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もはや機密性を失った莫大な規模の監視プリグラムに関して、 NSA、FBI  および 米国国防情報局(DIA)は監視プログラムの弁明に神経をすり減らしている。 一方、エドワード.スノーデンは、 たとえ死に直面するようなことがあっても、オバマ政権は真実を隠し通すことはできないと強気の構えを見せている。18日、ガーディアン紙は(1)諜報機関の監視プログラムの現状、(2)オバマ政権への印象、(3)スノーデンに対する疑惑、 (4)スノーデンが感じるメディアの印象、(5)オバマ政権へのメッセージなど、 スノーデンとのインタビュを通して得た幾つかの主要点を紹介していている。

下院諜報委員会の18日の聴聞会で、NSAの局長であるキース.アレクサンダーは、この「データー収集プログラムは、2001年以来、潜在的なテロ攻撃を50回も防止することが可能であった」と述べた。これらのケースのほとんどは、外国のインターネット通信をモニターする「プリズム」のプログラムに関与し、その内10件は国内テロに関係していると報告。このような公表は重大であるため、アレクサンダーは、文書を委員会に提出すると述べた。聴聞会では、修復不可能なほど深刻なダメージを受けているため、スノーデンをいずれ起訴することを暗示する発言があるようである。これまで、オバマ氏やNSAの複数の責任者らは、メタデーターだけを収集していて、個人の電話やメール内容にはアクセスしていないと主張しているが、実際はその信憑性は不明である。

諜報機関の監視プログラムの現状についてスノーデンは、「諜報機関がアクセス不可能な個人情報はほとんどない」と感じているようである。NSA、 FBI、および DIAなどの解析者は、疑問があるときは、生データーにアクセスする権利を保持しているので、電話番号、電子メール、ユーザーのID、携帯電話番号など彼らが必要な情報は何でも入手可能であると述べている。これに対する制限があるとしたら、それは技術的なものではなく、政策的なものであり、これはいつでも変更することが可能であるという。しかし、「監査は祖略的で不完全であり、簡単に偽りの弁明に騙されやすい」と指摘している。

オバマ政権への印象について、スノーデンは、オバマ氏が大統領に就任する前は、オバマ氏が変化をもたらすだろうと期待していたと語っている。 オバマ氏の選挙キャンペーンでの公約は透明性を強調し、透明性のないブッシュ政権時代からのテロに対する戦争で実施された尋問プログラムの問題を修正するだろうと、他の多くのアメリカ人と同様の印象を持った。しかし、 大統領の座につくと、尋問方法の合法性に関する調査にはドアを閉め、幾つかの虐待的なプログラムを拡大し、グアンタナモでの人権侵害を終えるため大統領としての影響力を駆使することを拒否したと批判している。グアンタナモでは現在も正当に裁判を受ける権利さえ与えられない人達が拘留されていると指摘しているようである。

また、 スノーデンに対する疑惑や批判も報じられている。情報を売って中国へ逃亡する可能性も含めて、スノーデンが中国側のスパイではないかという疑惑は顕著である。 これに対してスノーデンは、もし、それが事実なら最初から北京に飛行していて、今頃は「どこかの宮殿に住んでフェニックス(ギリシャ神話の不死鳥)を愛撫していたでしょう」と比喩的な冗談を述べ、 「もし、中国のスパイなら、なぜ最初から北京に行かなかったのか自問してほしい」と、強くこの疑惑を否定している。また、民主党の上院諜報委員会の議長ダイアン.フェインスタインや複数の共和党議員、さらに最近ではブッシュ政権下で元副大統領だったデイック.チエイニーがスノーデンを「裏切り者」と呼んでいるが、チエイニーの発言に対して、「光栄である」と皮肉を述べ、「デイック.チエイニーが心配している市民に親切にする方法を彼らがクラスで教えていたら、私は高校を卒業していたでしょう」と答えている。「裏切り者」のレッテルにはさほど抵抗を示していないようだ。

スノーデンは、メディアにはあまり好ましい印象を抱いていない。しかし、「最初はとても励まされた」が、残念ながら主流メディアは、人類史上最大の監視プログラムのことより、自分が17歳の時何を話していたのか、ガールフレンドはどんな女性なのかなどに、多大な興味を持っていると述べた。中国のスパイではないかと報じたメディアに対して、政府の不正行為から問題をそらすため、香港や中国に関連のある事なら何でも「膝をたたくと自動的に膝が上がるように、メディアには、レッド.チャイナ反応がある」と指摘している。更に、スノーデンは米国政府に対するメッセージとして、米国政府が自分を刑務所に送るかまたは殺害しても、政府は真実を闇に葬ることはできないと警告している。また、一般の人々は彼の味方であると確信しているようである。オバマ政権が彼に対して「厳しい対応で臨むなら、国民も同様に厳しい反応を返すだろう」と臆さない構えを見せているようだ。

NSAの契約者として従事した彼は、秘密を漏洩しない誓約に基づいて雇用されたはずであり、その誓約に違反した場合、罰を受けることはほぼ必然的である。オバマ氏の政治責任を問い、情報を漏洩させることを長く待ったと弁解し、 殺害されることもあり得るほど重大な秘密を暴露した自分をヒーローとして印象づけている。現実的には、送還と裁判の可能性はあっても殺害されることはあり得ないはずである。しかし、彼のような内部密告者を次々に生む米国の政治的風潮は、それ自体に多くの問題が潜んでいる。安全保障と個人のプライバシーのバランスを保つその基準を制定する必要性は、もっと以前にあったはずであり、50のケースで潜在的なテロ攻撃を防止することに成功していたのなら、国民に秘密にする必要もなかったと思われる。政府は、常に敵に情報が漏れることを恐れているが、敵に漏れない方法で、国民のコンセンサスを得る方法もあるはずである。例えば、全米各地で地域の代表者によるタウン.ミーティングを通して、国民の意見を集結することは可能であるはずだ。いずれにしても、雄弁で知的な語り方をするスノーデンの内部告発の影響は多大であり「スノーデン効果」と呼ばれている。歴史上、透明性に欠けた米国政府のあるべき姿勢が問われ始め、オバマ政権は転換期を迎えた気配がある。