン.マケイン氏は、下院の友人たちの配慮をお願いしたいと語り、共に膝を交えて交渉に応じる姿勢があることを明確にした。マケイン氏は、それぞれ異なる見解があるかもしれないが、我々はすべて同じ目標を共有し、日陰で生きる1,100万人にチャンスを与え、国境を安全にし、米国の機会と自由を明確にする時であると語った。

しかし昨日、上院で法案が通過した後の記者会見でベイナー氏は、「民主党や他の提唱者が支持しているこの移民改正法案を共和党の大多数が支持しない限り、協議および投票するようなことはない」と述べた。下院は自分たちの独自の移民法案を超党派で取り組むつもりであるとし、7月10に特別会議を招集すると語った。また、上院で通過した法案を直接協議することも投票することもないが、国境に焦点をあてた下院独自の法案に取り組むと宣言した。ベイナー氏はこの記者会見で、1999年から2007年まで共和党の下院議長であったデニス.ハスタートが用いた「ハスタート.ルール」と呼ばれる大多数のための大多数による統制原理を強調し、共和党の大多数が支持しない限り、その法案の投票を許可しないと述べた。つまり、 民主党多数派で構成されている上院で通過した法案は、ハスタート.ルールに反するため受け付けられないと先制宣告をしたのである。

これはなぜなのか? 共和党でコントロールされている下院議会は、不法移民に市民権を与えることに強い抵抗を示している。市民権を与えると、選挙では民主党に有利であると恐れているからである。また、民主党も共和党も米国の過去の移民政策は失敗しているという点には同意しているが、移民改正法案の取り組みに対する戦略的な側面では双方がかなり異なっていることも理由である。移民改正法案に関して、上院で通過したような包括的なものではなく、下院は、問題にひとつずつ対処することを望んでいて、ステップ.バイ.ステップ方式で取り組むことを主張しているためである。その最初の強調点は、国境安全性の強化である。オバマ政権下で過去数年間、 毎年40万人の不法移民を強制送還し、歴史上記録的な不法移民の排除を実施したため、旅券なしで国境付近に近づく密入国者は極度に減少していると言われているが、それでも国境の安全性を強調している理由は、 国境が完全に強化されてから他の問題は考えると主張することで、市民権の問題をできるかぎり長く放置しておきたいからである。従って、ハスタート.ルールを持ち出した下院議長の発言から察する限り、昨日上院で通過した包括的移民改正法案は、下院議会で大胆に解体されるか、または抹殺される運命になる可能性が高い。

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