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ドナルド.トランプの指名受諾スピーチは「米国を最優先する」とのテーマによる共和党全国大会最終日の最後のステージで東部時間21日午後10半頃始まり、11時20分過ぎに終えた。いつもと異なり自身の成功を自慢する瞬間は驚くほど控えめであり、前半部分では統計を用いながら、犯罪、不法移民、貧困を含む米国の経済状況は最悪であるとの暗い悲観的なイメージを強調した。また、オバマ政権は中東を含む外交政策でも失敗しているとの印象を与えるスピーチを披露した。しかし、トランプが語った内容の全ての信憑性について、専門組織によりファクト.チェックと呼ぶ検証が実施され、その結果は早くて1時間以内、遅くても数時間以内に公表された。圧倒的多数の主要メディアはトランプが語った内容の大半は虚偽と誇張であることを報告している。

トランプは最近連続的に警察官が射殺された事件について、米国の犯罪は増加していると悲観し「殺人は昨年アメリカの50の大都市で17%増加しました。それは25年間で最大の増加です」と述べた。トランプは「職務中に殺された警察官の数は、昨年の現時点に比べ50%近く上昇しました」と伝えた。このトランプの発言について、21日ニューヨーク.タイムスは、これらの統計は司法省が公開した予備犯罪データの1つの分析に基づいており、幾つかの大都市で殺人事件が増加しているが、ニューヨーク市では2016年の最初の3ヶ月で25%減少している事実説明が抜けていると指摘した。警察当局の記録によると、実際には今年これまで68人の警官が殺害されているが、昨年同期に殺害された警察官は69人であるため、ほぼ同じであると述べた。更に、ナショナル.パブリック.ラジオ(NPR)は国家法執行役員メモリアル.ファンドの記録に基づき、「2016年7月21日の時点で、昨年に比べ今年は5人の警察官が死亡しているが、これは8%増加したことを反映している」と注釈している。

また、トランプは不法移民に犯罪者が多いことを強調し「前科のあるほぼ18万の不法移民は今夜平和的な市民を脅かす私たちの国から強制送還を命じられました」と述べた。これに対し、NYTのファクト.チェックは「これらの数値は国土安全保障省が報告したものである」が、トランプは「これら18万のほとんどが非暴力的犯罪で起訴の可能性がない人達であることを言及しませんでした」と説明した。また、トランプは国境にはゲイト、検問、パトロールも一切ないことを意味する「オープン.ボーダー」がある為、特に子供達が犯罪の犠牲になると語ったが、NPRは「アメリカにはオープン.ボーダーはありません。移民には出入国制限があり、国境警備隊員は年間に数千人を逮捕しています」と説明した。

またトランプは貧困について語り、「アフリカ系アメリカ人(黒人)の子供たちのほぼ10人中4人は貧困の中で生活し、アフリカ系アメリカ人の若者58%は雇用されていません」と語った。しかし、NYTは労働統計局の統計に基づき「アフリカ系アメリカ人16〜19歳の年齢層の失業率は6月に31.2%であり、同年齢の白人の間では14.1%であった」と説明した。また、トランプは貿易赤字についても正確に伝えていない。彼は「我々の製造貿易赤字は史上最高に達し、1年間でほぼ8,000億ドルである」と述べた。しかし、NYTは「輸入製品が多く、輸出製品が少ないため、昨年の貿易赤字は7,630億ドルであるが、それは農産物や石炭などの原材料が含まれている。更に、米国はサービスの貿易黒字があるため、昨年の全体の貿易赤字はわずか5,000億ドルであった」と 説明した。また、元大統領ビル.クリントンが署名した北米自由貿易協定(NAFTA)は、我が国または率直に言えばどの国にもありえない最悪の経済取引の一つであった」と述べた。これに対し NPRは「NAFTAは、議会調査局が2015年に報告した通り、雇用に大きな影響はありませんでした。NAFTAについてはビル.クリントンに全責任はありません。それは、ジョージH.W.ブッシュ下で交渉され、クリントン政権下で法律として制定されました」と注釈した。

次に、中東の混乱、テロリズム、及び現在台頭しているイスラム国(ISIS)はオバマ政権及びクリントンが国務長官時代に失敗した政策の副産物であると批判し、「ヒラリー前の2009年にはISISは地図上に存在しませんでした。リビアが協力しました。エジプトは平和でした。イラクは実際、大きな、大きな暴力の減少を見ていました。イランは制裁によって窒息されました。シリアは支配下にありました」と述べた。また、「これはイラン協定に調印する直前であり、イランに1,500億ドルを与えたが、私たちに何も与えなかった。それは今までに交渉された最悪の一つとして歴史に残るでしょう」と述べた。

これに対し、NYTは「クリントン及びオバマ氏が制御不可能であったアラブの春の革命運動による暴動はリビア、シリア、エジプトに拡大した。イラン制裁は当時増強されていた時であった。制裁はブッシュ政権下の時よりオバマ政権下ではるかに厳しくなったが、昨年テヘランを交渉のテーブルに導き調印することに役立った」と解説した。しかし、「実際には協定が直接イランにお金を与えることはないが、制裁を緩和または終了することによって、海外の口座に凍結されている自国(イラン)の数十億ドルのお金にアクセスする権利をイランが維持することを可能にした。それらの制裁措置の正確な値は、議論の余地がある」と説明した。

総体的にオバマ大統領及び元国務長官ヒラリー.クリントンの間違った政策と判断で国内外の政策は失敗していると批判し「アメリカを再び偉大にする」ことを強調したスピーチであった。例えば、クリントンは大きなビジネス及びエリートの「操り人形」である為、彼女の「メッセージは決して、絶対に何も変わらない」と攻撃した。しかし、NPRは「クリントンは国の移民システム及び刑事司法の改革、大学のローンの軽減を目指し、全ての政策を変更する計画や提案を多数持っています」と反論した。また、彼はトランプ運動が現象的であると誇張し「数百万の民主党もトランプ運動に参加している」と述べた。しかし、NPRはピュー.リサーチ.センターの最近の調査を引用し、民主党及びバーニー.サンダースの支持者が総選挙でトランプに投票する率は9%であり、85%はクリントンに投票する計画であると述べている。

トランプはスピーチの中で、6月フロリダ州オーランドのL.G.B.T地域社会が襲撃され49人が死亡した事件はイスラム教徒による残忍なテロ行為であると述べ、「L.G.B.Tを保護するため自分の権限ですべての事を実行する」と公約したが、彼はL.G.B.T地域社会に最も辛辣な政策を奨励する副大統領を選択したばかりであり、これは言動に顕著な矛盾があることを示唆した。また、イスラム教徒の表現を移民に変え、テロリズムが蔓延している国からの移民を一時的に入国禁止する事及び国境に巨大な壁を建設することを再度アピールした。立候補の宣言から13か月後、ほぼ全てのメディア及び専門家の予測に反し、公式に共和党大統領候補者となったトランプのスピーチには何一つ斬新性と向上がなく、相変わらず国を分裂させる差別的政策を繰り返した。メディアは一貫して、彼のスピーチは殺伐としていたとの印象を表明した。

 

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