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2009年初の混血大統領が選出された瞬間、人種差別の歴史は終ったかに見えたが、米国の人種差別問題は歴史的に根強い。オバマ大統領の就任期間中も白人警察官による黒人に対する虐待または殺人は頻繁に発生している現状を消化することは最早困難である。7月6日および7日連続して二人の黒人男性が白人の警察官に射殺された。翌日の8日、テキサス州ダラスで、Black Life Matter (BLM)運動の集会に出動した警察官を待ち伏せしていた黒人男性は白人警察官のみを標的にし、5人の警察官を射殺した。ヨーロッパ旅行中のオバマ大統領は復讐に基づく殺人行為を警告したが、黒人対白人の紛争問題は非常に根が深い 。

BLMは「黒人の生命も重要である」を意味し2013年にソーシャル.メディア上に結成された黒人の公民権運動である。フロリダ州で10代のトレイボン. マーティンが射殺され、容疑者の白人男性ジョージ.ジマーマンは無罪釈放された。その後、この運動はほぼ全国に拡大し2013年以降、各地でBLM運動による集会が行なわれている。更に2014年、ファーガソンで黒人男性マイケル.ブラウンが警察官の射殺により死亡し、ニューヨークではエリック.ガーナーが虐待により死亡して以来、BLM運動は全米で新時代の公民権運動として定着してきた。

7月6日、ルイジアナ州のバトン.ルージュで黒人男性アルトン.スターリング37歳は地面に取り押されられた状態で警察官に射殺された。7日ミネソタ州セントポールの郊外で黒人男性フィランド.カスティーリャ32歳は警察官に射殺された。これらの事件に対し、BLMによる抗議活動は全米各地に拡大し 、特に週末から各地で物騒な状況になっている。翌日ダラスで開催された集会に動員された警察官らは狙撃者に襲撃され、5人の白人警官が射殺された。これは白人警察官に対する黒人の復讐であると言われている。週末には事件のあった二都市を含め、全国の各地で黒人差別の廃止を訴える抗議活動が行なわれたが、抗議者は複数の主要都市で州間幹線道路を遮断した為、多数のデモ参加者が逮捕された。9日はツイン.シティーズと呼ばれているミネソタ州のミネアポリスとセントポールを結ぶ州間幹線道路を閉鎖した。北カリフォルニア州のオークランドでは抗議者の一部が同市内を南北に接続している道路を閉鎖した。ダラスの抗議活動では市内の複数箇所に爆弾を設置した疑いがあると報道された。

ダラスでの事件を受けて、テキサス州の副知事ダン.パトリックは、BLMの活動家は「偽善者」であるとし「憲法修正第一条、言論の自由を理解しているが、警察は人種差別者であり、または憎悪的であり、殺人者であるなどとのメッセージを主流メディアに煽動することはできません」とフォックス.ニュースに語った。北大西洋条約機構(NATO)での首脳会談に参加するため先週からフランス、ベルギー、スペインを含むヨーロッパ旅行中であるオバマ大統領は8日ポーランドの首都ワルシャワでの記者会見で、ダラスでの狙撃は「悪質且つ計画的であり、法執行当局を攻撃した卑劣」な行動であると批判した。また「我々はこれらの事件に恐れています。私たちはダラスの人々及び警察署と共に立ちます」と述べ、「これらの種類の攻撃または法執行機関に対する暴力を正当化する可能性はありません」と語った。

警察官に対する黒人の復讐狙撃事件は、1900年にニューオリンズで人種的不公平に怒りを抱いた黒人男性が4人の白人警察官を殺害した事件と似ている。8日ダラスで5人の警察官を狙撃した25歳の黒人男性は元兵士ミカザビエル.ジョンソンである。ジョンソンは2013年11月から2014年7月まで米軍としてアフガニスタンに配備された犯罪歴のない男性である。時代背景が異なるこの2つの事件には共通点がある。1900年代から投獄される黒人の数は白人に比較して不均等に高い。圧倒的多数の黒人は結果的に教育、就労、結婚など全ての向上の機会を奪われているため、労働省の月間雇用統計は黒人に大学入学の割合が圧倒的に低い事と黒人の失業率は全ての人種の中で最も高いことと無関係ではない事を示している。この傾向は長年慢性的であり、深い人種分離の根本的要因である。

全米黒人地位向上協会(NAACP)によると、13歳から18歳までの黒人の子供達が学校時代のある時点で一時停学または退学になる率は35%で最も高く、次にヒスパニック系は20%、白人は15%である。黒人は若い時から最も人生の進路が疎外されていることを示唆している。また、黒人の投獄率は人口の割合に比較して劇的に高い。現在投獄されている230万人の中で100万人は黒人である。つまり黒人の43%は投獄されている計算になる。これは、人口動態的に黒人は白人より投獄される率が約6倍高い不均等な数値である。総体的人口の割合で比較すると、黒人及びヒスパニックの合計率は僅か25%である。このような不均等は特に薬物犯罪の統計が人種差別に要因があることを明白にしている。白人の麻薬違反は約1,400万人 、一方黒人の麻薬違反は260万人である。白人は黒人の5倍も麻薬違反率が高いが、黒人が麻薬違反で逮捕される率は白人より10倍高い。黒人が薬物犯罪により刑務所で過ごす時間は平均で58.7ヶ月ある事に比較して、白人が暴力犯罪で投獄される期間は61.7ヶ月である。比較的軽犯罪の傾向性がある薬物犯罪と強盗、暴行、誘拐、殺人を含む暴力犯罪による白人の刑務期間がさほど変わらないという驚きの不平等性がある。

2013年以来頻繁に発生している白人警察官と黒人男性の紛争は、双方の人種間に嫌悪または人種差別、および地域社会の人種分離があることを明白にしている。2009年、米国民は初の混血大統領を選択したが、人種差別が終ったとの印象は幻想であったことを示唆する幾つかのエピソードはホワイトハウスに向けられた。例えば、大統領選の共和党推定候補者となったドナルド.トランプを含む多数のワシントン議会内外の共和党は、オバマ大統領の生誕地は米国ではないと長期間執拗に主張し続けた。元大統領ジミー.カーターは大統領が黒人であるからだと大胆に発言し、大統領も人種差別の対象になっている事を暗示した。人種の社会問題として、学校や住宅区域などで人種分離化がまだ存在していることも人種問題が根強く残っていることを証明している。ジョンソンの狙撃は単独犯行の可能性が高い為、頻繁に黒人が白人警察に虐待されている現状に対する怒りが動機であると思われるが、爆弾を作成するなど事前に大きな殺人計画の準備があったことが10日判明した。この復讐殺人行為は人種分離および人種問題の解決に逆効果であることは言うまでもない。

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