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不法移民の子供達が国境付近に殺到している現在、移民改正を再検討する機会である。折しも、移民改正を支持した下院多数派のリーダー、エリック.カンターは強硬派の共和党有権者が多いバージニア州の第七選挙区の予備選で劇的な敗北をした為、移民改正の物議を醸し出している。移民の問題はカンター落選の主要因ではないと言われているにも関わらず、カンターは移民改正に柔軟過ぎたため敗北したとの印象を抱いている複数の議員はすっかり怖じ気づいている。そのような状況下でオバマ大統領と民主党リーダーは移民改正に対処する意図があるのか?

2月6日にCNNが発表した世論調査によると1,100万人の不法移民に段階的に市民権を与える法案を支持する民主党の有権者は88%、無党派は 81%、共和党は72%で、総体的に大多数の米国民は移民改正を支持している。また、カンターの後継者として有力視されているカリフォルニア州出身のケビン.マッカーシーは、不法移民の労働者に永住権などの長期的な合法的資格を与える事で強制送還する必 要もなく、納税により米国の経済を活性化させると考えているようである。しかし、不法移民の合法化を支持しているが、究極的に市民権を与えることには同意していない。

移民改正の取り組みは完全に崩壊している現状で、新たな不法入国児童問題による「人道的危機」に直面している現在、特に強制送還の問題も含め移民問題に取り組む時であるとする意見もある。13日のAP 通信によると、先月オバマ氏は、米国国土安全保障省(DHS)がもっと人道的な強制送還政策を検討するようDHSの長官であるジェイ.ジョンソンに依頼した後、幾つかの提案を受けたという。其の中の選択肢には少数の不法移民のグループのみが強制送還に影響を受ける提案が含まれている。これらの提案に関し、オバマ氏は、中間選挙前の夏までに下院議会の共和党が何らかの行動を起こすかどうか様子を見ることに決定したという。しかし、複数の共和党議員は、移民改正を支持したカンターが敗北した為、「GOP(共和党)有権者は移民に堅固な姿勢がない議員を処罰する」と恐れているという。少なくとも「今年移民問題は死んだと思う」と述べ「それはオバマ大統領の任期中には終ったとしても驚かない」と語った議員もいるという。

しかし、カンターが予備選に衝撃的な敗北をした夜、オバマ氏は下院少数派民主党リーダーのナンシー.ペロシ、上院多数派民主党リーダーのハリー.リード、昨年6月に包括的な移民改正法案を起草した超党派の8人中民主党の4人、他の移民政策関係者とホワイトハウスで協議を行い、彼らは移民改正に関して「コースを外さない」という方針に同意した。その合意の背景には「政敵に攻撃された後、移民問題の立場を硬化したカンターは、実際、下院議会に法案を持ち込む援助をすることより、むしろ妨害した」とする危惧感があるようだ。移民改正を支持しているマッカーシーが下院共和党の次期リーダーになる可能性がある現在「民主党の希望は強化されてきた」という。しかし、オバマ氏や他の民主党にとって、誰が下院の2番目のリーダーになっても大多数の共和党が「移民改正は危険だ」とおじけづいている状態ではさほど期待はできないため、夏までに議会が何の行動も取らない場合、オバマ氏は以前よりもっとプレッシャーを受けるとAPは指摘している。

移民改正の問題で共和党の一連の態度を観察していると、疑問を感じることがある。不法移民の合法化には同意するが市民権を与えることには難色を示す一部の共和党は、ある意味で政治戦略的な観点から移民改正法を捉えていると思うことがある。つまり、合法化すれば税金を課すことが可能であるが、市民権を与えると投票権まで得る結果になるため、圧倒的に多いヒスパニック系は民主党に投票する可能性が高い。従って、市民権を与える移民改正法は共和党にとって政治的メリットはない。また、軍隊で一定の期間に奉仕した不法移民に市民権を与えることも条件の一つであるが、軍人に南部出身の多い軍隊は保守的でクリスチャンが多い機関である。特定の不法移民に軍隊で奉仕するなら市民権を与えるとする厳しい条件付きである。従って、この提案は非常に多くの保守派に奨励されている。いずれにしても、移民改正に関してオバマ氏はスピーチで請願する以外にほとんど何も出来ないのが現実である。

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