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明日から5週間の休暇に入る寸前の議会の動きは慌ただしい。昨日、下院議会は圧倒的な支持で退役軍人(VA)の医療システム改革法を通過し、下院多数派のリーダーであったエリック.カンターは今日31日、公式に上院議会を辞職した。また、裁判所は、中央アメリカから不法入国した移民の聴聞を加速し、一方、国連は、連邦政府の不法移民の対処方針を懸念し、子供達が米国当局者に虐待を受けている報告があると公表している。特に「何もしない」レッテルを貼られている下院議会は、大事な中間選挙前に長い休暇に入るあせりもあって、事が順調に運ばず皮肉な展開になっている。下院の代表者は31日、一定の資金を定めた国境安全強化法案を論議し、今日中に下院議会で投票するはずだったが、その投票予定を突然キャンセルした。下院は休暇を延期し、明日再度協議に戻ると発表している。(更新:一部修正)

6 月 10日の予備選で新人のティーパーティ議員に衝撃的な敗北をした下院多数派のリーダーであったエリック.カンターは31日の今日、下院議会での送別会で簡単な挨拶を述べ公式に辞退した。彼は挨拶で「一生に一度の特権であった」と述べたが、短いスピーチのほとんどは拍手の騒音で消された。カンターの今後の計画については不明である。

28日、退役軍人上院委員会の委員長バーニー.サンダースは、両党代表者がVAの医療システムを改善するための法案の予算として170億ドルの合意に達したことを表明した。意外にも早く、下院議会は昨日、420対 5 の圧倒的な票差でそのVA法案を通過した。予算については、メディアの情報に一貫性がない。ワシントン.ポストは推定170億ドル、保守派のワシントン.タイムスは160億ドル 、また他複数の情報筋は163億ドルと伝えている。下院は、その法案通過後に早急に上院に送ったと伝えられている。上院議会は、国境問題と人道危機に対処する為、人道的措置を考慮した270億ドルの法案を検討しているが、ティーパーティ議員が投票をブロックしたため、必要な60票に不足し、まだ通過していない。

中央アメリカから既に約57,000人の不法移民児童が入国しているが、裁判所は聴聞のプロセスをスピード.アップする方針である。31日のAPによると、移民の裁判ケースは375,000件あり、多数の移民は最初の聴聞を受ける為1年または数ヶ月以上待っている状態である。しかし、入国管理レビューの司法局報道官は、子供達が受ける最初の聴聞を3週間以内に短縮する新しい裁判工程の計画を伝えたという。しかし、どの裁判所および何人の子供達がこの新たな計画の対象になるかを明確にしていない。これは、グリーンカードや亡命資格を得ることで、合法的に滞在する決定に充分な時間が考慮されていないことを意味している。従って、移民擁護者は 3ヶ月間の待機時間があればプロボノ移民弁護士を得る時間は充分あるが、3週間では何も出来ないと懸念している。

このような移民法の政策に国連は懸念を示している。31 日のロイターによると国連人権高等弁務官のナビ.ピレイは、国境で拘束された子供達の大半は送還するとの米国の方針に懸念を示している。また、米国当局の担当者に多数の子供達が虐待を受けているという報告の調査を促し、子供達を保護するよう要請した。ピレイは「 米国は、ほとんどの子供達を送還することに取り組んでいるようなので特に心配しています」とジュネーブでの記者会見で語ったという。また、「NGO(非政府組織)の訴状には、子供達に対する米国当局者による言葉および性的虐待の報告が約100件あります」と述べた。また、元国連戦争犯罪裁判官は「米国は、緊急に訴状による全ての子供に対する人権侵害を調査し、加害者を厳しく制裁する必要があります」と警告したという。ピレイは、送還は「最後の手段」であるべきであり、本国で保護する保証をしている国の子供達だけを送還するべきであると主張し、米国が国際的な保護を保証するよう要請した。大多数の子供達の送還を宣言しているオバマ政権は、皮肉にも新たなプレッシャーに直面することになる。

一方、このような国連の動きを知っているのかどうかは不明であるが、皮肉にもそのような子供達を早急に送還する為、下院議会は国境の安全を強化する法案について討議した。その法案は短期的なものであり、6.59億ドルの予算が組まれている。東部時間午後2時頃までには、今日中に下院で投票する可能性もあるとして注目されていたが約1時間後、下院議長ジョン.ベイナーは突然投票をキャンセルした。その理由は、オバマ氏が大統領令により、不法移民の家族に米国に連れてこられた子供達50万人に労働許可を与えたオバマ政権の2012年の移民政策を却下していないとのティーパーティ議員の反対意見に直面した為である。このような経緯があった為、投票に失敗した直後、ベイナーは緊急記者会見で、オバマ大統領に対して、移民法に関する大統領令を行使しないよう警告した。2012年の移民政策は、再度大統領令で拡大することは可能である。また、オバマ氏は先日、彼の行政で可能な事を各官僚が探すよう要請している為、議会の休暇中オバマ氏が大統領令を駆使することを恐れているためであると思われる。下院は今日投票に失敗した為、休暇を延期し、明日議会で引き続き法案の討議に戻ると発表した。

下院は今年2月、細切れの移民改正法を通過するチャンスがあった。オバマ氏は、必要な条項が含まれている場合、細切れの法案でも受け入れると公表していたが、下院共和党は、彼らが最も望んでいる国境強化の法案さえ通過する努力を放棄した。下院議会での移民問題の論議は、ほとんど必ず何らかのつまずきがあるが、いずれにしても、議会休暇直前の下院議会は、皮肉な展開を見せている。常日頃から充分な時間をかけ重大な課題を論議していたら、休暇直前のギリギリに討議し、投票するというような無理なスケジュールを組む必要もなく、その為の失敗を避けることも可能である。これもベイナーに統制力と指導力がないことを露呈しているエピソードである。

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