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1964 年 1月8 日は36代大統領リンドン.ジョンソンが一般教書演説で多数の国内政策プログラムを紹介し、貧困への戦いを宣言した日である。「貧困への戦い」は非公式の名称であるが現在頻繁に使用されている為、貧困の戦いは終っていないことを示唆している。52年前、ジョンソンは、特に黒人を意識した有色人種の貧困、失業率の高い若者の機会と経済向上を目指す野心的な多数の国内経済政策を打ち出したが、今日一部の成功者を除き黒人は相変わらず貧困である。最近、米国一握りの億万長者は年間億ドルの余剰収入がある事が報告されている一方、最新の国勢調査の貧困率と貧困者数の実態は50年前とさほど変化はなく、近年向上は低迷している現状である。

ジョンソンは52年前の今日、一般教書演説で「多くのアメリカ人は、彼らの貧困のため、彼らが有色人種であるため、そしてあまりにも多くの人達はその両方の理由のため希望のない世界で生きています。私たちの仕事は彼らの絶望を機会と交換するため援助することです。この政権は今日ここで、アメリカの貧困に対する無条件の戦争を宣言します。私は議会および全てのアメリカ人がその努力に私と一緒に参加することを促します」と述べた。また「貧困は全国的な組織を改善し支持を必要とする国家の問題である。その戦いを有効にするため州におよび地方レベルで組織化し、州および地方の努力によって支持され指揮されなければならない。貧困の戦いはワシントンで勝利することはない。それは現場であり、全ての個人の家、裁判所からホワイトハウスに至まであらゆる公共事務所で勝利しなくてはならない」と語り、貧困との戦いは官民一体となって取り組む問題であることを力説した。

ジョンソンは貧困との戦いのスピーチで「偉大な社会」プログラムと呼ばれている国内政策を紹介した。それらは ⑴ アパラチアの慢性的困窮に特別な努力が必要である事、⑵ 失業し絶望的な若者の雇用に関する法律の制定、⑶ より広範なフード.スタンプ.プログラムを通じて貧しい人々により多くの食料を配布する 、⑷ 海外で援助している平和部隊のみでなく、自国の経済的障害者を支援する全国サービス隊を作成する、⑸ 失業保険の近代化と自動化を図る為、高レベルの委員会を確立する 、⑹ 購買力の基本的な保護を欠いた200万人以上の労働者に最低賃金法の適用範囲を拡張する 、⑺ 教育プログラムの一環として、特別学校の援助資金を導入し、最も深刻な打撃を受けた領域での教育、訓練の質およびカウンセリングを改善する、⑻ 図書館、病院、老人ホームの構築とそれらのスタッフおよび看護師を養成する、⑼ 貧困及び高齢者のためにより多くの住宅を提供する、⑽ 更に近代的な地域社会の大量輸送に加えて、低コストの交通手段を構築するなど多数の具体的な目標である。

1960年代の米国貧困率は19%であった当時、ジョンソンは経済機会法を制定し、貧困に対処するための機関を設立し、連邦政府の融資を認可することを議会に要請した。ジョンソンは教育及び医療システムを拡大することで貧困を減少するとの政策を掲げていた。「偉大な社会」プログラムにより、初めて公立学校は高度教育への奨学金も含めて大規模な連邦政府の融資を提供した。また、20年間葛藤があった65歳以上のメディケア.プログラムは最終的に法律として機能した。医学教育にも援助し、公害と闘うためのリサーチにも融資を提供した。更にこのプログラム下で都市住宅開発省( DHUD)が設立され、低所得者向けの住宅またはアパートの利用を可能にした。

しかし、ベトナム戦争の関与をエスカレートさせたジョンソンの国内政策の理想は儚く崩れた。戦争に費やした資金がもっと国内政策に有効活用されていたら、50年後の貧困状況はもっと変わっていただろうか? 皮肉にも50年前と現在の貧困状況はあまり大差ない。人工増加を考慮しない場合、1997年の貧困率は13%であり、飢餓には直面していなかった。しかし、近年米国一部の都市では、緊急食糧の需要が増えているが、予算削減により満足に食糧を購入できない貧困者が救済されていない状況が報告された。米国は豊かな国であるとの認識があるにも関わらず、一貫して経済的不平等の社会である特徴がある。

米国のトップ1%は益々富豪者になっていると言われているが、ニューヨーク.タイムスは12月29日、400人の億万長者は年間億ドルの余剰収入があると報告した。その理由は税制システムの抜け穴に加えて、ビル.クリントンが選出された時の約27%に比較して富豪層の税率はオバマ大統領が再選された2012年までに約17%まで減少した為である。従って、富裕層への課税システムを見直す時であると指摘している。2016年大統領候補者のドナルド.トランプは、キャンペーンのHPに税改革案を紹介しているが、複数の専門家は自身の収入を増やすシステムになる考案であると 指摘した。彼は各地のキャンペーンでのスピーチで、ライバルの攻撃ばかりに集中し、国民の生活を向上させる政策を語った事がない。彼が大統領になる事を目指す動機は私利私欲の為であることを示唆している。米国から貧困を絶滅するためには、最低賃金を引き上げることも一つの対策であるが、トランプのような一部の富豪者と食糧さえ満足に購入できない約4,600万人の貧困者との経済格差は歴史的に慢性的である。

ピュー.リサーチによると、2012年の国勢調査局による貧困率は15%である。これは1964年の19%からさほど進歩がないことを示唆している。ジョンソンが貧困の戦いを宣言した約3年後の1967年の失業率は26%であり、歴史的インフレーションの調整済みによるコロンビア大学の計算では1967年の26%から2012年には16%までの劇的な減少があった。しかし、近年さほどの変化はない。昨年9 月16日に公表された最新の国勢調査局の統計によると、2014年の全国貧困率は14.8%で4,670万人の米国民が貧困レベルである。貧困率及び貧困人数はいずれも、2013年の推定値と統計的に異なっていない。18歳から64歳までの貧困率は13.5%で2,650万人、64歳以上は10.0%で460万人、18歳以下は21.1%で1,550万人が貧困レベルである。2014年の人種別による統計では白人の貧困率は10.1%、アジア系は12.0%、ヒスパニック系23.6%、黒人は26.2%である。ジョンソン大統領は1964年1月8日の一般教書演説で、特に若い世代、黒人およびヒスパニック系の貧困を改善し、彼等を援助するため雇用拡大や最低賃金引き上げを含む多数の国内経済政策を打ち出した。あれから 52年が経過した今日、戦後豊かさを経験した中産階級は消えつつあり、ほぼ同じ人種グループが貧困を引きずっている。

 

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