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2014年中間選挙の上院共和党の候補者にはティーパーティ議員として出馬するミルトン.ウォルフ氏がいる。驚くことに、この人物はオバマ大統領の遠縁の従兄弟であり2010年にはオバマ氏を賞賛したが、現在オバマ氏をヒトラーのような独裁者であると批判している。

ロイターによると、ウォルフ氏はティーパーティの活動家であり、2014年の予備選でカンザス州の3期目の上院共和党議員パット.ロバーツ氏(写真左)に挑戦するため昨年10月出馬を表明した。ウォルフ氏は40 代前半の放射線科医であり、カンザスで生まれた「オバマ氏の母親アン·ダナムと親戚であり、大統領の育成に重要な役割を果たしたオバマ氏の祖母マデリン·ダナムはウルフ氏の母親のいとこである」とウォルフ氏のウエッブサイトで述べている。

マザー.ジョンズM.Jによると、カンザスから上院議員として立候補する理由はロバーツ氏が徹底した保守派ではないからだという。ウルフ氏は、「ユダヤ人とジプシーに対処したヒトラーとアメリカ人の扱いに成功したオバマ大統領を同一視」し、「さほど専制的でない」ベニート·ムッソリーニとオバマ氏を比較したという。3年前、フォックス.ニュースのインタビューで、ウルフ氏は一度だけ大統領に会っただけであるが、「彼の家族はバラクが達成した業績を誇りに思い成功を願っていた」と語ったという。しかし、ウルフ氏の「最近のコメントは、最も極右の過激主義と堅いイデオロギー」を露にし、オバマ氏に対抗する姿勢を明白にしている。コーク兄弟が後援しているティーパーティ組織から立候補しているウルフ氏はアフォーダブル.ケア.アクト(ACA)に反対し、事実に反し「ACAには高齢者に終末期の意思決定を課す秘密条項がある」との陰謀説を繰り返し主張している。 昨年5月には保守紙のワシントン.タイムスに投稿し、「アメリカ人は、オバマ大統領と敗北したリチャード·ニクソンに不穏な類似点があることを認識し始めているが、オバマ氏とイギリス王のジョージ 3世を比較するとより多くの問題がある」と述べている。また、「NSAの監視プログラム、気まぐれな法律の変更、政府によるヘルスケアの乗っ取り」はオバマ氏の「過激なリベラル」政策であると主張し、対抗する構えを見せているという。

イギリスの専制政治下で1760年から1820年まで在位したジョージ 3世は、植民地時代の米国人に無謀な課税を強制した。ウルフ氏は、1775年に始まったアメリカ独立戦争の引き金となったボストン.ティーパーティの名称を借用し、2009年に台頭したティーパーティの影響を受けていると思われる。しかし、歴史上、独立戦争の背景にあるボストン.ティーパーティは税金そのものに反対したのではなく代表者なき税金に反対しただけであり、課税、増税に徹底して反対し、政治活動をしながら福祉団体のみに許可された非課税組織を結成するような現在のティーパーティとは全く質が異なる。

アメリカの政治制度は立法、行政、司法の権力分立によるチエックとバランス体制で成り立ち、議会が法律を制定し、大統領はその法案の拒否権と署名権を与えられている。しかし、オバマ氏は歴代のどの大統領より議会に抑圧された大統領であり、ジョージ 3世と同一視することは ナンセンスである。また、NSAの監視プログラムはコンピューター技術の進化に伴い、テロ対策の一貫として、オバマ政権下でアメリカ国民の電話やメール記録のモニターに関して規模が拡大したことは事実である。しかし、NSAのスパイ活動の歴史は長く、現在のシステムはブッシュ政権下の愛国者法に基づき開始されたものである。また、歴代の多くの大統領が何度も制定を試み成功しなかった医療改正法(ACA)は、直接医療保険会社から保険を購入することを米国民に義務づけたものであり、自由経済市場の拡大に貢献はしているが、この法律を制定したのは議会であり、オバマ政権が医療業界を乗っ取っている訳でない。更に、歴代の大統領と同じく、オバマ氏も大統領令を駆使することは可能であるが、オバマ氏は極力大統領令の行使を避けてきた。基本的には、法律の制定および改革は議会が承認しないかぎり大統領が気まぐれに変更することは不可能である。従って、ウルフ氏が主張していることは虚偽又は歪曲に他ならない。

2014年の予備選に挑戦するティーパーティ.メンバーはウルフ氏だけではないが、彼が対抗する現役のロバーツ氏は1997年から上院議員を務めるカンザス出身の正統派の共和党メンバーであり、以前は上院情報委員会の委員長を務めた経験を持つ「影響力のある3期の上院議員」である。一方ウルフ氏は政治家としての経験は全くなく、知名度もない。3年前は、家系の一員としてオバマ氏を支持し、誇りに思っていることを語り、現在はオバマ氏をヒトラーのような独裁者であると批判している本人がワシントンでオバマ氏に対抗できるようになるには「かなりの長い道のり」を歩く必要がある。M.J によると、予備選挙までの彼のキャンペーン資金はわずか$179,000であり、一方ロバーツ氏は220万ドルである。また世論調査の結果、この選挙戦ではロバーツ氏が44ポイント優位である。

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