アメリカの最新課題 Contemporary American Issues © 2016 Yuko’s Blog. All Rights Reserved.  

2009年10月の最近の結果は、教育への取り組みが強調されてから教育プログラムの全国査定による数学の成績はNAEP以前の時期に比べると早い前進がみられる。しかし、未だに、黒人やヒスパニック系の学生に学力査定基準に達していない生徒が多いことが教育者の間で懸念されている。しかも、NCLBの狙いは白人と黒人及びヒスパニック系の学力差を無くすことであるにもかかわらず、数学及び読む能力の差は依然として変化がない。

NCLBが問題となっている点は他にも多々ある。2009年10月15日の ニューヨーク.タイムスの記事によれば、この法は最初から人気がなく、特に教育の目的が試験のための授業になる傾向にあるため、教師組合の間で反感をかわれている。その為、ユタ州が先導し、幾つかの州がこの法に反対する構えをみせている。2007年には重要な民主党の選挙区民である組合の教師らがこの法を封じ込む運動を起こしたが、2008年の選挙キャンペーンに入ってから進展をみていない。

多種の民族的違いによる学力差が見られるアメリカの教育現場では、教師の専門知識や学歴など、資格の問題は教育現場での向上に欠かさない重要な要素である。ある教育団体の専門家らは過去の研究をとおし、貧困からくる学力のギャップは、教師の能力と情熱により埋めることができるが、難しい問題として、質の高い教育者になるためのスキルと機会が乏しいことをあげている。

NCLB 法により政府が規定した質の高い教師とは、教師の免許を持っていること、4年大学を卒業していること、本人が教える科目の知識があることなどが含まれるが、更に、新任の中学校及び高校教師の場合、州が実施する科目試験に合格する必要がある事が明記されている。優れた教育を目指す同盟の報告によると、高校のクラスの1/4は、教師が自ら教える課題を専攻していない。貧困家庭や小数民族の生徒が多く通う学校では未経験の先生や教師の資格を持たない先生が採用される可能性もある。事実、クラスメートのある女性は香港で生まれ、十代で渡米し数十年、カリファルニアで暮らしているが、大学を中退後まもなく地元の小学校で2006年に教師として雇われた事例がある。

また、専門家は教師が絶え間なく生徒の学業向上に努めながら、自らのスキルを伸ばすためには最低3年から7年間同じ学校に踏みとどまることが必要であるが、ほぼ50%の新しい先生は5年以内に退職するか、別の学校へ転職すると述べている。問題は、質の高い教師は学業の高い学校に集中する傾向があるため、生徒の成績に学校間格差があることであり、依然として、入学者の30%以上は貧困の家庭の生徒で占める学校が多数あることである。

オバマ大統領は、選挙キャンペーン中、教育水準の向上に向けた連邦政府の目標をアピールしながらも、NCLB 法には改正しなければならない弱点があることを指摘した。オバマ政権が提案している新たな教育改革プログラムは、TIF (Teacher Incentive Fund)と呼ばれ、教育省の報告によると、貧困家庭の生徒が多く存在する学校を主な対象として、学力向上のためのプログラムの開発と導入にかかる費用を教師や校長に報酬金として支払う計画である。TIFのゴールは (1)教師と校長の有効性を上げることにより、生徒の学業を向上させる。(2)教師及び校長への報酬システムを改正することで、生徒の成績を上げた教師及び校長に対して報酬を与える。(3)難しい科目にハンディのある生徒や、貧しい生徒及び少数民族の生徒を教える有力な教師を増やす。(4)持続可能な学業向上を基盤にした報酬制度を構築することである。

アメリカの素晴らしい点は教育が誰にでも開かれていることである。例えば、アメリカで生まれた子供は、たとえ両親が不法に入国していたとしても、アメリカ人としての市民権が認められる。従って他のネイティブと同じ教育を受ける資格を与えられる。アメリカの教育の現状を批判的に分析して考えた場合、移民で英語を母国語としない両親から育てられた子供は、教育上の環境に恵まれず成長することになる。白人と比較した場合、最初からハンディがあるため、学業結果に格差があるのは当然である。今後の最大の課題は、各州が定める教育水準に達しないアフリカ系アメリカ人、ヒスパニック及び英語にハンディを持つ生徒や貧困の家庭の子供が多い学校に個別にスポットをあて、問題のある生徒の声も反映させながら、プログラムの改善を図るべきである。

子供にとって、質の高い教師とは、どんなものだろうか?2009年9月にワシントン.ポストが掲載した複数の高校生のエッセイによると、彼らにとって本当に良い先生とは、教えることに情熱を持ち、教える課題に深い関心をもっていること、自分の教えることを生徒が理解しているかどうか、試験などの準備ができているかに気配りすること、クラス.ディスカッションなどでクラスの参加意欲を高めること、教師に頼りすぎず自力で勉強できる訓練をすること、生徒の質問や意見を辛抱強く聞くこと、生徒の立場になって複雑な概念を明確に教えること、クラスの内外で学生が抱える問題を助けてあげることなど忌憚のない意見を述べている。学生は真の教育の理想論を述べている。

現在色々な教育問題を抱えているアメリカではあるが、1950年から1990年代にかけて、教育者の間でも真の教育とは何か、盛んな論議が行われていたようだ。1940年代シカゴ.ディリー.ニュースのジャーナリストで、後半に教育者として名誉博士の称号を受けたシドニー.ハリスは、自身が教育者であった頃の体験を紹介しながら、真の教育の意味について、真の教育とは何をすべきかというで大変味のある比喩を用いたエッセイを次のように書いている。

ソーセージは皮に中身をたっぷり詰め込んだものだが、蓋を閉じた真珠貝は中に貴重で美しい真珠を秘めている。蓋を開けることにより、その美しい真珠を取り出すことが可能である。ハリスは、ソクラテスが2000年前から、情報は人間に詰め込むものではなくむしろ、その人間が何を考えているのか引き出すことだということを知っていた教訓を例に挙げ、教育は詰め込むことではなく、本来生徒が秘めている中身を引き出すことであると述べている。ハリスはまた、19世紀後半から20世紀中頃まで、有名なアメリカの教育者及び作家であったエディス.ハミルトンが述べたことを引用し、プラトンが書いたソクラテスの対話篇メノの中で、無知な奴隷の少年がすでに実は幾何学を知っており、その少年はその知識が試されることを待っていただけであった事実を証明した驚くべき観察力について語っている。

教育の中身について、どのように教えるべきか盛んな討議や論議や繰りかえされているが、生徒の知っていることをどのように引き出すかの議論はなされていないため、無駄で結論がでない。ハリスが出会ったある大学生は、彼のクラスで講義後、勉強に相当時間をかけているにも関わらず何も学んでいないと訴えたことがあるが、これはまさにソーセージ詰め込み式の教育に満足していないことを赤裸々に表現したものであるとハリスは述べている。この学生は消化できないほどの大量な情報を詰め込み、その詰め込んだ様々な情報を、自分自身の思考力を駆使して分析し、合成化し、評価するため引き出す時間もなければ、引き出すチャンスも与えらない。

ハリスは真の教育の目的は、知識を十分詰め込まれた劣等生を作り上げることよりむしろ、すべての人間に隠れた面を引く出すこと、すなわち、心を開き、暖かい心で人間であること、又人間としてすべきことの道理の法則と内面に隠れた知識を引き出すことである。生徒はソーセージというよりむしろ真珠貝である。教師の仕事は中身を詰め込んでシールをするより、豊かな中身を引く出すことができるよう助けることである。情熱とねばり強い態度で臨み、どのように生徒を耕すのか知ってさえいれば、我々一人ひとりの内側に真珠は隠れている。このようなことを意識しながら教壇に立つ教育者はどれくらい存在するのか疑問である。

 

—————————————————————————–

参考文献

Problems with the U.S. Education System. Washington Profile. http://www.washprofile.org/en/node/1894

Murray Thomas. “No Child Left Behind—A Progress Report”. Britannica Book of the Year 2006

“Teaching Reading Is Rocket Science: What Expert Teachers of Reading Should Know and Be Able to Do”. A Union of Professionals AFT Teachers. June 1999.

Elementary & Secondary Education: Key Policy Letters Signed by the Education Secretary or Deputy Secretary.April 3, 2008. http://www.ed.gov/policy/elsec/guid/secletter/080403.html “No Child Left Behind Act”. Now York Times. October 15, 2009

Thomas M. Smith, Laura M. Desimone, Koji Ueno, “Highly Qualified to Do What? The Relationship between NCLB Teacher Quality Mandates and the Use of Reform-Oriented Instruction in Middle School Mathematics”, Educational Evaluation and Policy Analysis, Vol. 27, No. 1 (Spring, 2005)

“Finding and Keeping the Teachers We Need”. Alliance For Excellent Education. Fact Sheet: February 2006

Teacher Incentive Fund. U.S. Department of Education. http://www.ed.gov/programs/teacherincentive/faq.html

Adam Turay. Students: What Makes a Good–and Bad—Teacher. The Washington Post. September, 2009. http://voices.washingtonpost.com/answer-sheet/teachers/students-what-makes-a-good–an.html

Mary C. Fjeldstad. The Thoughtful Reader. Library of Congress Catalog. Harcourt Brace & Company. 1998.

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。