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昨日幾つかの州で予備選が行われ、昨夜衝撃的な投票結果が判明した後、共和党の間で一種のパニック状態が見られた。バージニア州で開催された予備選で、下院多数派の2番目のリーダーであるエリック.カンター(右)は7期目に挑戦していたベテランの共和党議員であったが、政治家としての経験が全くないティーパーティに後援されたディビッド.ブラット(左)に敗北した。その投票結果が発表された昨夜、共和党はかなりのショックを受け困惑状態に直面した。カンター敗北の原因は何か、彼の落選は何を示唆しているのだろうか?

ワシントンポストWP)によると、2年前の予備選では約47,000人が投票し、エリックは79%の投票率で楽勝した。今年は65,000人が投票したという。複数のニュース筋によると、今年のエリックの投票率は約45%(約28,600票)で、ブラットの約56%(約35,700票)に10%ポイント以上の差をつけられ、みじめな敗北に終った。予備選で議会のリーダーが新人の挑戦者に破れることは選挙史上稀なことである。

二人の劇的な違いを比較してもカンターの落選は考えられないことである。カンターはこの選挙に500万ドルを投資していたが、ブラットの選挙資金はわずか20万ドルを若干超える程度であった。しかも、カンターは7期目に挑戦していたベテラン議員のリーダーであり、ブラットはランドルフ.メイコン.カレッジの経済学者であり、ほとんど無名の新人である。次期下院議長になることが噂されていたリーダーの一人が予備選で敗北するという予想外の結果に、共和党は「信じられない」という思いで唖然としている状態である。

カンターがブラットに敗北した原因は幾つかあると思われる。WPによると、キャンペーンの戦略は「よそよそしく、打ち解けない」印象があり、TV広告の「戦術は攻撃的すぎた」ため、有権者はブラットに同情したとの分析もある。また、カンターは資金集めとワシントンの内紛に時間を使い過ぎ、現場での努力がほとんどなかったと地元の何人かの共和党は感じたという。また、70%以上の国民は、不法移民に市民権の道を開くことも含めて包括的な移民改正法案を支持している。バージニアを含む幾つかの州の予備選でも、移民改正法は重要な課題であったと言われている。カンターが移民法を支持していたことが問題であるとする説と、移民法は既に死んでいるため問題ではなかったとする説に分かれている。

サウス.キャロライナ州の予備選では、上院で包括的な移民改正法案の起草者の一人であったリンジィ.グレイアムは複数の挑戦者を打破した。グレイアムは、エリックの移民改正法案の支持が不十分であったと指摘した。一方、ブラットはティーパーティの政治思想に直結した移民改正法案の反対者であり、市民権の道を支持する主流派共和党とは正反対の路線を打ち出していた。また、ブラットは選挙キャンペーン中、予算、移民法、その他の側面でカンターは徹底した保守派ではないとして激しい攻撃をしていたと言われている。

予備選の投票参加率は一般的に低下すると言われている。バージニア州の投票結果は、ティーパーティの活動家が他のどのグループより投票に熱心であり、一方、カンターを支持していた有権者の投票参加率が不足したことを示唆している。つまり、投票参加率による不均等効果が発生したのではないかと思われる。また、広告宣伝の戦略に失敗したことも敗北の一因であると思われるが、予想に反して落選したカンターは11月4日の総選挙の競争権を失う事になる。一方、ブラットは民主党候補者のジャック.トラメルと対戦することになる。これは、一部の共和党有権者にとって難しい選挙になる。なぜなら、トラメルもブラットと同じ大学の社会学の教授であり、いずれも政治的に未経験であるからだ。11月の総選挙では、選挙史上稀な共和党リーダーの予備選敗北を経験した無党派州のバージニアは特に注目されると思われる。ティーパーティと対抗している主流派の共和党議員は、今後、彼らの路線に妥協を示す民主党を選挙戦で打倒することより、微塵も妥協しないティーパーティ候補者の打倒戦略を強化する必要がある。

カンターは今日の記者会見で、多数派リーダーとして奉仕させて頂いたことを名誉であると述べ、「偉大な恥」であるが、7月31日に下院多数派リーダーとして退歩すると発表した。カンターの後任者は6月19日に下院の共和党議員達が選定することになる。候補者は複数存在するが、カンターは、カリフォルニア州出身のケビン.マッカーシーが「卓越したリーダーになる」として支持を表明した。マッカーシーは2002年から2006年まで州議会の共和党議員を務め、2007年から米国下院議会のメンバーであり、2009年にウイップと呼ばれる下院多数派の3番目のリーダーに昇格した人物である。カンターは7月31日以降、議席が入れ替わる来年1月まで単なる議員の一人として議会に留まることになりそうである。下院議長ベイナーを含む共和党はまだ唖然としていて、カンター敗北の衝撃の大きさを印象づけている。

 

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