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上院共和党議員らは現存のアフォーダブル.ケア.アクト(ACA)またはオバマケアを9月30日までに撤廃する最後のチャンスとして、新たな法案を紹介した。この法案の提唱者はリンジィ.グレイアム(右)及びビル.キャシディ(左)であり、他複数の共和党がスポンサーである。グレイアム/キャシディ法案と呼ばれているこの新たな法案は上院が7月最後に投票したスキニー法案より残酷であるとして、ほぼ全ての医療機関は反対している。なぜ医療機関や著名な経済学者はこの法案の問題を指摘しているのか?なぜACA撤廃が最後のチャンスになるのか? 

信頼性の高い独立した全米最大手の医療機関カイザー.ファミリー財団が昨日公表した分析によると、グレイアム/キャシディ法案には3つの柱がある。それは ⑴ 2020年までにACA下でのメディケイド拡大及び民間医療保険会社に支払う助成金を撤廃する。⑵ 医療保険会社への助成金を撤廃する代わりに、州別に異なる資金を提供する。例えば、メディケイドを拡大した州には政府の資金提供を大幅に減少(マイナス1,800億ドル)し、逆にメディケイドを拡大しなかった州には資金を増加(プラス730億ドル)するという前代未聞の差別的措置である。⑶ 伝統的なメディケイド.プログラムのための連邦政府の資金を自由裁量から上限額に変更する。カイザーの見積もりによると、2020年から2026年までに、現在のACAより保険支払い及びメディケイドに対する連邦資金は1,600億ドル削減される為、35州及びワシントンD.Cは資金援助を失う結果になる。

グレイアム/キャシディ法案はメディケイドを終える計画に加えて、ACA下で最も重要な条項である既存疾患のある人々が医療保険に加入可能な確実な保証を提供していないことである。この法案は7月28日、上院が最後に投票し、結局通過しなかったスキニー法案より残酷であると多方面から批判されている。このスキニー法案に85%以上の国民は反対した為、早速多数の州で新たな法案に反対する抗議運動が再開されている。加えて、両党全州50 人のメディケイド.ディレクターで構成されているメディケイド.ディレクター全米協会NAMDは21日、反対を表明する公式声明文を公表した。この声明文は「グレイアム/キャシディ法案がもたらす重大な課題を慎重に検討する」よう議会に要請し「これらの努力は思慮深く、慎重かつ責任ある形で行わなければなりません。私たちはこの法案が多くの州でこれらの努力を弱体化し、改善された医療制度の総体的な目標を達成することができない事を懸念しています」と表明した。

ノーベル受賞経済学者ポール.クルーグマンは22日、ニューヨーク.タイムスのオプ.エドでグレイアム/キャシディ法案を「残酷、不適格、虚偽」であると鋭く批判している。彼は「来週上院が投票するかもしれない医療保険法案は驚くほど残酷です。法案のスポンサーは彼らがまとめた時に何をしているのか明確に理解していません。法案を売ろうとしている彼らの努力は、明白な露骨な嘘を含んでいます」と指摘した。また、ACA下で医療保険未加入者の割合は記録的に低くなっていること、ACAは既存疾患者に対する差別を防止する規定を定めていること、医療保険を安いコストに導くため、健康な時に適切な医療保険を支払うことを個人に要求していること、低所得の家族はメディケイドによって直接医療保険が提供されているが、グレイアム/キャシディ法案はその3本の柱をすべて切断し「既存疾患のあるアメリカ人の保護を効果的に抹消している」と指摘した。NAMDが懸念したことと同様、グレイアム/キャシディ法案のスポンサーは、この法案をまとめる際、何をやっているのか理解していましたか?ほとんど確実にそうではないようです」と述べ、医療保険について知っている人は混乱を引き起こすと警告していることを理解していないと指摘した。クルーグマンは「アメリカの医師会、保険業界、ブルー.クロス/ブルー.シールドは市場が不安定になり、何百万もの人々が保険を失うと警告しています」と書いている。更に「共和党は議会予算局(CBO)がこの法案を分析する前に法案を執行しようとしている」と指摘し、CBOはグレイアム/キャシディ法案の一部が含まれている以前の法案の分析では3,000万人以上が医療保険未加入層に追加されると述べている。

しかし、グレイアム、キャシディ及び他の法案のスポンサーはこれらの批評に対して「彼らの法案は既存疾患のアメリカ人を引き続き保護する」と「嘘の古風なやり方」で対応しているが、アメリカの医師会を含む医療専門家はその法案を読んでいると指摘した。また、キャシディは「彼の法案下で政府資金はほとんどの州で実際に増加する」と述べているが、彼らのスプレッドシートはACAと「比較していない」と指摘し「独立した組織は、ほとんどの州が2027年後から事実上、連邦資金の深刻な削減を経験する事を発見している」と述べた。最後にグルーグマンは「ですから、我々は何百万人もの人々を傷つける無能な法案を見ています。スポンサーは透明な虚偽の主張でそれを売ろうとしています。それにもかかわらず、この法案は上院で通過する可能性がありますか?」と疑問視し、最後に「一つの答えは、共和党議員がバラク.オバマ大統領のレガシーを何とか可能な限り破壊しようとしていることです」と非常にストレートに書いている。

グレイアム/キャシディ法案が紹介された後、多数の医療機関、保険会社、及び複数州の共和党知事が反対を表明したが、CBOの分析の手順さえ省力し、来週水曜日に投票する予定であると公表している。なぜ、共和党はそれほど急いでいるのか?その理由は、この法案を 9月30日で期限切れになる2017年度予算の改正法案として投票する事を望んでいるからである。医療保険法案として独立した法律を制定する場合、下院議会は変更や協議を望む可能性もある為、今回は時間的に余裕がない事も別の理由である。この法案のスポンサーは上院議会でわずか90秒間の論議を行うだけである。つまり、規定や常識を無視した強引な取り組みである事は明らかである。過去に多数の撤廃法案に反対した二人の共和党女性議員は、彼らの意思を公的に表明していないため、現時点では通過の状況を予測できないが、ジョン.マケインは今日、共和党だけで協議した医療保険法は成功していないため、超党派の制定に取り組まない限り、システムを崩壊すると警告した。彼は法案制定の正当なプロセスの重要性を再度訴えた為、前回と同じ姿勢であることを示唆した。皮肉なことにグレイアムはマケインの友人であるため、彼が提唱者になった場合、マケインは今回投票するだろうと期待したことが法案起草者になった経緯であると言われている。彼らが行っていることの意味を理解しているかを疑問視したクルーグマンの洞察は鋭いと言える。この法案を支持する医者は全米で恐らくキャシディ本人、上院共和党議員ジョン.ブラッソ、保健福祉省の長官トム.プライス3人だけであると思われるほど、全米の医師協会は驚異的に反対しているようである。