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アフォーダブル.ケア.アクト(ACA)またはオバマケア下で医療保険市場から800万人が加入したことや、多くの共和党有権者が撤廃より改善を望んでいることを受けて、最近オバマケアを撤廃する動きや主張はかなり鈍化している。しかし、共和党はオバマケアに代わって、 2012年にベンガジで複数のアメリカ人外交官が殺害された悲劇を政治的に利用することで、今後オバマ政権と民主党を攻撃する新しい材料を得たようである。

2012年9月11日、リビアのベンガジにあるアメリカ大使館で米国大使のクリストファー.スティーブンスを含むアメリカ人4人が殺害された。内戦が続いているリビアは騒然たる状況であり、当時複数の情報源は、ユーチューブに掲載されたイスラム教の予言者モハメドが登場した「イスラム教徒の無罪」と題するビデオに対するプロテストがあった時間とほぼ同時にアメリカ大使館が襲撃を受けたと言われている。メディアはこのプロテストを報告し、それを情報委員会が引用し、不正確な情報が錯乱したため著しい混乱を招いた。最初の報告では、殺害された4名中2名の男性はCIAの職員であり、他10人が負傷したことを当時国務長官であったヒラリー.クリントンが確認した。共和党はその当時、軍隊を派遣して保護することが出来なかったとして、オバマ政権はアメリカ人外交官に適切な安全保障を提供することに失敗したと鋭く批判した。共和党は当時、ホワイトハウスに責任があると糾弾し、何らかの真実を隠していると主張した。11月に大統領選挙を控えていた当時、共和党はこの事件にオバマ大統領がどのように対応したかをしつこく追求した。

上院および下院の調査委員会は、それぞれ別々に定期的な聴聞会を数回開催した。いずれの調査委員会も、メール、ケーブルなどの送受信情報、監視カメラのビデオを含む圧倒的な量の情報をもとに、その日ベンガジで何があったのか、どのように襲撃されたのか、どうして被害者を救済出来なかったのか、などの角度から本格的な尋問および検討が行われた。今年1月に提出された上院調査委員会の85ページの報告書は、ベンガジ襲撃は国務省が安全保障を増大しなかったことが原因であるとの結論を表明した。2月に公表された下院調査委員会の報告書はリビアでの安全保障が劇的に弱体化している事実をホワイトハウスが掌握していなかったか、又は無視したと結論づけた。

クリントンは2013年2月1日に国務長官を辞職する前の 1月23日、上院の聴聞会で証言し、将来二度と同じことを繰り返さないため、過去の過ちから学び、厳重な対策を講じることが重要であると訴えた。しかし、一部の共和党は執拗に政治的もみ消しがあると迫り、その後もベンガジ襲撃に対するオバマ政権の落ち度を批判する怒号は続いた。従って、過去の聴聞会の機会に発見されなかった新たなメールは、ベンガジ襲撃に関して、共和党が再度オバマ政権攻撃をエスカレートさせる材料になっている。

事件から約19ヶ月が経過した4月29日、司法ウオッチ.グループは情報解放法(FIA)に基づいて、国務省の電子メールの公開を求めた。その中には、当時公開されなかったメールが含まれていた。そのメールは、2012年9月14日に、国土安全保障省の担当者ベン.ロウズが、当時米国の国連大使であったスーザン.ライスに宛てたもので、プロテストはインターネット上で公開されたビデオに基づいていることを強調する内容であった。ホワイトハウスのスポークスマン、ジェイ.カーニーは、そのメールは広範なトピックに言及していて、特定のベンガジ襲撃に関するメールではなかったと説明した。また、下院少数派のリーダー、ナンシー.ペロシは5月1日の記者会見で、そのメールは過去の情報と一貫していて、何も新しい情報はないと述べ、それでも共和党が追求すると言っている理由は「口実であり、彼らがベンガジ、ベンガジ、ベンガジを繰り返しているのは、移民、雇用、投票権、その他の政策について話したくないからである」と語った。

従って、共和党は何の証拠もなく、ロウズがライスにあてたメールは操作されたメールであり、もみ消しであると主張し続けている。5月2日、下院議長ジョン.ベイナーは、ベンガジでアメリカ人4人が殺害された事件の真相を究明するため、下院調査委員会を設定すると発表した。下院議会は、下院調査委員会を設定するかどうかを決定するため8日投票し、232対186票で可決した。委員会は12名の下院メンバーで構成され、7名は共和党、5名は民主党である。ペロシはベイナーに両党同等数のメンバー構成を要請したが、ベイナーはこれを拒否した。今後しばらく聴聞会が実施され、オバマ政権の主な関係者は召喚される可能性があるが、クリントンや現在国務長官であるジョン.ケリーなど、主要関係者は既に数回過去の聴聞会で証言している。下院は再度同じことを繰り返しているが、大使館襲撃に関連性のある事実は全て表面化したため、新たな情報が得られる可能性はないと民主党は指摘している。

それにも関わらず、下院共和党がベンガジ襲撃事件を再度蒸し返す理由は単に政治的なものである。ベイナーは、調査委員会を設定する理由について、真実を知るため、殺害された人達の名誉を称えるためである言っている。しかし、ペロシを含め、他複数の民主党は、それは真実ではなく、あくまでも政治目的のためであり、「悲劇を政治的戦略に利用している」と批判している。民主党全国委員会の主席であるデビー.ワッサーマン.シュルツは7日、下院委員会の設定について「執拗なACA撤廃の主張はその輝きを失ったため、政治的策略以外の何ものでもない」と指摘した。

確かに、下院調査員会を設定し、民主党を叩くことで選挙資金を増やすことは可能である。また、オバマ政権を再度攻撃することで、2014年の中間選挙では民主党にプレッシャーを与え、2016年大統領選の最有力候補と言われているクリントンの立場を弱体化させる機会になるなどの政治的メリットは多大である。クリントンはまだ立候補を表明していないが、現在のところクリントンに勝てる共和党の候補者は存在しないと言われているため、共和党はかなりの恐れを抱いていると公言するニュースキャスターもいるほどである。ペロシが指摘した通り、共和党は重要な政策に関する責務を放棄し、オバマ政権のあら探しをすることに精魂を傾けているという情けない現状である。

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