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このようなアメリカ社会を反映してか、1980年代から盛んに英語を国の公式言語にしようという論争が行われている。英語を国の公式言語にするという意味は、公的機関の共通語は英語であり、英語で意思伝達を行うことを義務づけることである。しかし、家族や友人との個人的談話において他の母国語の使用を禁止するという意味ではない。アメリカは移民で始まり移民で構成されている社会であり、歴史的に政府は民族文化の多様性を奨励する傾向があるため、移民人口が増大するにつれ、当然多数の言語が存在する。現在アメリカでは約300種類の言語が日常茶飯事に話されている。移民の数が最も多いのはヒスパニック系であるため、英語の次に最も良く話されている語学はスペイン語である。2000年の人口統計によると1990年代のアメリカ全体の人口の2億8千万人以上に対して更に13%伸び、約3,050万人が外国で生まれた移民である。1990年から2000年にかけてアメリカでのヒスパニックの人口はほぼ60%増大している。

又、多様な言語に関する2006年の連邦政府の人口統計によると、5歳以下の子供を除くアメリカ全土の人口は約2億8千万で、英語のみを話す人口は約2億2千万である。英語の次に最も多く話されているのが、スペイン語で3,400万人、次が中国語で249万人となっている。中国語に続いて、フィリッピンの言語であるタガログ語は142万人、次にフランス語139万人、ベトナム語121万人、ドイツ語1,14万人の順になっている。

1982年当時、上院議員であったサミエル.ハヤカワ氏により、移民法の憲法改正を基本にして英語を国の公式言語にしようという提案が紹介されたのがきっかけとなっている。以後、議員も含めこの発想に賛成する人たちと反対する人達の意見が対立している。対応は各州でそれぞれ異なり、是非をめぐる論議は延々と続いている。この提案に賛成する人たちの共通する意見は、(1)ひとつの共通した言語のもとに、連帯感が生まれ団結することができる。(2)英語は世界で最も重要且頻繁に話されている語学であるため、この案の制定は移民がもっと真剣に英語を学ぶ動機になる。(3)二ヶ国語教育も含めた公的機関が提供する資料の翻訳に、国民の税金を使用することを納税者は好まないというのが主な理由である。

最初の理由についてハヤカワ氏は、言語は人々を結ぶ道具である。ひとつの言葉を話すことにより、社会はひとつにまとまると次のように歴史の例を引きながらと述べている。小さな国であるベルギーは国民の半分がフランス語を話し、他の半分はスラマン語を話す為、国が完全に対立している。スラマン語を話す国民はフランス語を話す国民を嫌い、フランス語を話す国民はスラマン語を話す国民を嫌っている。カナダの例を挙げれば、フランス語を話す人々は、彼らは少数民族だという事実に偏執的な感情を抱き、英語を話す大多数の国民に馬鹿にされていると思っている。スリランカの例でも明らかな様に、スリランカの語学であるシンハラ語を話す人々とインドの言語であるタミル語を話す人々との間で紛争が続き、多くの人口がインドからスリランカに移動している。インドの歴史を見れば分かるように、1957年から1968年の間の暴動で100万人が殺された事件は言語や文化の違いが国を二分した事が大きな原因である。

英語の重要性と移民が英語を学ぶ動機を強調する人達は、移民の多くは英語を話せないと主張する。例えば、ロスアンゼルスなどのように大都市のヒスパニック系アメリカ人や移民が大半を占める西海岸地域で、英語を学ぶことも話す意志もないグループが存在する。これは社会に融合しないことを意味し、移民に対して嫌悪感を抱かせる原因になるというのが連帯感を強調する人達の意見である。

また、グローバル化に視点を向けた意見として、現在、外国の指導者はほぼ全員が貿易、技術、学術、外交、ビジネスで世界経済の担い手として、世界中の人々との交流と意思伝達を行うため英語を話している。他の西洋社会は彼らの語学を保護している。例えば、誇り高いフランス人に順応して、フランス.アカデミーは熱烈に教室やメディアでの語学の使用をモニターしている。ロシアでは、語学及び文学省の正字委員会が適切なロシア語の使用を保護するため定期的に会合を開いている。しかし、英語はその文化のエリート層に保護されていない。それどころか、アメリカの大学のキャンパスでは、特に読み書きにハンディのある卒業生がこの提案を批判している。従って、アメリカは国の独自性、文化遺産、及び政府の体制を失う前に英語を公式語として採用する必要があると主張している。

最後の税金に関する意見はもっとも明白で簡単な理由である。2009年1月のニューヨーク.タイムスは、テネシー州ナッシュビルの有権者が英語をアメリカの公式語学にする案を拒否したことを報じた。記事によると、市長、市民権運動の活動家、経営者クラス、牧師、及び9つの教育機関の頭取などの連合グループがこの案に反対しているが、地元議員でこの案を支持しているエリック.クラフトンは移民に英語を学ぶことを奨励すれば、翻訳やその他の関連費用の10万ドルを倹約できると主張した。

また、連邦政府は、二カ国語併用教育、多様母国語による投票システムと運転免許取得、及び学校や病院での翻訳経費などを税金で賄うことより移民の母国語を機能させるため、移民に容易な対策を採っている。彼らの母国語にたいして最も必要なサービスを提供することは納税者にとって非常に負担が重く、更には移民を言語的に孤立させる結果になる。特に税金の問題がこの提案を支持する主な理由である。

この提案に反対する人たちの共通する意見として、(1)アメリカは元来、マルチ.カルチャリズム を信望する国である。(2)最近の移民のほとんどはすでに英語は学んでいるし、ほとんどのアメリカ市民は英語を話すので語学に関する立法は必要ない。(3)健康管理と安全性の面において、危険度が増大するなどの3点があげられる。

まず、最初の理由に基づいて、英語を公式語にする事を反対する人たちは、アメリカは多様文化の国であり、多様な言語や文化遺産及び伝統を重んじることが自由な国アメリカの特性であるため、英語のみを国の公式言語にするという発想はその伝統に反するものであり、移民に対する人種差別でもあると述べている。多種の言語が存在することはアメリカを更に多様化し、斬新的であり、世界的な外交を有利にする。また、二ヶ国語又は三ヶ国語併用の教育を採用している国は多数あり、その国の子供たちは1カ国語以上の言語を流暢に話しながら成長すると指摘している。(続)

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