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オレゴン州ポートランドの連邦判事アンナ.ブラウンは24日、連邦政府のノー.フライト.リスト(NFL)に記載された人物の国際旅行を妨げる行為は憲法違反であると判定した。この判例は、テロリスト容疑者またはそれらしき容疑者としてNFLに指名されていたことで、予期しない被害を受けている罪のない人達が連邦政府を告訴したケースである。連邦政府のテロ対策の一貫であるNFLは機密性が高く、問題も多いため論争的である。

ノー.フライト.リストとは、連邦政府が2001年9月11日の同時多発テロ後、ジョージW.ブッシュ政権下で創設されたテロリスト.スクーリニング.センター(TSC)の監督において、民間航空機への搭乗を許可しないテロリスト容疑者またはそれに近い人物の名簿のことである。ブッシュ政権下で作成されたNFLとテロリスト.ウオッチ.リスト(TWL)は引き続きオバマ政権下で継続されている。2009年までには約100万人 がTWL に記載されていて、2007年から32%上昇した。ブッシュ政権時代にNFLに記載されていた人数は不明であるが、25日のワシントン.ポスト(WP)によると、昨年FBIは、500名の米国市民を含めて約20,000人がリストに指名されていると報告した。

NFLは非常に問題があるため論争的で批判も多い。NFLの利用は効力性に乏しいことを示唆する失敗事例があることもその理由の一因である。例えば、2009年12月25日、下着に爆発物を隠してノース.エアーライン253便に搭乗し、自爆テロ未遂で逮捕された犯人はこのリストに記載されていなかった人物である。また、2010年6月21日、ニューヨークのタイム.スクウェアで自動車を爆破した犯人は、その日このリストに記載されたが、53時間後にはエミレーツ航空便に搭乗したことが確認された。NFLに指名されているため、空港の輸送安全局(TSA)担当者は確認できたはずであるが、車爆破のテロ容疑で指名手配されていたにも関わらず、セキュリティ.チェックを無事通過し、飛行機搭乗後に逮捕したという法務執行当局の不手際が発覚した。これらは表面化した一部の例に過ぎないと思われる。

このような重大なテロ攻撃の対処には落ち度がある一方で、罪のない米国市民が予期しない容疑をかけられている為、あるグループは、連邦政府のNFL慣行に挑戦した。WPによると、この判例の原告は4人の退役軍人を含む13人のイスラム教徒であり、「テロリズム関連の犯罪歴はない」人達である。ブラウン判事は24日の判定で、連邦政府に対してNFLの廃止を要求していないが、米国の安全保障を危機に晒すことなく、米国民の正当な手続きの権利を保護する新しい措置を考慮するよう政府に命令した。乗客はリストに指名されている事と、指名の根拠を通知されるべきであるとし、テロリスト容疑者としてリスト上に記載するためには、その証拠が提示されなくてはならないと指摘した。また、リストに指名されているかどうか、また、その理由を知るためのプロセスは「完全に非効力的」であり、旅行者の権利を「著しく奪う高い危険性」があると言明した。

連邦政府のNFLが最も批判されている部分はブラウン判事が指摘した通り、正当な根拠がないことである。リストに記載されている個人は全くそのことを知らない上、その理由を確認することも不可能であり、指名の根拠が不透明である。従って、リストに記載されていることを想像さえしていなかった個人は、ある日空港で劇的なショックを受ける事になる。航空機の搭乗を拒否されるばかりでなく、航空券の経済的損失、及び旅行の目的を果たすことが出来ない物理的ダメージに加えて、「ブラックリスト」に乗せられたことの精神的な傷は生涯残る。13人の原告はまさにこのような体験をしたと思われる。

しかし、連邦法務執行当局は、ブラウン判事の判定に同意していないようである。WPによると、FBIは、リストは22カ国の船長と共有しているとし、微妙な捜査を保護するため、機密は必要であると主張している。批判者は、NFLは政府にとって重要な機密捜査を保護する措置であるが、「証拠を提示することなく無実の国民をテロ容疑者扱いしている」と指摘している。ブラウン判事は、「テロリズムと戦う政府の関心は理解できるが、充分確立された判例での法律は、政府の動機と市民の憲法上の権利とのバランスを図る必要があることを示唆している」と説明した。また政府側は、飛行機だけが旅行の交通の手段ではないと主張したが、ブラウン判事は、憲法は国民には旅行する権利も認めていると指摘した。これに対し政府は、「民間航空会社の旅行はその傘下にフィットしない」と反論し、「NFLに指名されている人達は他の交通手段を利用できる」と主張した。一方、ブラウン判事は、国際旅行の自由は「生命、自由、及び幸福の追求、特に、自由の部分を憲法が保証している」とし、交通手段の選択の制限は論外であることを力説した。

ブッシュ政権のテロ対策の一部はNFLも含めて、イスラム教徒をターゲットにしていると批判された時期もあった。その真意はともかく、搭乗を拒否され、その理由を空港のTSA当局に聞いても知らないと言われるだけという現状を納得できる米国人は、犯罪者を除いてほとんどいないはずである。従って、テロリズム対策と憲法で保証されている国民の権利を保護することのバランスを強調したブラウン判事の決定は道理的であると思われる。この判例は、連邦政府によって最高裁に上訴される可能性があるかどうか不明である。

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