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同時に、宗教界がアメリカの政治に与える影響は底知れない。多くの宗教のリーダーは彼らの権限を政治に反映させたいという強い願望を持っていることは過去の出来事が証明している。1960年からカトリック教義および宗教指導者はアメリカの政治に深く関与するようになった。宗教がどのように関与しているかを知ることは、アメリカ政治の性質を知る上で重要である。特に、避妊の問題については歴史上長年にわたり、宗教の指導者が政治家に圧力をかけていることが注目される。

1965年10月4日、ニューヨークの国連本部を訪れたローマ皇帝ポール六世がアメリカの大統領リンドン.ジョンソンと会談するため、始めて米国を訪問。この最初の訪問で勝利を収めたローマ皇帝はその後引き続きアメリカの政治家との会見を持つ。1979年には、南部バプティストの大統領ジミー.カーターがジョン.ポール二世をホワイトハウスに招待し、1987年には、3年前にバチカンと外交関係を築いたロナルド.レーガンが法王とマイアミで会談。1993年及び1995年にはそれぞれクリントン大統領がジョン.ポール二世とデンバー及びニューヨークで挨拶を交換。2005年ジョン.ポール二世が死去する頃までには、アメリカ大統領がローマ教皇と会談する機会は著しく減少したが、ジョージ.W.ブッシュと彼の妻、及び二人の元大統領がジョン.ポール二世の葬式でひざまずいている写真はローマ法王とワシントンの関係が大きく変わったことを象徴している。

1974年3月7日:フィラデルフィア、ボストン、シカゴ、及びロスアンゼルスの4人のローマ教皇の枢機卿は、前年のロー対ウェイドの裁判で避妊を合法的とした最高裁の判決を覆すため、憲法改正を求め、議会の委員会で証言した。ニューヨークのテレインス.コークのカトリックの枢機卿も1976年に同様の証言を行い、再び司教協議会の総長を伴って1981年も証言を行った。

1980年12月4日:4人のカトリック教修道女の遺体がエルサルバドルで発見された。2日前、その4人の修道女はアメリカが支援した何らかの安全保障勢力に誘拐、及び拷問された。この殺人は、アメリカの外交政策をめぐり、新たなカトリックの対立を生んだと報道された。2ヵ月後、新任のアメリカ合衆国国務長官及びカトリックの信者アレクサンダー. ヘイグは十分な証拠がないとして、議会でその殺人について証言することを拒否した。一方、エルサルバドルの大使でカトリック教信者であったロバート.ホワイトはヘイグの主張を拒否した後、大使としてもアメリカの海外サービスの職も速やかに退去させられる結果になった。

1983年5月4日:カトリック司教は国の核兵器防衛政策の道義性について重大な疑問を提起した牧師の手紙を圧倒的に支持した。1986年11月に承認された次の手紙はアメリカ経済の正当性に挑戦する構えを示すものであった。この二つの手紙はアメリカ政府高官の反対を鋭くしかも広範に公表する結果になった。

1984年9月8日:ニューヨーク、カトリック教会の大司教ジョン.オカァナーは避妊の問題でニューヨーク市長およびカトリックの信者でもあるマリオ.クモーと意見が対立した。また、ジョン.オカァナーは、民主党の副大統領候補ジェラルディン.フェラロが避妊に関するカトリック教会の立場を誤って伝え、教会の立場とは矛盾する考えを持っていると非難した。

1996年9月9日:クリントン大統領は、末期症状の病を患ったシカゴのカトリック教会の枢機卿ジョセフ.バーナーディンに大統領自由勲章を授与した。枢機卿は長い間避妊の問題について、政府がカトリックの政治的立場を重視しないことを批判しており、人間の生命は全て貴重である為、胎児を殺すという行為は受け入れられず、法律で保護すべきとの宗教的及び政治的立場を誇示していた。また、枢機卿は死刑に反対する立場を明確にするため、死刑囚を訪れその2ヵ月後、医師が援助する自殺に反対する手紙を最高裁に送っている。

2006年1月31日:サミュエル.アリートは最高裁判事に承認された。これでアリートを含め、裁判官主席ジョン.ロバーツ、クラレンス.トーマス、アントニン.スカリィア、アンソニー.ケネディ、及び2009年オバマ大統領に任命され8月に承認されたソニィア.ソトマヨーなど、なんと最高裁は9名中6名がカトリック教徒の判事で大半を占めている。

上記で紹介した世論調査や専門家の研究は全て、アメリカの政治体制及びアメリカ社会においては信仰が非常に重要な要素であることを浮き彫りにした。信仰を大切とする政治家は右翼又は左翼の政治的イデオロギーを超えて、自分の判断能力のみに頼ることはないと述べている。   前ブッシュ大統領は自らの外交政策の決断を神による指示として正当化した事実があるが、大統領候補になる主な人物は信仰問題を避けては通れない。

現在アメリカの政治に最も影響を及ぼしている勢力は、先に述べた宗教原理主義と福音主義である。この2つの主義は場合によって、同じような意味又は重なりあって解釈される場合もあるが、いずれもこのような勢力は時代と共に益々強固になっている様相がある。プロテスタントに属するグループが唱える宗教原理主義は、1800年代に世界各地で広がった禁酒運動もキリスト教原理主義の保守的動きが背景にあり、その後、1859年の著作、種の起源でチャールス.ダービンが聖書の創造説に真っ向から挑戦した時代の頃から、その様相が鮮明になっている。もちろん、プロテスタントのグループには現実に即した科学性を宗教に取り入れる近代派もいるが、1920年代のスコープ対テネシー州の裁判は、伝統的な信仰を生活基盤にし、聖書の教えつまり、創造説の教えを断固として貫きとおすグループによる宗教原理主義が背景にある。各種の宗教の中でこのような原理主義に近い宗派にはプレスバイテリアン派、又は長老派でプロテスタントや南部のバプティストなどがある。

世界第二次大戦後、急速に伸び始めたグローバリズムの資本主義経済で、アメリカの一般の生活水準が向上するに従って宗教への意識も高まり、様々な体系を持つ宗派が台頭し始めた。このような中産階級の人々は、自らの宗教の原理を根本に社会の平和や正義を政治に反映させる権利、つまり、宗教の権利を主張するようになった。福音主義も同様、保守的なプロテスタントのキリスト教信者であり、進化論を支持し、キリストの超自然的教えを強調しないリベラルなプロテスタントとは対称的な性質を持つ。保守派プロテスタントが強烈に反対する政治及び社会問題は避妊や同性結婚の問題であり、歴史的に主な論争の的になっている。

この福音主義のプロテスタントに強力な支持を受けた時代の民主党の大統領には、フランクリン.ルーズベルトやハリー.トルーマンも含まれるが、1984年から2004年までは圧倒的に共和党が多い。2001年に43代大統領に就任したジョージ. W.ブッシュは圧倒的に白人保守派福音主義のプロテスタントの支持を得、2004年の再選で彼らの78%の支持を得ている。 この事は「宗教の権利又はキリスト教の権利」を最もアピールするブッシュ大統領の外交政策、特に「テロリズムに対する戦争」を含む中東政策に強い支持を示していることが理解できる。福音主義のプロテスタントはむしろイスラエルに同情的で、イスラム教を最も暴力的な宗教として解釈している可能性がある。逆にカトリックの司教、国内教会協議会、及び黒人のプロテスタント宗派などは公的にイラク戦争を反対していると学者は述べている。アメリカの宗教と外交政策を含めた政治の関わりはかなり深い。

 

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参考文献

 

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Hartman, John., 2007, Public Acceptance of Evolution by Science Magazine, Jon D. Miller, Eugenie C. Scott, Shinji Okamoto, (http://richarddawkins.net/articles/706, 2010.1.31)

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http://pewforum.org/world-affairs/countries/?CountryID=222.

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