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最近日本では、丸山和也参議院議員によるオバマ大統領の祖先に関する発言が話題になったが、米国のメディアはほとんど注目していない。オバア氏二期目の2012年大統領選年の7月、先祖調査会社アンセストリー.ドット.カムはオバマ氏の先祖は米国初の奴隷であるとの調査結果を公表した為、多大な衝撃があった。100%真実であるとする確証はないものの、その後この報告に挑戦した別の調査結果はなかった。しかし、オバマ氏の祖先に関する調査は実際にはオバマ氏が米国上院議員当時、最初に2008年大統領選の立候補を表明した2007年から開始され、記録上確実に残っている証拠はオバマ氏の祖先は「奴隷所有者」であったという事である。これは奴隷であったとする説とは全く異なるイメージの報告であるが、公表された 9年前オバマ氏の側近はこれを否定しなかった。

2月17日のジャパン.タイムスによると、丸山議員は「米国では黒人が大統領になった。彼は黒人奴隷の血を引いているという事である。この国の建国時代の人々は黒人奴隷が大統領になることは思いもよらないことであった」と語った。その日の後半、彼は記者会見で多数の人達がその発言について人種差別的であると解釈した為謝罪した。丸山氏は、参議院憲法委員会で、日本が米国の51番目の州になった場合、どのような憲法上の問題が起きるだろうかとの疑問を提起した。また、彼は米国では下院議席の割当は各州の人口による為、たぶん日本州が下院で最も多数の議席を保持すると述べ「もしそうであるなら、日本州からの誰かが米国の大統領になる可能性がある」と語った。「黒人奴隷」発言があったのはその時である。その後、丸山氏は人種差別する意図はなかったと述べ、彼の発言を撤回または改正する意志があることを表明した。

日本では多大な反響があった丸山氏の発言に何か隠れた意図があった印象は受けないが、複数の議員および閣僚に批判されたようである。米国の主要メディアはAPを除き殆ど注目していないが、民主党衆議院議員神山洋介氏は「それはとんでもないことでした。その発言は、米国大統領に対する侮辱と解釈されかねません。日本の外交関係を傷つける可能性がある非常に深刻な問題です」と国会中に指摘した。また、内閣官房長官の菅義偉氏は「どの政治家も自分の発言には責任があり、説明責任を果たす義務があります」と述べ、丸山氏に更なる説明を促した。オバマ氏の祖先に関する日本での話題を米国で再燃させる結果には至らなかった。現状は、この調査会社の報告を引用し4年前に投稿された記事はほとんど削除されている。実際にある時点までの記録が残っている史実はオバマ氏の7世代前くらいまでである。

2005年1月から2008年11月までイリノイ州の米国上院議員であった期間、まだ知名度が低かったオバマ氏は2008年大統領選の立候補を2007年に公表しキャンペーンを開始した。その直後、複数の調査会社はオバマ氏の祖先を探り始めた。この時、オバマ大統領の祖先は奴隷の所有者であったという説が提起された。2007年3月2日のバルチオア.サンによると、当時議会図書館で働き、空き時間に家系図などに取り組んでいたウィリアム.アダムス.ライトバイズナーはオバマ氏の祖先の報告書を編纂し、最初の草案であるとして彼のウェッブ.サイトに掲載した。その研究によると、ケンタッキー州ネルソン郡で1850年の国勢調査に記録されたオバマ氏6世代前の父側の先祖であるジョージ.ワシントン.オーバオールは2人の奴隷を所有していた。また、7世代前の母側の先祖であるメアリー.デュボールも2名の奴隷を所有していた記録がある。同紙は、ケンタッキー州立図書館や公文書館が回収した国勢調査を含む文書、その他の利用可能な情報を使用し、ライトバイズナーの報告書を調査したところ、当時30歳だったオーバオールは15歳の黒人女性と25歳の黒人男性を所有していた。デュボールは60歳の黒人男性及び58歳の黒人女性を所有していた。1850年の国勢調査は、奴隷の名前を除き、所有者は奴隷の年齢、性別、肌の色などを記録する義務があったことを示唆した。

この調査は1600年代のアン.アルンデル郡の主要な土地所有者であるマリン.デュボールのデュボール家を追跡している。1952年に出版された家族歴によると、1694年のデュボールの財産目録に18人の奴隷の名前が記録されている。大統領の家系を調査した本を出版したニュー.イングランド歴史系図協会の研究学者ゲイリー.ボイド.ロバーツは植民地時代の大半の家庭は奴隷を所有していないが、豊かな家庭は保持していたと説明した。また、南部の白人の母を持つ大統領の祖先が奴隷を保持した歴史があっても「特に珍しい」ことであるとは思わないと語った。 また、南北戦争で連合側の兵士であったクリストファー.コロンブス.クラークは、オバマ氏5世代前の先祖である。1930年国勢調査の文書は84歳のクラークが12歳のひ孫であるスタンリー.アーマー.ダナムとカンザス州のエルドラド市に住んでいる世帯主であったことを示唆した。ダナムは1918年3月に生まれ、1992年2月まで生存したオバマ大統領の母方の祖父であり、オバマ氏が10歳の時からハワイ州ホノルルでオマバ氏を育てた人である。

オバマ氏の人種について、米国のメディアも含めほぼ全ての人が「初の黒人大統領」との表現によるミスを繰り返す傾向がある。正確には、オバマ氏は白人と黒人両方の血を引いている為、「米国初の混血大統領」として言及するべきであった。人類学者であった彼の母アン.ダナムは1942年11月カンザス州ウィチタで生まれたが、圧倒的にドイツ、スイス、スコットランド、アイルランド、ウェールズのヨーロッパ系の祖先の血を引く白人で、主にイギリス人の家系である。従って、オバマ大統領はこれらの混血である為「ドイツ系のルーツがある」との説もあるが、オバマ氏の先祖が奴隷所有者であった公文書記録は残っている。当時上院議員であったオバマ氏のキャンペーンの広報担当者ビル.バートンは情報に異議を唱えることはなく、「上院議員(オバマ氏)の祖先はアメリカの代表的なものです」と述べ、「親族が奴隷所有する一方で、他の人は南北戦争で連合(合衆国)の為に戦った」と語った。また、バートンは2007年3月1日「奴隷所有者の子孫がケニアからの留学生と結婚し、米国の大統領候補者になるため成長した息子を生んだことは進歩の真実の尺度です」と語った。

巨大な営利会社であるアンセストリー.ドット.カムが2012年にオバマ大統領は米国初の黒人奴隷であったジョン.パンチの末裔であると結論づけた報告は、失われた多量の情報部分を想像に結びつけた側面もある為、完全に事実であるという証拠はない。先祖研究の専門家は、このような歴史的研究には最も重要な手がかりとなる「出生、死亡証明書、結婚許可書など認証可能な情報源からの引用が不足している」と述べている。つまり、ある一定の期間までの歴史に関して信憑性の高い情報を探すことは可能であるが、極端に古い先祖に関する情報源を入手し引用することは困難であることを示唆している。2012 年二期目の大統領選の数ヶ月前に公表された報告の調査組織の創始者は、モルモン教徒である為、モルモン教徒である共和党大統領候補者ミット.ロムニーに有利な情報を提供した疑いもある。

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