アメリカの最新課題 Contemporary American Issues © 2016 Yuko’s Blog. All Rights Reserved.  

ドナルド.トランプは6月16日の大統領立候補宣言のスピーチでメキシコは犯罪者、麻薬密輸者、強姦者を米国に送っていると宣言し、数日前には全ての不法移民を強制送還することを誓約する移民政策計画を公表したばかりである。トランプは彼が雇用している労働者には不法移民はいないと宣言していたが、彼の組織に関連する労働者の一人は労働許可を受けているものの法的書類のない移民である。その青年は、メキシコからの不法移民は犯罪者であると公言したトランプに対して、解雇を覚悟の上で抗議するメッセージ.ビデオを17日フェイスブックに公開した。この反響は多大であるが、このビデオの内容をどのように分析できるだろうか?

19日のニューヨーク.タイムスNYT)によると、24歳のリカルド.アカは2005年、彼が14歳の時両親と共に米国に不法入国した。クイーンズのリッジウッドでグローバー.クリーブランド高校を卒業し、短大のラガーディア.コミュニティ.カレッジで写真科の準学士を取得した。現在、写真家の助手として働きながら、ニューヨークのトランプ.ソーホー.ホテル内にあるコイ.レストランが経営する寿司店の居酒屋サクラで2年間働いている。彼は、このビデオで最初に自分の携帯電話に録画した6月16日のトランプの論争的なスピーチを視聴者に見せ、14 歳の時、義理の父、母、姉妹と国境を超え、ブルックリンのバッシュウィツクに9〜10年住んでいることなど自己紹介している。更に、「共和党はメキシコ人が怠け者だと思っている」ことを感じるが、個人的には3つの仕事をし、義理の父は2つの仕事を持ち、生活はその懸命な労働による収入から成り立っていることを語った。またアメリカに来た理由は「もっと良い人生を望んでいたからだ」と述べ、母は自分と姉妹を短大に通わせてくれた。写真の仕事は自分に表現力を与えてくれる。投票は出来ないが写真を撮ることはできるので人々の物語を共有することができると語り、もしメキシコにいたらそれが出来たがどうか分からないと述べている。

リカルドは、不法移民が「これら全て酷いことをした」とトランプは指摘し続けているが、「これは我々の事ではない、これは私の事ではない、これは私が知っている移民の誰の事でもない 」と述べた。また、他の共和党はトランプの不法移民に対するコメントを批判しているが、自分には移民に対する彼等の立場は全で同じあるように思えると語った。リカルドは第三者による短いインタビューで貴方は犯罪者か、麻薬密売者か、強姦者かと聞かれ、「僕は犯罪者ではありません。麻薬密売者ではありません。明確に強姦者ではありません」と笑顔で答えている。また、義理の父親や祖父が懸命に働き、10年暮らしている「当地は自分の故郷のようなものです」と語っている。更にビデオには、ヒスパニック系の複数の若い男性が何処かの駐車場で「 犯罪者ではない」、「 麻薬密売者ではない」、「 強姦者ではない」とのプラカードを個々に掲げている様子も描写されている。リカルドはビデオのほぼ最後に、「トランプの事を語るだけで仕事を失う可能性があることは分かっていますが、彼の名の下で毎日仕事に行くことが誇りに思えません。他のアメリカ人は彼と同じように感じているとは思いません」と語っている。

2012年6月、オバマ大統領は子供として両親と共に米国に不法入国し、長年米国で暮らし、法を遵守する不法移民に対する強制送還を停止する為、児童到着の遅延行動(DACA)と呼ばれる大統領令に署名した。これは、一定の適正資格者に一時的な滞在許可および労働許可を与え、2年毎に申請を更新することで不法移民を保護する法律である。リカルドはまさにこの適正者の一人であり、その労働許可書により、合法的にトランプ組織が運営するレストランの皿洗いまたは給仕人の助手として働いている。従って、トランプのホテル関係者は、移民労働者は全員合法的であり、リカルドは不法移民ではないので、このビデオは誤解を招いていると主張した。

NYT によると、18日コイ.レストランはこのビデオ制作者に偽と中傷発言があったと主張し、ビデオ映像を撤去するよう要求した。なぜなら、リカルドは不法労働の印象を与えているからである。米国移民法弁護士協会の元会長デビッド. レオポルドはレストラン側に文書で応答し、米国移民局の情報を引用し、労働許可が認可されている期間でも彼は不法移民の立場であり、「DACAは合法的な地位を与えない」と説明した。 現時点で、トランプはリカルドを罰するよう雇用主に強要していなが、「私は彼の書類を確認したいです」と述べている。

このビデオが示唆している幾つかの分析可能な要点がある。2012年6月、オバマ氏が署名したDACAは一時的処置であり、永住権や市民権がない限り、現時点では労働許可を得ているものの、法的には不法移民に属していることを認識する必要がある。つまり、2年毎に更新し、許可を得なくてはならない状況は彼等が合法的滞在および労働資格がない為であり、彼等は常に不安的な状況に置かれていることを明白にしている。2014年11月20日、オバマ氏は 2010年より以前に米国に入国した不法移民も含め、申請の更新期間を2年から3年間に延長した。DACAは次期大統領がこの法を維持する限り、リカルドが引き続き米国に滞在し、労働し続ける資格を与えているが、トランプはリカルドのような真面目な青年を含めて、全ての不法移民を強制送還する政策を提案している。不法移民に対して非人道的な移民政策を掲げるトランプのような共和党候補者が大統領になった場合、リカルドを含む1,100万の不法移民は路頭に迷うはめになる。1,000から3,000億ドルの莫大なコストをかけて、そのような勤労者を強制送還するメリットは何であるかをトランプは説明していない。

更に、このビデオが有権者にどのような影響を与えるかは計り知れないが、NYTによると、24時間に300,000人がこのビデオを見ているという。リカルドは他のアメリカ人が不法移民についてトランプと同じように考えているとは思わないと述べた。確かに、65%の国民は、強制送還に反対し、リカルドのような青年に市民権を与えることを支持している為、反トランプ移民政策のプロパガンダになる可能性がある。従って、英語を学び勤勉であり、米国以外の国で生きていく以外に選択の余地はないリカルドのような個人には市民権を与える事が最善の人道的選択であると思われる。複数の仕事を抱え、懸命に働き税金を支払っている彼等は、他の米国人勤労者とほとんど変わらない。従って、今後の移民政策は、不法移民を増やさない新たな対策を検討する必要はあっても、既に長年米国の経済に貢献している不法移民の人生を破壊するような極端な政策をアピールするべきではない。それは元来移民の国である米国本来の精神に反しているからである。

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。