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ポール.ライアン

下院議長ジョン.ベイナーの退職表明により、最も有力であると想定されている下院多数派リーダーのケビン.マッカーシーは、先週突然次期下院議長の選挙競争から辞退した。その劇的なエピソードは実質的に分裂している党内を統治できるリーダーはベイナー以外に存在しないことを示唆している。明白な機能不全が暴露された下院議会には現在有力な候補者がいないため、ベイナーの後継者として注目されているポール.ライアンは、その要請をまだ拒否し続けている。党内分裂の実情とその状況から想定した幾つかの議長選シナリオを推定することは可能である。

下院共和党内には現在約40人の下院自由部会(HFC)と呼ばれる強硬派がいる。彼等はいわゆるオバマ大統領が就任前後に台頭した保守派グループのティーパーティに支持されて議会に送り出された極右派議員である。HFCは社会保障、メディケア、メディケイド、中絶に関与するプランズ.ペーレンフッズを大幅に削減するかまたは解体することを目指しているグループであり、ベイナーよりもっと強硬派のリーダーが次期議長に就任することを望んでいる。HFCは彼等の仲間であり、議長選挙に候補しているダニエル.ウェブスター(フロリダ)を支持している。しかし、共和党の主流派はウェブスターを支持していないため彼が選定される可能性は低い。議長になる野心を自ら表明したジェイソン.シャフェツも同じく、党内でさほど支持されていない。ベイナーはポール.ライアンと長い間個人的なつながりがあり、ライアンを良く知っているため強く要請しているが、ライアンはこの要求にまだ否定的である。

ライアンは1970年1月29日ウィスコンシンのジェーンズビルで、アイリッシュ系の父およびドイツおよび英国系の母親の間に生まれた45歳の政治家である。彼は高校時代スポーツにいそしんでいたが16歳の時、心臓発作で父が他界した。また祖母はアルツハイマーになり、母が仕事をしている時、祖母の面倒を見た。ライアンは数年間社会保障生存者恩給を受け、その資金を教育費に利用した。その後マイアミ大学で経済および政治学を専攻し、ミルトン.フリードマンやアイン.ランドに興味を持ち始めた。リバタリアンの教授を頻繁に訪問し、ランドの経済論を論議した。彼はマクロ経済学を支持し、アメリカ大学のワシントン.セメスター.プログラムを受講した。また、学生時代共和党として政治活動に参加するようになり、ベイナーのキャンペーンをボランティアで援助した事がある。これはライアンとベイナーの最初の出会いである。ライアンは1992年、経済学および政治学の二重の学士号(BA)を取得した。1999年、ウィスコンシン州第一議会区から米国下院議員に就任し、2011年から下院議会予算委員会の委員長を務めている。2012年の大統領選では共和党大統領候補であったミット.ロムニーの副大統領候補者として全国的に知られるようになった。

現在最も注目されているライアンは、ロムニーと同様さほど強硬保守派ではなく穏健派の側面もある事を彼の幾つかの政策が示唆している。ライアンは2005年、社会保障の民営化をジョージW.ブッシュ政権に提案し、強く推進したが成功しなかった。予算面ではかなり保守派であると言われているが、2012年CNNの報告によると、彼は赤字増大および政府支出の拡大に何回も投票した。2013年には民主党上院議会予算委員会の議長であったパティ.モォリーと予算案を交渉し、超党派の意見が反映した画期的な予算法案を成立させた。また、銀行および自動車産業の倒産を防ぐ法案に投票した。2014年、連邦政府の信用プログラムの予算処理を変更する予算および会計の透明性法を支持した。ライアンの教育政策も幾分一貫性がない側面がある。例えば2001年にブッシュが提案したNo Child Left Behind Act(取り残される子供はいない法)を支持した。しかし、連邦政府の福祉プログラムの一つで、財務上の問題があり大学の支払いを必要とする学士号取得前の学生に提供するペル.グラント(Pell Grant)の予算を大幅に削減し、10年間で100万人の学生が受益を失う結果になると言われる予算削減を提案した。また、私立学校に通う学生や両親の学費負担を軽減するため、その家族に直接支払うクーポン制度の私学補助金政策を支持した。ライアンの教育政策は、国立教育協会に歓迎されていない。

ライアンは強硬派のHFCグループに支持されていない。本人も議長職に興味を示していない為、下院議長として適切な人物を捜すことが不可能な場合、幾つかのシナリオが考えられる。(1)ベイナーは2016年の大統領選が終るまで議長として居残る必要性が生じるかもしれない。(2)憲法は下院議会のメンバーであることを要求していないため、共和党なら下院議会内外の誰でも議長に立候補することが可能であるため、ベイナーは引き続き適切な人物を探す。(3)現在プレッシャーに直面しているライアンは、最終的に自分の政策提案を下院共和党が受け入れることを条件に要望に応じる可能性もある。

2016年の大統領選後までベイナーが下院議長として留まる可能性について、下院議長を選定する幾つかのステップにも幾分微妙な関連性がある。そのステップは(1) 最初に共和党議員のみで投票を行い、共和党全票247のうち、単純多数派投票により125票以上を獲得した候補者が議長として指名される。(2)その後、 数週間後に下院議会全体の投票があり、指名された人物が218票を獲得しなかった場合、ベイナーは議長として残るシステムになっている。共和党には247 票あるが、HFCの約40人はライアンを支持していない為、彼等の票を得ることはできない。従って、ライアンが共和党のみの投票で獲得可能な最大推定票は 207である。このシナリオで推測した場合、ベイナーは民主党の協力を必要とするため、民主党少数派リーダーのナンシー.ペロシの協力を得ることで218 票を集めることが可能になる。ライアンが議長職を受け入れた場合、民主党はウェブスター及びシャフェツより、ライアンを支持する確率は高い。しかし、ライ アンが今の立場を変えない場合、ウェブスター及びシャフェツのいずれも218票を集めることが確実な保証はない為、ベイナーは10月末までに退職できない 可能性がある。

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