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現在浮上している退役軍人(VA)スキャンダルは、米国のVA医療システムが完全に崩壊していることを示唆している。4月アリゾナ州の退役軍人病院(VAH)で何らかの不手際が報告されたことで全国的な問題として発展した。5月には米国退役軍人省の長官で日系アメリカ人のエリック.シンセキに対して議会は聴聞会を開催するようになり、辞職を求める声は日増しに強くなっている。VAシステムはどうなっているのか?現在何が起きているのか?スキャンダルに対する反応は?その根本的な問題は何であるかを問いつめていくと、長年蓄積された問題が歪んだ形で表面化したと思われるその本質的な原因が見えてくる。

アメリカの退役軍人は米国退役軍人省が対処している3つの主要な恩恵を受けることが可能である。それは、退職後の年金受給と医療システムのアクセス、および死後の埋葬と記念碑の設立である。全米の各地に退役軍人病院(VAH)を運営している米国退役軍人省の主な仕事は、年々増えている退役軍人に医療健康サービスを提供することである。退職軍人は書類提出を含む一定の規定に従い、全国にあるVAHで治療を受けることが可能である。書類を受理された新しいVA患者は14日以内に医師に面談することが可能なシステムになっている。

しかし、常識では考えられないようなことが起きている。全米各地のVA病院及び施設で、予約患者を必要以上に長く待たせ、病院の職員は彼らの待ち日数について虚偽の記録をし、更に長い待機期間中、複数の患者が死亡したと報告されている。待ち日数は平均100日前後の場合もあったという。死亡原因とそのような長期的な待機時間との直接的な関連性は証明されていないが、現在論争的な問題に発展している。治療が遅れた患者に肺炎の形態であるレジオネラ症が発生し、消化器官系プログラムの不手際な処置があったことも報告されている。5月中旬から始まった公聴会で、遅延が死亡の原因であるとの結論はなされていない。

多数存在するVA施設の中で特に問題となっているは、アリゾナ州のフェニックス、コロラド州のフォート.コリン、サウス.キャロライナ州のコロンビア、フロリダ州のマイアミ、ペンシルベニア州のピッツバーグに位置している病院である。特に、フェニックスのVAHは、退役軍人1,700人の非公式な待機リストを作成していたことが判明し、2013年には、予約した退役軍人の220人以上のうち80%以上は2週間以上待たされた事が報告されている。コロンビアおよびピッツバーグのVAHではいずれも5人以上が待たされている期間中に死亡したようである。

この事態を受けて、退役軍人長官エリック·シンセキの責任が問われている。共和党の反応は様々であるが、多数の共和党議員はシンセキに辞職をせまっている。下院議長のジョン.ベイナーはVAH を民営化するべきであると主張し、特に現在そのような考えが強くなったと表明した。上院共和党古参議員ジョン.マケインはシンセキの辞職を強く主張した。5月28日、ミット.ロムニーは、VA病院は全国にある主要な軍事システムの病院であるため、調査体制が備わっているべきであったが、長い間待たされた患者の健康問題が急性又は重症になる前にその問題を特定し、病院がどのように運営しているかを調査するべきであったが、それは実施されていなかったのではないかと指摘した。また、VAHの性質を良く理解し、管理できる新たなリーダーが必要であるとしてシンセキの辞職を主張した。オバマ大統領は、VAスキャンダルが浮上した1ヶ月後、彼自身が「元々軍人であり、彼ほど退役軍人を理解し面倒を見ている人はいない」と述べ、シンセキを擁護した。

シンセキは1942年ハワイ生まれの日系アメリカ人で2003年まで陸軍大将であった。祖父が広島から移住したため日系三世であり、ベトナム戦争に参加した経験があるなど、軍人として幅広い実績の持ち主である。現在、VAスキャンダルのため著しいプレッシャーに直面していて、再選に向けて戦っている民主党議員も困難な立場に置かれていると思われる。シンセキに対する主な批判は、問題を改善するための対話がなかったため、退役軍人省とVAとの間の信頼関係を破壊したと指摘されている。しかし、その真相については不明であるが、責任を取って辞職するべきであると追いつめられている。本人は辞職の意志を表明していないが、1,700人の退役軍人の診察が遅れている報告を受けて、退役軍人病院本部に連絡を取り至急彼らの面倒を見るよう要請し、全国のVA施設に予約ポリシーを理解し従うよう指令している。

シンセキが辞職しても根本的な問題は解決しないと思われる。この事は多数の民主党のリーダーらが指摘している。民主党は、シンセキが強いリーダーシップを発揮し、改善案を表明するべきであると提案している。問題は、毎年新しいVA患者の予約が殺到し、患者の数に対して、医者及び職員の数が不釣り合いに不足していることである。そのため、予約したVA患者の未処理が増える一方である。このような問題は改善するべきであるが、VA当局だけで対処できるような単純な問題ではなくもっと根は深いため、VA当局は数年悩まされてきた。また、これはオバマ政権の新しい問題ではなく、長年必要な部署に予算を提供しない議会の責任でもある。

要するに、年々増え続ける退役軍人数に対して、医師、職員、施設が大幅に不足している事実があり、不十分な資源の問題による蓄積した状況が表面化しているのがVAスキャンダルの根本原因である。オバマ大統領は、国に奉仕した退役軍人のリハビリ.システムの改善について長年語り、予算の割当を頻繁に請願してきた。これに対して、議会の共和党はVAHシステムを改善し、退役軍人を援助する為、予算を導入することには協力しなかった。ブッシュ政権はイラクやアフガニスタン戦争で莫大なお金を湯水のごとく使い果たし、様々な健康上の問題を抱える退役軍人の面倒を見ることに関心を向けていないのは共和党リーダー達である。彼らは根本的に年金などの社会保障も含めて、VAHシステムも民営化することを望んでいるため、改善資金を分配することには長年躊躇してきた。基本的には、国に奉仕する軍人に対して祖末な対処をする結果を招いている共和党の政策にも原因がある。更に、問題が大きくなるまで気付かないほど崩壊している議会の機能不全にも問題がある。そのような根源的な原因を棚に上げ、シンセキだけに責任をとらせようとする姿勢は間違っているだけでなく、どこか歪んでいる。

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