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最近オバマ大統領は、論争的な話題に深く関与することを避け、公的に演説することをかなり控えるようになった。そればかりか、以前と違い様々な問題に関して直接的な指揮を取ることさえ止めてしまったような印象がある。先月NSAの監視プログラムが漏洩してから特にその傾向は強くなった。オバマ氏の姿勢に変化が見られるその原因は何なのか?

全ての問題にオバマ氏が直接関与しなくなったという意味ではないが、外交政策や国内問題について、カメラの前で、特に論争的な問題に関する見解を述べることを極端に控えるようになった。例えば、国際問題では、シリアの反乱軍が武装を決断した時も安全保障のアドバイザーがそれについて発表しただけである。エジプトの問題に関しても、公的なスピーチは利点がないと判断し、アラブ諸国の代表者らとは電話会談をしているだけであるという。可能な限り国際紛争を避け、舞台の背後で行動を取りながら、法律制定は議会に任せているというのが最近のオバマ氏のアプローチである。

特に、オバマ氏は国内の論争的な問題を語ることに躊躇するようになった。例えば、銃規制に関しても、ニュータウンの家族が悲しみに暮れているときも、自身が表に立つことを避け、副大統領のジョー.バイデン氏を銃規制の責任者として任命した。医療改正法案にしても、2014年から強制加入が有効になるはずであったが、50人以上の従業員を持つ雇用主の加入責任を最近1年延期したことについて発表する事はなく、財務省がそのHPに発表しただけである。第二期目の最も重要な移民改正法案に関しても、共和党との疎遠を避けるため公的な関与を最小限に抑えている。銃規制や移民問題については、議会の特定メンバーと電話で会談しているだけという裏での活動を行っているようだ。内部告発者のエドワード.スノーデンの処置に関しても、ホワイトハウスのスポークスマンが記者団に語るだけで、オバマ氏は何ひとつ公式に話していない。現在、人種問題で国を二分しているジマァマンの判決後も米国は「法律国であり、審判員が決定した」と述べただけで、世論を興奮させる発言を控え、記者団に自身の見解を語っていない。

15日の『ニューヨーク.タイムス』(NYT)によると、このオバマ氏の変化には、幾つか憶測可能な理由があると言う。その一つは、アイゼンハワー大統領を手本にし始めたのかもしれないという。また、オバマ氏は一般的にこれまで「しゃべり過ぎる」と批判されてきた。従って、 複数のアドバイザーから話すことだけが得策ではないと指摘されたことなどが原因であるかもしれない。最後の理由は、過去の苦い体験から学んだことがあるのかもしれないという。

オバマ氏は34代大統領のドワイト.デヴィッド.アイゼンハワー を尊敬しているという。軍人であったアイゼンハワー大統領は、慎重で決断力のあるリーダーとして、歴史家の間でも評価が高い。政治手腕も優れていたようであり、頻繁に舞台裏で指揮を取るタイプだった。NYTは、アイゼンハワー大統領を「舞台裏アプローチ」(Hidden-Hand-Approach)の指導者と呼んでいる。つまり、表面に立たず、舞台の裏から頻繁に物事を指図していたという。最近、オバマ氏は、歴代のどの大統領より、ジャーナリストとの接触が少ないと言われている。多くの問題について質問されることを避けるため公的な記者会見の機会を減少させ、特定のジャーナリストらとドアの裏側で会談する方法を採用しているという。アイゼンハワー大統領も定期的にこの「舞台裏のアプローチ」で記者団と会談していたという。

オバマ批判者は、一期目の頃のオバマ氏について、「彼のスピーチ能力はすごいが……」と良く皮肉的な評価をしていたことが頻繁にあった。しかし、最近ではそのような皮肉は聞かれなくなっている。NYTによると、大統領のアドバイザーであるダン.ファイファー氏に「貴方が、いつでもどんな事でも話をすると、一般国民は大事な事を認識することが困難になる」と忠言したという。ファイファー氏は「最近の出来事を解釈するのが大統領の仕事ではない。大統領が公的に話をすれば、複雑な問題を益々複雑にする」と語ったという。5年目の大統領は自分が話すべき機会を選択し、公的に話すことが非生産的であると判断したときは、沈黙するようになったと思われる。

また、NYTによると、オバマ氏は就任後、黒人のハーバード大学教授が自宅で逮捕された事件に反応したとき、オバマ氏のスピーチが論争を煽動したと気付いたことがあるという。また、最近、軍隊での性的暴力を告訴する軍事会議について鋭いコメントを発表した際、「不適切な干渉」と批判された経験もある。これは、オバマ氏がもっと厳しい処分を提案していると誤解した関係者らにプレッシャーを与えたためである。雄弁家のオバマ氏も失敗の体験を通して「何を、どのように話すべきか、とても慎重でなくてはならない」とオバマ氏の中東問題のアドバイザーであるデニス.ロス氏が述べているという。オバマ氏は、特に、論争的な問題について、メディアに押されて意見を公表する事は危険であると学んだという。

大統領も人間であるため「口は災いの元」の格言を失敗から学ぶこともあるようだ。オバマ氏は、一期目の4年間とは異なり、話すことを控え、「舞台裏のアプローチ」に変えたようである。表に立って指揮を取ることだけがリーダーとしての資質ではないことは確かである。アイゼンハワー大統領のように、裏でしっかり指示を与え、成果を出せば国民は納得する。アイゼンハワーは、在職当時より1990年代から2000年以降、歴史家の間で評価が高くなった大統領である。それは、後年になってから、ほとんど全ての主要問題に思慮深い対処をしていた大統領であったことが理解されるようになったからである。オバマ氏がアイゼンハワー のそのような側面をモデルにしても不思議ではない。しかし、世界的に恥を晒す結果になったNSA監視プログラムの漏洩後、記者団にその責任を追及されることを避けて、一歩後退しているという事も考えられる。

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