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By Middle East Monitor

ジョー・バイデン大統領は中東を旅行し、先週サウジアラビアのモハメッド・ビン・サルマン皇太子と会った。バイデンは、ワシントン・ポストのコラムニストであったジャマル・カショギの殺害にたいして、強固な態度を貫いていたため、緊張のある旅行である。サウジアラビアに旅行することは、党内からも反対され、批判もあったものの、バイデンは、カショギの殺害はサルマンに責任があると直接本人に言ったことは予想外であった。加えて、バイデン政権は、サウジアラビアと著しく進歩的な合意に達したようである。歴史的な例を見ると、米国の大統領は独裁者に会うことを避けられない運命にあるようだ。

例えば、歴史的に多数の大統領は、独裁者に会っている。その一部を古い順から回想すると、1920年代にはハーバート・フーバーは人道的努力のためにヨーロッパを旅行し、ベルリンでアドルフ・ヒトラーに会い、30分以上の会話さえ行った。1972年2月21日、リチャード・ニクソンは冷戦時代に、米史で初めて中国を訪問した大統領になった。当時、アメリカおよび他の国でも1975年まで続いたベトナム戦争による反戦運動が激しい勢いでエスカレートしていた時である。ニクソンは、彼自身が反共産主義であったが、安全保障顧問であったキッシンジャーの援助を受け、中国がベトナムから離れることを望んでいた為、中国とより緊密で平和的な外交関係を促進する目的で毛沢東に会った。これは論争的な訪問であったが、ニクソンの最も顕著なレガシーとなった。近年では、2015年3月21にバラック・オバマは、貿易の機会を開き、外交関係を結ぶため、キューバの大統領ラウル・カストロに会った。2017年9月、トランプはロシアの大統領ウラジミール・プーチンに会った。2018年6月、トランプは北朝鮮の指導者キム・ジョンウンに会った。民主主義と人権を促進してきた米国の歴史的な伝統を放棄したドナルド・トランプは、唯一独裁者と会う時には、とても気楽であったと見られていた。歴史的に、トランプは他の大統領とは異なり、権威主義的な側面もあったことが彼の大統領職の一部として語られる場合が多い。

バイデンがサウジアラビアを旅行することを、一部の民主党議員らは反対していた。なぜなら、前大統領を除き、米国は人権侵害に対して非常に明確な態度を示しているためである。先月、古参の民主党上院議員は、カショギの殺害を命じたとされる皇太子をもっと直接罰するべきだったとし、バイデンはサルマン皇太子と会うべきではないと述べていた。民主社会主義者の上院議員バニー・サンダースは、今日17日、ABCのThis Weekでのインタビューで、米国大統領が訪問して、その国の指導者を報いるべきではないと言った。バイデンはキャンペーン当時から、サウジアラビアの指導者サルマンに説明責任があると語っていた。ロシアの大統領プーチンがウクライナを侵略していなければ、グローバル的な石油不足の問題は発生しなかったはずであり、バイデンはおそらく、サウジアラビアに旅行する必要はなかったかもしれない。一般的に今回のバイデンの目的は、石油のセキュリティのためであると見られていたが、バイデンは金曜日(15日)に大統領として、初めてサルマンに外側で会った時、拳をお互いに付きわせ、双方は笑顔のない挨拶をした様子が描写された。ジャマル・カショギの殺害について、バイデンは、記者団に「基本的に彼がそれに対して、個人的に責任があると言いました」と語ったことが報告されている。

そして、バイデンの旅行は、特にサルマンと会ったことが成功の兆候を示唆した。ニューヨーク・タイムスは、米国当局が15日に「石油供給の拡大、5G通信ネットワークの構築、イスラエルの商用便へのサウジ空域の開放、イエメンでの休戦の延長などの課題について、サウジアラビアと幅広い合意」に達したと伝えた。バイデン政権は「石油を遥かに超えた利益をもたらす」ことに「熱心」であり、ジョージW.ブッシュ政権以来、すべての大統領下で中東政策に取り組んできたブレット・マクガークが率いるチームは、一連の取引についての交渉を先導した。バイデンはサウジアラビア当局者との会談後に「私は米国への供給を増やすために、できる限りのことをしています。」と語り、「数週間」で交渉の結果を見ることができるとの期待を表明した。両国間の合意の中で、「最も革新的」な発展は、第5世代移動通信システムであり、「中国企業ファーウェイと競合するように設計された比較的新しい5Gテクノロジーを、サウジアラビアでテストする」ことである。また、「米国当局は長年、ワイヤレス・ネットワークを中国の供給業者に依存することに対して、ヨーロッパと中東諸国に警告してきた。そして、彼らはウクライナでの戦争の勃発が単一の外国の供給業者への依存によって引き起こされたその脆弱性について、彼らは議論を活性化したと信じている」とタイムスは伝えている。

要するに、米国と欧州連合は、ウクライナ侵略におけるロシアへの制裁として、ロシアからの石油や天然ガスの輸入を禁止した為、それはグローバル的にガソリンの価格が高騰する要因になった。バイデン政権は単に、ガソリンの価格を抑えることだけの目的のために、サルマンと不本意に会ったわけではなく、米国との取引、その他幾つかのグローバル的で広範な外交的目的があったことを示唆している。それらは、ワイヤレス・ネットワークの技術において、中国の多国籍テクノロジー企業だけに、ヨーロッパと中東諸国が依存することを停止させることが含まれている。そして、サルマンにカショギの殺害の責任があると直接本人に指摘したことは、基本的にバイデンの態度に矛盾がないことを示唆している。バイデンが予測したように、来月のある時点から、国民はガソリン価格が低下していることに気付くはずである。それは連鎖反応をもたらし、経済に良好な作用があり、11月の選挙にも大統領の党に良い影響があるかもしれないとの希望を与えている。