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巡回裁判所は9日、オバマ大統領が2014年に発令した大統領令による移民法を却下した。一時的な処置として、1,100万人の合法的書類のない移民(不法移民)に強制送還を停止する為の法律であるが、オバマ政権は10日、最高裁に上訴する考えを表明した。10日夜ミルウォーキーで開催された共和党討論会では、ドナルド.トランプがこの判定を賞賛したことから、移民法の論争で衝突する場面があり、複数の共和党候補者はトランプの強制送還政策に対抗した。移民政策ではGOP(共和党)内で意見が分かれているが、ヒラリー.クリントンは11日、トランプの移民政策は非人道的であると批判した。トランプはその直後、人道的に強制送還できると主張し始めた為、 移民法論議が再燃している。トランプの強制送還は、否定的な歴史の一例と見られている1950年代アイゼンハワー政権下で実施された強制送還作戦を手本にしている。

この裁判所の判例は、米国約50%の州がオバマ氏の移民法大統領令に反対していることを明白にしている。米国第五巡回控訴裁判所は9日、米国国土安全省の長官ジェイ.ジョンソンおよび他の4人に対して告訴し、大統領令のアメリカ人の両親の延期行動法(DAPA ) はオバマ政権下で施行された行政手続き法(APA)の要求事項に課せられるため、議会の承認が必要であると主張した原告側26州の主張を保持した。原告側の26州 (テキサス、アラバマ、ジョージア、アイダホ、インディアナ、カンザス、ルイジアナ、モンタナ、ネブラスカ、サウス.キャロライナ、ノース.キャロライナ、サウス.ダコタ、ノース.ダコタ、ユタ、ウェスト.バージニア、ウィスコンシン、メイン、アイダホ、ミシシッピー、オハイオ、オクラホマ、フロリダ、アリゾナ、アーカンソー、テネシー、ネバダ)は圧倒的に共和党州である。

10日、オバマ政権は9日の第五巡回控訴裁判所の判定を受け、判定に同意しない為、米国最高裁に最終決定を要請する考えを表明した。2014年11月20日に発表された DAPAは約400万人の合法的書類のない移民を強制送還から救済する為の大統領令である。オバマ大統領の任期は2017年1月に終了するため、その数ヶ月前までにプログラムが施行可能になるよう最高裁が十分時間的に余裕のあるスケジュールに基づき、この判例を却下することを希望している。26州の原告側は大統領が議会の認可を求めることなく、独断で政策を導入しているとの苦情を表明している。一方、大統領は2013年に上院で包括的移民改正法が通過したにも関わらず、下院共和党は投票さえ実施しなかった為、大統領令は長期的に待った後の最後の手段であった事を頻繁に伝えている。

DAPAは3年間の労働許可を与え、数百万人の追放を停止し、連邦政府の幾つかのプログラムを利用することを保証している。また、このプログラムは2012年に発令された児童到着の延期行動法(DACA)を改正し、犯罪歴のない推定400万人の書類のない両親(米国で生まれた子供の)に労働許可を与え、少なくとも5年間米国に滞在することを許可している。テキサス州を代表した他25州は最初にテキサス州の地方裁判所に告訴し、この裁判所は原告側の主張を保持した。更に、第五巡回控訴裁判所の9日の判定は、地方裁判所の決定を保持し、オバマ政権側の主張を却下したため、すでに保守多数派の二つの下級裁判所で決定した後に最高裁がオバマ政権の要請を受けるかどうか不明である。

第五巡回控訴裁判所の判定は、たとえ一時的措置であったとしても、不法移民に合法的地位を与えることに同意していない共和党(GOP)を励ましている。しかし、移民改正法案は必要であると主張しているGOPは多いため、移民法に関してもGOPを分裂させている。トランプは4回目の討論会でこの判定を賞賛し、「昨日はこの国で最高の素晴らしい日であった」と述べ、メキシコの国境に巨大な壁を建設する事及び莫大な強制送還を力説した。10日の討論会では、トランプの政策に対して、非現実的で大人の発想ではないと批判したジョン.ケイシックは「家族のことを考えなさい。子供達の事を考えなさい。彼等を拾い上げてメキシコの国境まで輸送する事はできないことを私達は知っているでしょう。馬鹿な論議です。大人の論議ではありません」と批判した。トランプはこれに対し、アイゼンハワーは偉大な大統領であったと述べ、「少なくとも150万人の不法移民を国境まで送還したが、彼らは戻ってきたのでまた移動させた。しかし、また戻ってきたので今度は南部遠方まで送り返した後、彼らは戻ってこなかった。更に快くなることもなければ、もっと友好的な事を得ることはありません。私達に選択の余地はありません」と反論した。ケイシックは「小さな事でも嘘は嘘です。真実となると実際には機能しません」と攻撃した。ジェブ.ブッシュはトランプの厳しい提案のお陰で、ヒスパニックの有権者は、今頃クリントンとハイ.ファイブ(high-five:手のひらをつき合わせて軽く叩きお互いに喜びを表現する動作)をしていると述べた。

11日、クリントンはトランプの移民政策は「非人道的」であるとツイッターに投稿し、トランプを批判した。その投稿には「 11万人を追跡し、追放するという構想は不合理であり、非人道的であり、アメリカ人らしくありません。ノー、トランプ」と書いている。これに反応したトランプは11日のMSNBCのモーニング.ジョーで アイゼンハワーの不法移民対策を再度語り、「人道的に強制送還することはできる」と反論した。また、どのように、1,100万人の不法移民を送還するのかと聞かれ、「強制送還部隊を結成する」と語ったが「良い管理と慣行があります」と述べただけで、どのような労働力が部隊になるのか、どのように追放するのか、どのような強制送還が人間的なのか詳細な事を説明していない。トランプは、フォックス.ニュースのビル.オライリーにアイゼンハワーの強制送還「プログラムの名前は何ですか」と聞かれたが、その「名前を覚えていない」と答えた。

アイゼンハワーはメキシコ不法移民の強制送還を直接指揮していないが、「ウェットバック作戦」と呼ばれるプログラムは歴史上存在した。これは米司法長官のハーバート.ブラウネルの指揮下で1954年5月から開始されたプログラムである。第二次世界大戦中のブラセロ.プログラムに基づき、メキシコ労働者の米国不法入国を停止する事をメキシコ政府から強く要請され、双方の合意によって開始されたものである。ブラセロ.プログラムは1942年8月に合意した二国間協定であり、メキシコから米国に送る一時契約労働者に関する外交政策であった。このブラセロ協定により、認可を得たメキシコ市民は自由に米国の国境を越えることが可能であったが、認可を受けていない多数のメキシコ市民が不法入国したことも事実である。トランプは、アイゼンハワー政権下の慣行が二国間協定に基づいていることを一切語っていない。二国間の協定がどうであれ、「ウェットバック 」は特に不法移民を指す軽蔑および抹殺を意味する人種差別的用語である為、近年の歴史家や専門家は攻撃的な政策であったと指摘している。また、トランプが主張している 1,100万人の強制送還には約1,000億ドルがかかり、数十万の米国市民をミスで強制送還する可能性があると懸念されている。従って、トランプの不法移民対策は非人道的であるとして、クリントン及び移民改正法の必要性を信じる他のGOPが批判している現状は必然的である。

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