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米国にホームオーナー.アソシエーション(HOA)が台頭したのは 19世紀の中頃からである。現在、企業のビジネスになっていて、住宅のマーケティング、管理、売却、及び住宅地の監督が主な業務である。管理には芝、造園、駐車場のメインテナンスなどがあり、コミニイティ(地域共同体)になっている住宅地の一軒家を購入する住宅所有者から会費を得ることでその運営は成り立っている。このシステムおよび契約内容を完全に理解せず、HOAにリンクしている住宅を購入する個人は、何気ない不注意により思わぬ落し穴にはまる場合もある。

ロイター によると、そのような落し穴にはまった75歳の女性は、ケンタッキー州のレキシントンに住む競争馬のトレーナーであるイングリッド.ボーグ氏である。ボーグ氏は仕事での旅行が多く、HOAからの郵便物を頻繁に「無視した」という。彼女の告白によると、彼女の住宅の地域共同体にはクラブハウス、プール、HOAが提供する社交活動などがあり、これらを一切利用していなかったため年会費の$48を支払っておらず、合計$288が未払いになった時点で、突然彼女の家は抵当流れに落ちたという。昨年9月、彼女の玄関ドアに手書きのサインがあると電話で隣人が知らせてくれた時、1階建て$120,000の自分の家が売却されたことを知った。彼女は抵当流れの知らせを受け取ったかどうかさえ覚えていない。また、本人と直接事務的な対応をした人もいない。彼女はこの体験を東ドイツの共産圏州に住んでいた父が財産の所有権を奪われた体験と重ね合わせて、今75歳の自分が同じような事態に直面していると語ったという。彼女は財務上の信頼性を失ったため、その家の新たな家主に毎月$900の賃貸料を支払うはめになった。

HOAの支持グループであるコミニイティ.アソシエーション研究所(CAI)は「抵当流れは最後の手段であるが、これは公平性の問題である」と述べている。支払うべき会費を支払わない隣人のため、きちっと支払っている住民が迷惑を被るべきではないとの主張によるものだ。CAIは、HOAも地域共同体であるが 「ビジネス」として運営していると語っている。ロイターによると、現在6,300万人のアメリカ人がHOAにリンクした住宅地域に住んでいる。1970年の210万人に比較すると大幅に増えている。現在、5人中4人の一軒家またはマンションの購入者はそのような年会費を要求されるHOA運営による地域共同体に属している。HOAの支持者は地域共同体の特質や不動産の価値を保持するサービスやアメニティを提供するメリットを挙げている。CAIによると、70%の住民はそのような生活の経験が実用的であると感じているらしい。

従って、管理費や維持費の類いの会費を支払う必要があるのはマンションを購入する時だけではない。一軒家を購入しても、住宅ローンの他にHOAの会費を支払う必要がある場合もある。一方、HOAにリンクしていない住宅所有者はプールの掃除も庭の芝刈りも自分で行う必要がある。これはかなりの肉体労働であり、住宅周辺を奇麗な状態に保つには多少なりとも労働力と経費がかかるが、どちらを選択するかは個人の状況とライフスタイルの好みに依る。しかし、ボーグ氏のような失敗をしないためには購入前に資料を良く読み、会費の支払額に無理はないか、HOAのメンバーとしてどのような義務があるのか十分理解する必要がある。HOAは「先取特権または留置権を保持している」ため、住民に対してわずか数百ドルの未払いがあるだけでも「家を差し押さえる権利がある」ことを知る必要がある。固定資産税や数ヶ月の住宅ローンの未払いにより家を失う結果になることと同じであり、わずか$48の年会費を甘く見ることはできない。

それにしてもわずか$288の未払いで抵当流れとは残酷であり、ほぼ野放しにされているHOAの過剰な権力は問題である。ボーグ氏の体験は彼女自身にも落ち度があるが、郵便物を無視するのは彼女だけではない。コロラド州でも同じようなケースがある。クリストファー.ライト氏は、$900ドルの支払い遅延のため彼の$350,000の家は$10,900のオクションで売却された。ライト氏は、子供の自転車を外に放置していた罰金だと勘違いし、受けとった郵便物の内容に注意を払わなかったため家を失う結果になった。

HOAへの対処は州によって異なっているが、一般的に、住宅所有者の権利が過剰に制限されているとの批判がある。基本的に、HOAの役員はほとんど政府の制約に拘束されていないため、様々な方法で住民の権利を抑制し、企業とHOAは住宅所有者に対する義務と責任を限定しているという事らしい。しかし、約10年前から大幅に規制されていないHOAの権力を抑制する市民運動が台頭し、各地で様々なケースの訴訟が続発している。ネバダは住宅所有者の苦情に対処するため、違法行為を調査する公務員を指名した唯一の州である。カリフォルニアや他複数の州は地域共同体の委員会が選定された。また、修理費や維持費または管理費などの値上げをする場合の査定において、住宅所有者全員の投票なくして独断で決定する権限を制限する法律を通過した。

ボーグ氏の地元の委員会メンバーであるシャバーン.エイカーズ氏は、「少なくとも、住宅所有者が抵当流れの書類通知を受理したことを認める前に、HOAが抵当流れを決定する行為を禁じる法律を起草するため、ケンタッキー州政府に圧力をかけている」と語っている。しかし、州当局はボーグ氏のケースに「何の対応もしていない」現状であるという。ケンタッキー州は明らかに政府の規制が甘いと思われる。いずれにしても、わずか$288および$900の未払いが原因で、あっけなく住宅を失う結果になるHOAシステム下の例は、米国で住宅を購入する際は徹底した事前調査と注意が必要であることを示唆している。

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