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米国には妊娠中の女性労働者を保護する強力な法律がない為、辞職に追い込まれるケースが多く常に論争的である。3日米国最高裁は、過去に妊娠中の女性が無給休暇を余儀なくされ、その結果医療保険まで失った為、7月に控訴裁判所に告訴した判例の聴聞を行った。最高裁は1978年10月の連邦政府の妊娠差別法の解釈を明白にし、職場で負傷した労働者を保護する1990年7月に制定されたアメリカ人障害者法に基づいて、妊娠中の女性も一時的な身体障害とみなし、雇用主はそれなりの待遇をすべきどうか決定することが予測される。この判例のユニークな点は、連邦政府の二つの法律に関与する事と、中絶を否定するプロ.ライフ派と選択の自由を主張するプロ.チョイス派が初めて同一線に立った事である。

通常、中絶問題で対立するプロ.ライフ派とプロ.チョイス派はいずれも、1978年の連邦政府の妊娠差別法(PDA)は、妊娠している女性も他の労働者と同等の権利を保護していると主張した原告側を支持した。PDAは、妊娠、出産、それに伴う健康状態を理由に差別することを禁止した1964年の公民権法タイトルVII を改正したものであり、15人以上の従業員を持つ雇用主に適用される。また、母体の生命に危険がある場合を除き、中絶を選んだ女性に医療保険を提供することを免除しているが、身体障害および病欠、例外による中絶からの回復の為、休暇を取る女性に雇用主は医療保険を提供しなくてはならない。プロ.ライフ派にとって、妊娠中の女性の権利を保護することは、中絶を選ぶ女性を減少させることに繋がる。プロ.チョイス派は働く女性の機会の向上を促進するためである。いずれも、原告側を支持しているため、初めてこの二つの相反するグループは共通点を見いだした。

最高裁は今日、第4巡回米国控訴裁判所に7月1日提訴されたYoung v. UPS の判例を聴聞した。民間の郵便配達会社であるユナイテッド.パーシャル.サービス(UPS)に郵便物配達員として、以前勤務していたバージニア州のペギー.ヤング(写真左)は、2007年5月、妊娠中最初の20週間は20パウンド(約9kg)以上、それ以後は10パウンド以上の荷物を持ち上げることを医者に禁止された。ヤングは配達員として採用されたが、彼女の仕事は20パウンドより遥かに重い荷物を持ち上げる必要があった為、 職場の責任者に相談したところ、無給休暇を要求された為、辞職に追い込まれた。結果的に経済的不安定な状況に陥り、最終的に健康保険と年金受益資格を失ったとして告訴した。また、ヤング側の弁護士は、彼女は負担の軽い義務の仕事又は事務的仕事をする意志があったが、それを拒否したUPSは、負傷などの理由により正常な労働能力を失った他の従業員に軽度の仕事を提供している為、妊娠中の女性にも同様の対処をするべきであり、1978年のPDAに違反すると主張した。

UPS側は、他にも妊娠している女性が同等の条件で満足に業務を遂行していた為、妊娠とは無関係であり、彼女は単に能力がないだけであると主張した。また、UPSは1990年7月26日にジョージ·H·W·ブッシュ大統領が署名したアメリカ人障害者法(ADA)に従い、職場で負傷した労働者に対して、健康が回復するまで一時的に軽い仕事を提供する調整を行った。しかし会社は、ヤングの妊娠は職場で起きた負傷ではないとして肉体的に負担の軽い仕事を提供する条件に適合しないと反論した。つまり、UPS側は、医療関係者が妊娠中のヤングの負傷を防ぐ為、20パウンド以上の重い荷物を持ち上げることを禁止することはADA下で認識できる障害ではないため、差別の問題ではないと主張した。第4巡回控訴裁判所は、妊娠による性別的差別はないとしてUPSを支持し、PDAは通常の妊娠中の女性を明白に除外していると判定した。

これと同様の判例が多い為、ヤングの弁護団に上訴された最高裁はこれら二つの法律が関連しているこの判例に強い興味を示し、この判定を聴聞すると決定した。この判例の論争のポイントは、妊娠中の女性にも、職場で負傷し一時的に労働能力を限定する身体障害者と同等の扱いをするべきかどうかであり、一部曖昧な1978年のPDAの解釈を明確にする機会を提供している。なぜなら、妊娠は負傷ではないが、妊娠とは関係なく職場での負傷により健康上の問題がある一般の労働者はADA下で保護されている為、ヤングのように彼女の医者が持ち運ぶ荷物の重量を制限した場合、妊娠中の女性は肉体的に障害がある事と同様であると原告側は主張している為である。

米国では40年以上、妊娠中の女性が職場を解雇されるなどの差別を受けるケースが多数ある。1978年に制定されたPDAは、妊娠を理由に解雇、減給、医療保険の拒否を違法であると明白に定義しているが、雇用主に対して、妊娠中の女性に有給休暇を提供する必要があるのかどうか、どのような場合にどのような対処をすべきであるのか具体的な義務を定めていない。従って、PDAの解釈において対立しやすい状況がある為、紛争が絶えない要因になっている。そのような背景がある為、昨年5月、上院議会は妊娠、出産、それに伴う健康問題のある女性労働者の健康と経済的保障を促進する妊娠労働者公正法(PWFA)を通過したが、下院議会は放置した状態である。最高裁の多数派はビジネス指向である為、第4巡回控訴裁判所の判定を覆すかどうか不明であるが、労働市場に参加している妊娠中の全米の女性、特に経済的に限界のある女性にとって重要な判例である。UPSは会社のポリシーを向上させる為、来年から妊娠中の女性にも肉体的負担のない仕事を提供する意向を公表した。

 

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