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11月の中間選挙で上院議席を争っている共和党上院議員パット.ロバーツの民主党対抗者チャド.テイラーが競争から辞退することを3日に発表した。上院議席競争での重要な鍵を握るカンザス州の状況が著しく変化している為、民主党が上院多数派の現状を維持する可能性が出てきた。2012年大統領選の投票結果をほぼ正確に予測したサム.ウォングはこの状況を「ゲーム.チェンジ」と表現している。しかし、同州の共和党は、テイラーの辞退は理由が不明であるとして、彼の名前を投票用紙から抹消出来ないと主張している。これは民主党有権者にとって著しい混乱の要因になる。

カンザス州では、8月初旬の予備選挙で強敵であったティーパーティ候補者のミルトン.ウォルフに48対41の票差で勝利した現役共和党ロバーツの唯一の民主党対抗者はチャド.テイラーである。しかし、テイラーは3日、上院議席競争から脱退すると発表した為、テイラーの次に有力な無党派のグレッグ.オーマンがロバーツの対抗者として浮上した。プリンストン大学で経済を専攻し1991年に卒業したオーマンは、その後、商工業用のエネルギー効率の高い照明システムを考案し、環境にやさしい光の概念を生み出したビジネスマンである。上院には無所属で出馬しているが、ネイト.シルバーによると、オーマンは元々民主党であり幾つかのリベラル政策を掲げている。

選挙結果をほぼ正確に予測する人物はシルバーだけではない。もう一人の天才は、1967年に生まれた台湾から移民した両親を持つアジア系アメリカ人のサム.ウォングである 。彼は、スタンフォード大学で神経学の博士号を取得し、現在プリンストン大学の助教授、神経科学者および著者である。彼は、2010年、2012年の上院議席をほぼ正確に予測したことで知られるようになった。彼の予測は実際の投票率を基本にしている為、正確であると言われている。上院で37議席を競った2010年11月の中間選挙では、ネバダ州を除いて全て正確に予測し、2012年の大統領選では50州中49州の投票結果を正確に予測したことで知られている。ウォングはプリンストン選挙コンソーシアム(PEC)のウェッブサイトに選挙予測を掲載している。

ウォングは、3日にテイラーが上院競争から脱退した事で「基本的に、民主党が上院をコントロールする確率は約20~30%上昇する」と述べている。その理由をニューヨーカーに説明している。要約すると(1)ロバーツはカンザス州民にかなり人気がなく、現在の支持率は27%である。州民は「ロバーツ以外の人物に投票することを真剣に考慮」している。(2)無党派から立候補している有力なオーマンは、ロバーツより人気があるため、勝利する可能性が高い。シルバーも同じことを予測し、「オーマンが勝利する可能性は現実的である」と述べている。(3)テイラーが競争から脱退しない場合、民主党有権者の票はテイラーとオーマンに分散するが、テイラーが辞退したため、ティラーの票は全てオーマンが獲得し、現役共和党のロバーツを敗北に追いやる可能性がかなり高くなる。(4)従って、「逆説的にロバーツの政治的未来は、彼の民主党の敵が競争に居残っているかどうかによる。これは接戦が予測される上院議席競争で、共和党の議席が無党派に移ることでパワーのバランス効果が変化する」とウォングは述べている。彼は5日、PECに上院議席予想グラフを掲載し、民主党および無党派が取得する議席は51で、共和党の獲得議席は49であると予測している。従って、今日選挙があった場合、民主党と無党派が上院をコントロールする確率は85%であると予測し、ゲーム.チェンジの状況になったと説明している。

しかし、カンザス州の共和党関係者はテイラーの辞退によるこの「ゲーム.チェンジ」を歓迎していない。カンザス州の共和党長官クリス.コバッチは、テイラーは「脱退の資格がない」と主張し、彼の氏名を投票用紙から抹消することを拒否している。4日のワシントン.ポスト (WP)によると、カンザス州の法律は、候補者が辞退する場合、議員として奉仕することが不可能であることを通知する為、公式の手紙を提出しなくてはならない。テイラーは、その手紙を投票用紙変更の最後の締め切り日である3日に提出していると述べている。しかし、コバッチは、テイラーが州の法律に従って、上院議員の選挙キャンペーンを辞退しなくてはならない事情を知らせなかったと主張している。

一方、テイラーは「昨日(3日)の午後、私は米国上院議員の立候補を終えるので、投票用紙から私の名前を撤回するために必要な手順を問い合わせる為、カンザス州の長官事務所と選挙立法事務ディレクターのブラッド.ブライアントと連絡を取った」と説明している。更に、「ブライアント氏は、私の名前を削除するための手紙に必要な情報に関して、明示的な指示を提供しました。私は、その指示に従い手紙を起草し、カンザス州長官の選挙事務所にその手紙を持参し、米国の上院競争から辞退することを通知しました。私は具体的に、手紙には投票用紙から自分の名前を削除するのに必要な全ての情報が含まれていますかと尋ねたところ、ブライアント氏は『はい』と答えました」と説明している。

コバッチは「全ての弁護士は法律の解釈に全員一致した。テイラーは、投票用紙から彼の名前を削除する事を要請した書面に議員として奉仕することが出来ないことを事前または同時に宣言しなかった為、それは出来なかった」と述べた。また、「これは党とは関係ない。法律は法律だ」と述べ、「テイラー氏は必要条件に適合していない為、彼の名前は有権者の投票用紙に残る」と主張している。 WPは「コバッチは、ロバーツの名誉ある選挙キャンペーン委員会のメンバーであり、政治ゲームはしていないと言い張った」と 伝えている。

11月の選挙日に、カンザス州の有権者の投票用紙には、選挙戦から脱退したテイラーの氏名は記載されたままである為、彼が競争から脱落したことを知らない民主党の有権者は、オーマンに投票せず、テイラーに投票し、貴重な票を失う可能性がある為、著しい混乱と破壊の要因になる。テイラーの辞退は民主党の戦略であり、投票用紙から彼の名前を削除せず、有権者を混乱させることが共和党の戦略であるなら、両側が政治ゲームを行っていることになる。テイラーは手紙をカンザス州長官の選挙事務所に持参し、全ての情報が明記されているかどうかを確認している為、法的紛争に発展する可能性がある。カンザス州の法律は、選挙戦から脱退する個人にその具体的な理由を明白にすることを要求しているのかという点が疑問である。テイラーはその法律を読んでいないか又は、違う解釈をしている可能性もあるが、双方に何らかの意識のズレがあると思われる。

 

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