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ニューハンプシャー(NH)では9日に予備選が開催される。その前の最後の共和党大統領候補者の討論会は昨夜同州のマンチェスターで開催された。進行役の一人は土地収用に関する質問を提起したため、ドナルド.トランプはキーストーン.パイプラインも土地収用権によると主張し、政府の土地収用権の法律を擁護した。トランプは1990年代、老齢の女性から個人的利用の為、土地を買収しようと試みた記録がある事を暴露され、視聴者を狼狽させる論争に発展した。7日に公表されたNH有権者のトランプに対する支持率はトップであるが、アイオワで指名を獲得したテッド.クルーズはNHでの支持率が下落した。驚く事に、先日ニューヨーク.タイムスに支持を受けたジョン.ケイシックは2番目にランクされ、マルコ.ルビオとジェブ.ブッシュはいずれも3位の支持率である。

憲法に基づき、正当な報酬下で政府が個人の土地を買収し、公共の目的に利用することを土地収用、英語ではエミネント.ドメインと呼ばれている。6日夜ABCニュースの主催により、マンチェスターで開催された討論会で、トランプは「特に、米国では土地収用は絶対に必要です」と主張した。これに対し、ジェブ.ブッシュは、土地収用は個人の土地を公共の目的に利用するためであるが、トランプは高齢の女性から買収した土地を個人の駐車場に利用すると述べていたので、それは土地収用の公共目的による利用ではないと反論した。つまり、土地収容の目的は公的使用だけでなく個人利用も可能であると主張した為、トランプが過去にカジノ建設の為土地収用を利用し、ニュージャージー州アトランタ市の高齢の女性から財産を買収しようとしたことを暴露した。政府は公共利用の目的で道路、高速道路、橋などのインフラの為、個人の土地を買収するが、トランプの計画は公共の目的ではなかったので「それは絶対に間違っています」と指摘した。

これに対して、トランプは「彼は今夜タフな男性になりたい」ようですと述べ、しかし、それはあまり効果がありません」と対抗した。「その財産を買収しなかった」と述べ、その取引を諦めたことを示唆した。1998年7月トランプは、アトランティック市に「カジノ帝国」を建設するため投資し、ベラ.コークスの家を買収する予定であったが、彼女は売却を拒否した為、裁判での紛争に発展した。当時、高等裁判所の判事リチャード.ウィリアムズは「トランプ.プラザ.ホテル及びカジノ拡張のため、幾つかの区画を買収する市の計画はトランプがその土地を一旦取得すると、彼がその土地をどうするのか制限が設定されていない為欠陥がある」と判定した。トランプは、その土地を公園、駐車場やリムジン待合場所として使用すると述べた。コークスを含め、この買収計画に影響を受けた幾つかのレストランおよび 商店の経営者を代表した弁護士らは、トランプの計画は「土地の市場価値の支払いを避けることを可能にする策略である」と指摘した。個人利用目的の為、コークスの財産を取得することに失敗したトランプの過去の記録が暴露された。

ブッシュは引き続き「トランプは高齢の女性から財産を取り上げようとした」と攻撃した為、ブッシュの話を遮り、「私に話をさせて下さい。静かに」と圧制する発言をした為、会場の視聴者は「ウォー」と狼狽の声を上げた。トランプはこの時、批判を視聴者に向け、彼等はブッシュの寄付者であり、利害関係のある人達であると皮肉を述べた。彼等が私を好まない理由は、彼等からの寄付を受けないからであると述べ、「 彼等のお金はほしくない。私はアメリカの公共に正しい事をする。彼等のお金を必要としない。ここでこれを言えるのは私だけである」と主張した為、会場の討論会の視聴者は再び「ウォー」と憤慨の声をあげた。トランプは「土地収容は絶対に必要である」と述べ、大抵の共和党が支持しているキーストーン.パイプラインは土地収容の概念なくしてあり得ないと主張した。彼は「土地収用なしで、キーストーン.パイプラインは10フィート(約300cm)も先に進まないでしょう。いいですか?」と語った。その後、キーストーンのケースは公共なのか個人利用なのか疑問が提起された。

キーストーン.パイプライン建設はカナダのトランスカナダ社による要請であり、この会社は土地収用権を主張していた。カナダのアルバータ州から米国のネブラスカ州を経由するパイプラインはネブラスカ州で推定90人の所有者の土地を巡って、裁判による紛争があった為、このプロジェクトはオバマ大統領の許可なくして建設することは不可能であった。同州は2012年にこのプロジェクトを推進する権力を知事に与える法律を制定したが、昨年2月下級裁判所はその法律は憲法違反であると宣告した為、ネブラスカを通過するルートは未承認のままであった。しかし、ネブラスカの最高裁は憲法違反であるとの下級裁判所の判定を支持したが、オバマ大統領に最終決定権を与えた。そのような経緯があり、昨年11月6日、オバマ氏はパイプライン建設にはメリットがないという理由で建設の拒否声明を発表した。

しかし、トランプを含む幾人かの共和党候補者は、大統領のこの決定を覆すエネルギー政策を掲げている。 7日に公表されたマンマス大学の世論調査によると、NHの共和党有権者はトランプ(30%)を最も支持し、驚くことにケイシック(14%)は2番名に躍り出た。次にルビオ(13%)はアイオワと同様3番目の位置を維持したが、NHではブッシュ(13%)も同じ支持率であるため、ルビオとブッシュは接戦の可能性がある。クルーズ(12%)は同州の有権者に人気がないことを示唆した。アイオワでの指名投票日、クルーズのキャンペーンはベン.カーソンが辞退すると虚偽の公表をした為、カーソンに鋭く批判された。その「トリック」が直接的な要因であるかどうか不明であるが、クルーズは世俗的で現実的な同州の有権者には受け入れられないようである。また、同機関の1月の調査では、バーニー.サンダースの53%に対してヒラリー.クリントンは39%であったが、今回サンダースの52%に対して42%で、ヒラリーはサンダースとの差を縮めている。NHの予備選でトランプおよびサンダースは勝利する可能性があることを示唆しているが、実際の選挙は投票日の天候や有権者の気分にも左右される可能性があるため、世論調査の予測に反する場合があることも事実である。