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民主党の上院多数党院内総務であるハリー. リードは英語を国の公式言語にするという案は人種差別主義者的であり、基本的にはスペイン語を話す人達に向けられたものであると述べた人種差別発言がワシントン.タイムスに報道された。また、ニューヨーク.タイムスの記事は、リード上院議員が、英語を国の言語にするという提案は、すべての政府の印刷物とビジネス活動を英語だけに絞ることになる。従って、如何なる政府の役人も英語以外の言語で行動し、意思伝達を図り、又はサービスや資料を提供する権利はないことになる。このような結果になった場合、これまでなされた二カ国語採用の努力が無駄になる、英語を話さない人達に対して人種差別の原因になりかねない、移民人口の地域社会で緊急手術が行われる場合の障害になり、他の意図しない結果が生じる可能性などが最も懸念されると述べたと報じた。

二つ目の反対理由については、英語を学んでいない移民が多いという意見に対し、次のように反論している。歴史的にみても、移民の最初の世代は完璧な英語を学んでいないが、彼らの子供や孫たちは学んでいる。従って、時間を与えるべきだ。また、グローバル的な視点で、英語を公式語にすることを支持する意見に対する反論としては、英語はすでにビジネス上、グローバルな語学である。我々は英語プラス他の言語を考慮する利点を理解する必要がある。英語はアメリカ人にとって最も重要な語学ではあるが、他の言語を知ることの価値は計り知れない。また、英語のみというような傲慢な態度では、南アメリカで発展している経済開拓の領域で欧州共同体に対抗するチャンスを閉ざすことになると反論している。

最後の移民の安全性を問題にする人達は、過去の事例を引きながら、英語を理解していない事が主要因で起きたけがや死亡事故について、多国籍語のコミニュケーションがどれほど大切であるかを強調している。例えば、危険地域などで、危険を表示する注意事項が多数の言語で表記されていれば、英語を容易に読みこなせない移民にとって、即時の状況判断が可能になるため、危険に晒される可能性がないという事である。

結論として、アメリカ合衆国は、英語を国の公式言語として定めた歴史はない。事実1981年、上院議員のサミエル.ハヤカワが英語を国の公式語とする憲法改正を提案するまで議会も英語を公式に国の言語にすることを考慮した例はない。また歴史上、語学が人類を統一した例は少ないが、例え同言語民族間であっても、資源の不足などを原因とした生存競争の紛争は数多く存在した。

マルチ.カルチャリズムの議論では、他民族の政治、宗教、文化の特有性なども含めて、その受け止め方は個人においても時代においても常に推移がある。移民に対する嫌悪感、人種偏見、及び人種差別は、英語の流暢度とは無関係のものである、というのが多くの移民が体験から得た実感である。実際、様々なブログにこの提案について反応する人達の声が掲載されているが、ある女性はロシアからの移民として、10年以上アメリカに住み完璧な英語を話すが、アメリカで移民を嫌う人々の態度は語学とは一切無関係であると述べている。

また、多様な文化に対する国の態度も時代と共に変化する。1820年以前の移民には書類の審査はなかった為、誰でも自由にアメリカに移住できた。移民法により合法的、又は不法的に入国した移民の区別が明白にされるようになった歴史はまだ浅い。フロリダ国際大学の教授ステファン.フェインは、マルチ.カルチャリズムはアメリカの独自性を理解する伝統的な方法であるメルティング.ポットの発想に対する反応として進展したと説明している。アメリカ社会を沸騰点に達したポットに例えれば、その中に投げ込まれた移民は混合し、融合されるので彼らが以前保持した文化と民族的特性は失われ、真実のアメリカ人になるということらしい。メルティング.ポットの発想は1800年代の終わりから1900年代の初めに人気があり、多くの移民又は彼らの子孫は一般的なアメリカの文化を採用してきた。様々な文化的背景のある人達が寄り集まった社会であっても、本来自分たちはアメリカ人だと信じることがメルティング.ポット思想の基本概念である。

しかし、1950年以降から、メルティング.ポットに対抗する新たな考えが生まれた。それはおおきなボールに多種の材料を混ぜ合わせたサラダをイメージするように、違った文化や民族のグループが個々の特性を失うことなく、ひとつのボールに収まることを意味するとフェイン教授は述べている。この新たな発想が人気を得た1960年から1970年代にかけて、アメリカのおおくの地域で二カ国語教育が強調されるようになった。アメリカ合衆国憲法改正第十四条でも少数民族の教育の権利を保証しているため、二カ国語教育は、特にヒスパニック系やアジア系アメリカ人の人口が多い地域では非常に重要である。1968年には、アメリカ国内で英語を話す能力に限界がある多くの子供たちに特別必要な二カ国語教育のプログラムを開設するため連邦政府が資金を提供している。また、中国語を母国語とするサンフランシスコの学生が英語を話し、理解する能力がないという理由で入学を拒否され、学校管区に訴訟を起こした判例として知られる1974年のラウ対ニコルズで、アメリカの最高裁は、英語を話さない学生にも特別なプログラムを提供するべきであるとの判決を下している。

今日、二カ国語教師が不足している点や、経費がかかることなども問題が多く、二カ国語教育についても引き続き論議が繰り返されている。多数の学者がグローバリズム時代における英語の重要性と影響力を強調する一方で、多様な民族が存在し、多数の言語が語られる国アメリカが抱える英語の問題は想像以上に複雑である。

 

参考文献

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