アメリカの最新課題 Contemporary American Issues © 2016 Yuko’s Blog. All Rights Reserved.  

アメリカは様々な人種の移民で構成されている世界でも最もユニークな国である。最初のアメリカへの移民は1600年の初期に始まり、1800年初期から1930年代にかけて移民の数はピークに達した。その後も、時にはゆっくりと、そしてあるときは急速に増え続けた。

アメリカに移住する人たちのカテゴリーには、大まかに分けて5種類あり、一番多いのが市民権を持つアメリカ在住の妻又は夫、両親、未婚の子供などの移民である。次に多いのが、兄弟及び姉妹などの家族で、三番目に多いのが難民である。次に労働関係者、最後にその他の理由による入国者である。このように分類がはっきりしている移民はほぼ合法的に入国した移民である。一方、不法滞在又は合法的な書類のない移民数は確認されていない為、移民問題は複雑化し、米国の移民法は機能不全の状態である。

近年、合法移民に関する論争はほとんど提起されないが、10年前の合法的移民についての討論は基本的に2つあり、そのひとつは、移民の数は減らすべきか? もし、減らす必要があるなら、どのような方法で減らすべきかという観点である。合法的移民の数を減らすべきだと主張する人たちが移民に反対する主な理由として、経済的、環境的、及び文化的な側面から移民はアメリカにマイナスの影響を与えると主張している。

移民に反対する人たちのその経済的な理由として、教育を受けていない、特別なスキルもない外国人労働者は、低賃金でスキルを必要としないアメリカ人の労働力を奪っていると主張している。そのような仕事は、多くの貧しい黒人および開拓時代にアメリカに渡ってきた移民に奪われているということをしばしば意味する。この議論は決して新しいものではなく、100年も繰り返されている議論である。何の技術もなく、高度教育を受けていない多くの移民は同じ仕事をアメリカ人より低賃金で引き受ける傾向が強いため、結局、移民が平均賃金を下げてしまうので、貧しい階層のアメリカ人に著しい影響を与えるという。二つ目の経済的理由として、政府が移民に対して提供する費用がかかりすぎるという主張がある。10年前の、ハーバード大学の推計によると、年間に300億円から500億もかかり、これは移民が支払う総税額よりコストがかかっていると報告されている。

一方、現状のままでいいと主張する人たちは歴史的観点から、移民はアメリカの経済と社会的向上に貢献している為、移民の数を減すという考えはよくないと反論している。移民を支持する人たちの意見は「移民は生産性より、コストの方がかかる」という経済的理由を真っ向から否定している。なぜなら、アメリカの経済は移民の労働力で成り立っていて、彼らの貢献がアメリカ社会を豊かにしていると主張。高い技術力を持つ移民は、コンピューター業界やマイクロチップの製造業では必ずと言っていいほど、アメリカ人のために新たな仕事を創造していると述べている。

移民に反対する人たちの環境的な理由は非常に簡単なものである。アメリカの人口は増えるばかりで、このままの速度で人口が増えると、2050年までには5臆人に達するといわれている。人口の急激な増加に伴う一般的な懸念は、水やエネルギー等の資源に加え、住宅、学校、及び医療など他のサービスにおけるスペースが不十分になるということである。

水やエネルギーなどの資源が枯渇するかもしれないとの反対意見にはある程度理解できる部分もあるが、スペースが不十分であるという主張には同意できない。アメリカは想像以上に広大な国であるからだ。実際、2007年の夏、カリフォルニアから約1ヶ月かけて、ドライブによるアメリカ横断の家族冒険旅行に挑戦し、この機会に、ネバダ、ユタ、ワイオミング、ネブラスカ、ミズーリ、カンザス、イリノイ、インディアナ、ケンタッキー、テネシー、ノース.キャロライナ、サウス.キャロライナ、バージニア、ワシントンD.C、アーカンソー、オクラホマ、テキサス、ニューメキシコ、アリゾナ州を通過するか、または滞在するなどの経験を通して、この国がいかに広大であるかを知った。ドライブの最中、目前に迫る風景の70%は、宅地でもなく、農地でもなく、また森林地でもない壮大な空き地ばかりで、何度もため息をつきながら、移民の数がこれ以上増えるとスペースが無くなるという論理は空論であると思ったことがある。

最後の反対理由としての文化的観点は興味深い。共通意見として、移民は英語を理解しないし、勉強する意思もない人が多いということである。アメリカ草創期の偉大な政治家及び発明家であったベンジャミン.フランクリンも1753年にドイツ移民に対して、似たような苦情を述べた事実があることは歴史家の間で良く知られている。ほとんどの移民は彼らの国の言葉や文化をあきらめようとはせず、アメリカ社会に融合する努力はしない。アメリカに住んでいても、自国に住んでいるような感覚で生きていく傾向が強いという見解が移民に同意できない理由のようである。

しかし、移民に賛成する人たちは、語学の問題をそれほど重要だとは思っていない。1640年代さえ、ニューヨークで語られていた語学の数は18種類あるとの情報もある。また、歴史月刊誌アトランテック. マンスリーによると、アメリカの革命当時、13の植民地全体の人口の1/5は英語が話せず、少なくとも50%はアングロサクソン系ではなかった。世界から移住した長い移民の歴史があるにも関わらず、英語をアメリカの公的語学にする運動を推進しているアメリカ合衆国英語組織団体の議長であるマウロE.ムヒカ氏は1990年当時、すでにアメリカの住人の97%は英語を話すと報告した。

移民は満足できる範囲で英語を理解できない場合もある。アメリカで生まれた子供たちの大半はアメリカの教育を受けるため、英語を学ぶ環境はある。しかし、私があるクラスで出会った女性は、両親がメキシコからの移民で家庭ではスペイン語で育った為、英語の授業は難しいと嘆いていたことを思い出す。家庭では母国語を学び、学校では英語を学んでいるため、2ヶ国語が話せる事に、むしろ誇りを持つべきである。

移民にたいする総体的なイメージとして貧しいという観念を持っている人達が今でも存在するが、貧困問題はアメリカ全体の問題である。特にここ数年の景気低迷により、益々その貧困度は加速している。突然、仕事と家を失い、行き場に困った人口層が近年増えているのは、アメリカも日本も同じような状況にある。

世界には一日1ドルで生活している人口が1億人いるといわれている。アメリカには、補助的 栄養支援プログラム(SNAP)と呼ばれる貧困および低所得者を援助する連邦政府のプログラムがある。これは2008年にフード.スタンプ.プログラムの名称を変更したもので、政府が発行する援助金制度である。連邦政府は貧しい家庭の栄養供給を高める意図からSNAPに名称変更したが、各州はそれぞれ独自の名称とシステムによる援助プログラムを導入している。

さまざまな角度から調査し、このような援助を申請する家庭が貧困とみなされた場合、フード.スタンプの受給が可能になるが、この国の貧困の定義はどんなものだろうか?アメリカ商務省の人口統計局が2009年9月に発行した情報によると、アメリカの景気後退は2007年12月から始まり、2008年までに65歳以上を除いた人口層の中間所得額は大幅に減少し、この傾向はアメリカ全土に拡大した。18歳以下の子供及び64歳までの人口層の貧困率が増えている。

人口統計局によると、アメリカが定義する貧困とは収入が一定の貧困ラインとして定めた金額より低い状態を貧困という。収入とは課税前のネット収入であり、利益、失業保険、労働保険、社会保険、公的補助金、生存者手当金、年金、退職金、株の配当金、賃貸料、特許権使用料、財産、信託物件、教育補助金、扶助金、子供の養育費などの収入が含まれる。

貧困ラインは、家族の人数及びそのメンバーの年齢を含めた家族構成により定められており、最新のインフレーションを基盤にした都市消費者価格指標(CPI-U又はConsumer Price Index for All Urban Consumer)を用いる。貧困ライン算定の主な目安は家族が食費にあてる割合で決められる。また、貧困ラインの定義に属しない人又はグループには〔1〕扶養を受けている15歳以下の子供、〔2〕刑務所又は療養院などの施設に入っている者、〔3〕軍隊兵舎に属している者、〔4〕通常の家を持たずに生活している状況にある人などである。

18歳以下の子供のいる家庭を対象にしたその家族構成の2008年度の貧困ラインは下記の表に示す通りである。

家族構成及び18歳以下の子供のいる世帯の貧困所得ライン

家族構成 平均所得 18歳以下の子供のいる世帯の所得
   0    1人    2人    3人    4人    5人
1人 10,991
65歳以下 11,201 11,201
65歳及び65歳以上 10,326 10,326
2人 14,051
65歳以下の世帯 14,489 14,417 14,840
65歳以上 13,030 13,014 14,784
3人 17,163 16,841 17,330 17,346
4人 22,025 22,207 22,570 21,834 21,910
5人 26,049 26,781 27,170 26,338 25,694 25,301
6人 29,456 30,803 30,925 30,288 29,677 28,769 28,230
7人 33,529 35,442 35,664 34,901 34,369 33,379 32,223
情報源:  U.S. Census Bureau. http://www.census.gov/hhes/www/poverty/threshld/thresh08.html

この表をみると、18歳以下の子供が二人いる5人家族の貧困ラインは年間26,338ドルであることが分かる。従って、人口統計局はつぎのような計算例を提供している。仮にこの家族の収入は下記のように$27,000である場合、

母:  $10,000

父:     7,000

祖おじ:$10,000

第一子:           0

第二個:           0

家族の合計収入:$27,000

収入と貧困ラインを比較すると、収入÷貧困ライン=$27,000÷$26,338=1.03である。従って、この家族は貧困ラインの金額より収入が多いため、貧困には属さない。逆に同じ家族構成で収入が$26,338より低い場合、貧困と定義される。当然、飢餓状態に近い家庭は貧困ラインであると判断されている。

このような基準をベースに、当局は2008年のアメリカの貧困率は13.2%で2007年の12.5%に比較すると増大したことを示している。2008年の貧困率を人種別にみると、白人が8.6%で2007年の8.2に比較して0.4%増えている。アジア系アメリカ人が2007年の10.2%から2008年の11.8%に増加し、ヒスパニック系は2007年の21.5%から2008年には23.2%に増えている。黒人の場合、24.7%で2007年から変化はない。人種別にみる貧困度の比較は、小数民族の中でも黒人が最も影響を受けていることを示している。年齢別に見た場合、65歳以上は9.7%で2007年から変化はないが、18歳から64歳までの範囲では2007年の10.9%に比較して、2008年には11.7%に増えている。

 

参考文献

——————————-

How the Census Bureau Measures Poverty (Official Measure) U.S Census Bureau. http:// http://www.census.gov/hhes/www/poverty/povdef.html#2, September 29, 2009

“Income, Poverty, and Health Insurance Coverage in the United States: 2008”. U.S. Department of Commerce Economics and Statistics Administration. U.S. Census Bureau. September 2009.

Jack Martin & Stanley Fogel. “Projecting the U.S. Population to 2050: Four Immigration Scenarios”. The Federation for American Immigration Reform. 1. Dec. 22, 2009

King, Robert D. “Should English Be the Law?” The Atlantic Monthly. April 1997

Richard Wolf. “Food Stamp Loss Takes Its Toll”. USA Today. January 28, 1998

Roy Beck. A Nation of Too Many Immigrants?. Washington Post. www. Washingtonpost.com/wp-srv/style/longterm/books/chapl/againsti.htm. July 9, 2001

 

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。