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7月30日、モルモン教と深い結びつきのある大手の家系図調査会社、アンセストリー・ドット・カムは、オバマ大統領の家系図に関する過去2年間の追跡調査結果を同社のHPに発表した。オバマ大統領は、ほぼ米国で最初の合法的奴隷の子孫である可能性が高いとのことである。研究チームは証拠が不足していることを明白にしながらも、オバマ氏の母の家系図は、彼女の祖先が約370年前の殖民地バージニアの最初のアフリカ系アメリカ人奴隷、ジョン・パンチであることを示唆していると報告している。

1640年、当時インデンチャー・サーバントであった、ジョン・パンチは、バージニアから逃亡し、メリーランドに移住。しかしそこで、同じく逃亡した2名の白人のインデンチャー・サーバントとともに捕獲され裁判を受ける。裁判の刑は、白人より厳しい生涯の強制労働であった。インデンチャー・サーバントとは、殖民地が奴隷制度を合法化する前に米国に存在した、最初の奴隷制度に近い契約労働者のことである。殖民地が始まった1600年代初期、殖民地は労働者不足で、ヨーロッパ、特にイギリス、アイルランド、ドイツなどから多くの若い白人男女が殖民地に移住し、その旅費の負債を返済するため、期限付きでインデンチャー・サーバントとして、強制労働に契約する。バージニアは、奴隷制度を早く制定したため、ジョン・パンチは、殖民地で最初の奴隷になった人物と推測されている。

30日の『ニューヨーク・タイムス』紙によると、調査チームは、オバマ氏の母の先祖であるバンチ家がアフリカ系の先祖につながりがあるかどうかを調査するためDNA分析を実施した。また、オバマ氏の母の祖先を追跡するため、結婚記録や財産記録を捜したところ、ジョン・パンチは、白人女性と複数の子供たちを養っていたことが判明。1600年代のインデンチャー・サーバント時代は、異人種間結婚、又は同棲が可能だったと思われる。この白人女性は、姓名の頭文字がPではなく、Bで始まるバンチという家族名を使い、奴隷ではない自由な立場で子供達を育てている。この家族の子孫がオマバ氏の母スタンリー・アン・ダナムを出産したと説明。オバマ氏の母は、バンチ家の子孫として混血であり、バンチ家は異種族間結婚を続け、殖民地バージニアで顕著な地主になっている。

しかし、『ニューヨーク・タイムス』紙によると、ダナム婦人の伝記作家、ジャニー・スコット氏は「彼女にアフリカ系アメリカ人の先祖がいることを暗示するような証拠はない」と述べている。2007年のシカゴ・サン・タイムスの記事は、1800年代の中頃までに、スタンリー・アン・ダナムの先祖には南北戦争でアメリカ合衆国から独立した連合同盟側で戦った息子がいたとされている。

調査チームは、2つの主なバンチ分家を追跡し、そのひとつは、白人として数世代バージニアで生活していて、別の分家は、ノース・キャロライナ(NC)に移転したことになっている。NCに移住したバンチ家は、ヨーロッパ系白人とアフリカ系黒人との混血であるムラートであるとされていて、彼等の子孫はオバマ大統領のいとこであることが初期の記録として残っていると説明。バージニア分家からのオバマ大統領の子孫は、最終的に彼の遠い昔の祖母であるアンナ・バンチが生まれたテネシーに移住したとされている。アンナ・バンチの娘である、フランシス・アールレッドは1834年に生まれ、カンザスに移住。それから4世代後、1942年、アールレッド家がまだカンザスに生存中、オバマ氏の母が誕生したと説明している。

従って、「オバマ大統領は、米国殖民地時代に最初のアフリカ系アメリカ人奴隷となったジョン・パンチの11代目のひ孫である」と調査会社は主張している。過去300年以上の莫大な量の資料は紛失、または破棄されていて、想像やヒントを事実部分に結び付けた調査結果であるようだ。これまで、ヨーロッパ人がオバマ氏の母の祖先だと言われていたため、意外な報告にメディアは驚いている。オバマ大統領の先祖が米国歴史上初のアフリカ系アメリカ人奴隷だったとする調査結果は、実際のところ、どの程度信憑性があるかは不明である。オバマ大統領に限らず、複数の人種の混血が多い米国人の斬新性が更に浮き彫りになった。この調査を行った会社は、モルモン教に縁が深く、オバマ氏が大統領に就任後調査を開始したとメディアは報じているが、この調査の目的および報告の時期に関し、何らかの政治的な意図が隠されているのかどうか、その点も不明である。