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先週ICCが、イスラエルの首相ベンヤミン・ネタニヤフ(右)とハマスの指導者ヤヒヤ・シンワル(左)を戦争犯罪で逮捕する計画について発表した時、ジョー・バイデン大統領は激しく反発した。これはICCが2023年にロシアの大統領ウラジミール・プーチンに対して、逮捕状を発行した時とは完全に異なる。現在、一部の同盟国はバイデンのICC検察官カリム・カーン(中央)に対する態度に失望している。それには、幾つかの理由がある。

国際刑事裁判所(ICC)は2023年3月17日、ウクライナの子供たちをロシアに強制送還しているという誘拐の計画に直接関与し、その行為に従事した民間人及び軍の部下に対する適切な管理をしなかったプーチンには、刑事責任があると信じる合理的な根拠があると発表した。そして、バイデン大統領は同日、プーチン大統領が明らかに戦争犯罪を犯しており、同大統領に逮捕状を発行したICCの決定は正当であると述べた。プーチンが児童の不法国外追放とウクライナからロシアへの人々の不法移送に従事していたとする報告は大幅に知られている。しかし、バイデンはベンヤミン・ネタニアフを逮捕するというICCの最近の発表に、完全に異なる態度を示している。

ホワイトハウスの公開文書によると、「ICC検察官によるイスラエル指導者に対する逮捕状の申請は言語道断です。そして、はっきりさせておきたい事は、この検察官が何を言おうと、イスラエルとハマスの間には何の同等性も存在しないということです。私たちは常にイスラエルを支持し、その安全に対する脅威に対して立ち向かいます」と述べた。この声明での「ICC検察官」はカリム・カーンに言及している。そして、国務長官アントニー・ブリンケンは議会と協力してICCを制裁することさえ考慮していることを示唆した。20日、上院歳出小委員会の公聴会で、サウス・キャロライナを代表する共和党上院議員リンジィ・グレイアムは、言葉より行動が重要であると指摘した。また、「イスラエルに対する非道な行為のためだけでなく、将来的には我々自身の利益を守るためにICCを制裁するという超党派の取り組みを支持してくれますか?」と聞いたグレイアムに対し、ブリンケンは「この件であなたとの協力を歓迎します」と対応した。

この状況は益々、一部の有権者を引き離す可能性がある。その最初の理由は、イスラエル政府のガザでの戦争は、民間人の大量飢餓を含めて、正当防衛を超えた範囲でパレスチナ人民を殺害するための戦争犯罪がエスカレートしている。イスラエルは最低30,000人のパレシチナ人を殺害している。その半分は子供達である。ハマスは1,200のイスラエル人を殺害した。このスケールには多大な差がある。多くのアメリカ人はこの戦争を支持していない。ギャロップの3月27日の世論調査によると、「イスラエルがガザ地区でとった軍事行動を支持しますか、それとも反対しますか?」との質問で、「支持する」と答えたアメリカ人は36%であり2023年11月の50%から大きく減少した。一方、「支持しない」は55%であり、11月の45%から増加した。米国成人の74%は、イスラエルとハマスの状況に関するニュースを注意深くフォローしていると回答しており、これはギャラップが11月に調査した時の72%と同様である。最近、米国の多くの大学では、学生たちが、ガザでのイスラエルの戦争を強く批判し、反戦運動が全米に拡大した。

二つ目の理由は、米国は ICC のメンバーではないため、ICCの決定をたとえ表面的に批判しただけであった場合でも、ICCの独立性を支持するべきである。しかし、バイデンの言動は、同盟国から阻害される可能性がある。NBCによると、「ICCの独立を擁護する」多くの国の一部であるフランスとベルギーは、カーン検察官がベンヤミン・ネタニヤフ首相とハマスの指導者ヤヒヤ・シンワルらを戦争犯罪で告発した事を受けて、ネタニヤフを擁護したバイデンと「決別した」という。また、一部の人権活動家は、バイデンが逮捕状発行の動きを即座に「言語道断」だと批判した事を指摘し、大統領はイスラエルとハマスの誤った「同等性」を暗示していると示唆した。一部の同盟国さえ、バイデンのイスラエル政策に疑問を提供している中で、戦争に関しては、常にタカ派であるリンジー・グレイアムのような共和党議員に同意することは、進歩派またはリベラルな支持者が失望することになる。

最後の理由は、ICCの発表に対するバイデン政権の反応は、バイデンがネタニヤフ首相のガザ戦争の戦略をすべて支持している事を示唆している。従って、逆説的にバイデンは、ICC のカーン検察官の逮捕を阻止しているようであるが、イスラエルは、食料を提供しようとした米国の支援団体のワールド・セントラル・キッチンの労働者を全員殺害したことも含めて、ICC の動きを阻止する正当な理由はない。ICCのメンバーではなく、法的に弱い立場にある米国が、ICC の決定を簡単に阻止することができるか疑問である。

要するに、イスラエルを支持しない印象を与えると、ユダヤ人有権者の投票を失うことでバイデンの立場を危うくする可能性もある。米国はICCのメンバーではないため、その動きは法的に弱いことは明白である。しかも、バイデン政権は現時点で、ICCの決定に反対する正当且つ強力な理由を世界に提起していない。バイデンの政策は現在の風潮に即していないようであり、ICC のメンバーではない米国は特に、ネタニアフとハマスのリーダーに対する戦争犯罪の容疑に関するICC の決定に介入するべきでない。ICCは逮捕の決定を具体的に発表していない段階で、米国大統領が即時に反応することは問題である。逮捕が即時に可能ではないことはロシア大統領プーチンに対する例が示唆している。従って、バイデン政権は引き続き、人道的支援と停戦の努力のみに集中し、それを世界に示すべきである。