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ロー対ウェイド判決から42年が経過した今日でも、「女性に対する戦争」は延々に続くと思われるほど妊娠中絶への圧力は根強い。先月、プロライフ団体は女性の健康問題に対処する非営利団体プランズ.ペーレンフッズが胎生組織を不法販売しているとの印象を与える複数の隠しビデオを公開した。これはプランズ.ペーレンフッズに対する約10年間続いている妨害行為の一部であり、ビデオ作成の背後に極右宗教グループが存在している。ビデオを公開したプロライフ団体および攻撃されているプランズ.ペーレンフッズはいずれも法的調査の対象にはなっていないが、議会の聴聞会に直面している。複数の共和党議員はこの機会を利用し、融資停止を主張している。現在進行中の驚異的なプランズ.ペーレンフッズ論争は政治的紛争である。

プランズ.ペーレンフッズ(PP)は 1990年代初期に設立されたプランズ.ペーレンフッズ.フェデレーション.オブ.アメリカ (PPFA)の通称である。避妊および中絶を含む女性全般の健康及び母子保健に関する包括的な健康サービスを提供し、米国で最も実績と信頼性のある非営利団体である。この組織はロンドンに本拠がある最大の国際組織の一つである国際家族計画連盟 (IPPF)と提携している。オバマ大統領が2010年3月に著名したアフォーダブル.ケア.アクト下でメディケイド利用を拡大した31州は連邦政府の融資を受けている。従って、低所得の女性はメディケイドを利用し、PPでの医療サービスを受けることが可能である。また、PPは1970年にリチャード.ニクソンが署名したタイトルX家族計画プログラムに基づき、連邦政府から融資を受けている。CBSニュースによると、PPは保健サービスを提供する為に必要な資金として毎年5億ドル以上の融資を受けている。

先月ビデオを公開したグループは、プロライフ又は反中絶団体のメディカル.プログレス.センター(MPC)である。彼等は、PPが胎生組織を研究機関に不法販売していると主張し、隠し撮りによるビデオをオンラインに掲載した。公開されたビデオについて、7月22日のニューヨーク.タイムス (NYT)は「そのような類いのものは何も表示されていない」と述べ、「プランズ.ペーレンフッズに対する人を欺くキャンペーン」であると指摘している。MPCが公開したビデオは複数あり、その1例は、9分間のクリップで2013年に作成されたものである。 最初のビデオは、PPの医療サービス.ディレクター、デボラ.ヌカトォラ 医師が昼食中、画面に現れていない声だけの男性と胎生組織の収集について会話をしている内容である。21日に公開された2つ目のビデオは、PPの別の職員が胎生組織について論議している。

NYTは8月6日、2人が昼食中に録画された会話全体を描写した2時間のビデオは、これら2つのビデオとほぼ同時に公開されたものであるとする訂正文を追加した。このオリジナルの長いビデオは編集されていない為、MPCが公開した最初の短いビデオの内容とかなり印象が異なっていて、短いビデオは会話の重要な部分が全て削除され編集されていることが判明。ヌカトォラ医師は、PPは収集と輸送に関連するコストを補うため、1検体あたり$30及び$100の範囲でお金を受け取っているだけであり、利益を得るためのものではないと語っている。連邦法は施設、輸送および貯蔵のような、胎生組織の寄付に関連する費用の弁償を認めている。PPの社長セシィル.リチャードは「我々の寄付は、他の医療機関と同様、全ての法律および倫理的ガイドラインに従っています」との声明を発表した。国立衛生研究所が公表した胎生組織研究および寄付に関する規定によると、(1)利息に関与する活動を禁止する。胎生組織の輸送、注入、処理、保存、品質管理に関連する合理的な支払額はこの規定に含まれない。(2)胎生組織を研究に利用する個人は中絶に関与してはならない。(3)胎生組織の取得は州及び地元政府の法律に従わなくてはならないと明記している。

セシィル.リチャード

MPCが公開した2つのビデオはPPが胎生組織部分の値段を交渉し、販売し、利益を得ているかのような誤解を与えている。しかし、PPのディレクターは、反中絶団体が職員の会話を無断で録画し、内容を編集したものであり、そのような事実はないと反論している。NYTによると、最初のビデオが公開された後、ケンタッキー州の米国上院議員ランド.ポールは「PPの資金調達の全ドルを即時除去する為、保留中の法案改正を紹介します」と公約した。テキサス州の上院議員テッド.クルーズは、融資停止を主張し、中絶後の胎生部分の販売および転送に関するPPの活動を調査するよう要求した。下院エネルギー.商業委員会は聴聞会を数日前に開始したが、テキサス州知事グレッグ.アボットとルイジアナ州知事ボビー.ジンダルはその州での調査を命令した。

一方、MPCに対しても不法行為の疑惑が提起されている。PPの弁護士は下院エネルギー.商業委員会に手紙を送り、MPCの責任者であるディビッド.デラィデンは3年前、PPを陥れるため、虚偽のバイオマックス調達サービス会社を設立し、 胎生の肝臓を$1,600ドルで購入することをPP関係者に提案したが、PPはこれを拒否した事実があったと報告した。MPCは過去10年間、あらゆる手段でPPを閉鎖に追い込むことを目指してきた。非合法の活動を展開しているのは中絶に反対するこの極右グループであるにも関わらず、複数の共和党大統領候補者は、最初のビデオが公開された時点で、そのビデオの本質を無視し、融資停止、融資停止と騒いだ。上院議会は融資を停止する法案の制定を考慮し、8月3日に投票を行なったが通過に失敗した。最初の準備投票により、この法案が通過するためには60票を必要とした為、53対46の投票結果は法案の通過を阻止した民主党に有利であった。

人間の胎生組織は長い間、パーキンソン病、肝炎、心臓疾患、その他様々な医学研究に利用されている。PPは設立以来、胎生組織をそのような研究団体に寄付している。寄付は合法的であるが、MPCは中絶行為を止めさせる為、PPの医療活動の事実を歪曲し、PPを破滅に追い込む為、約10年間執拗にキャンペーンを続けている。7月に公開された3つのビデオ作成に関与した 3人は宗教過激派のグループであると言われている。彼等はPPをスパイし、レストランでの会話を盗み撮りし、録画したビデオを編集し、反中絶のプロパガンダとしてこれらを一般に公開した。このような活動は過去10年間で60回以上になると言われている。中絶論争は2016年大統領選の課題でもあるため、複数の共和党候補者はビデオ公開に反応した。驚異のPP論争は政治的及び選挙に利用される格好の材料になっている。

 

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